日本財団 図書館

共通ヘッダを読みとばす


Top > 社会科学 > 政治 > 成果物情報

私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1987/08/28 朝日新聞夕刊
62年版防衛白書 軍拡進める危険な兆候<解説>
 
 62年版防衛白書は、約10年間守り続けてきた防衛費の国民総生産(GNP)比1%枠撤廃後に作られた、いわば「転換点」に立つ白書だ。今後のわが国の防衛の針路を示すものとして注目されていたが、その内容は現在の米国の前方展開戦略に積極的に乗り、一段と軍拡を進める危険な兆候をみせたものとなった。昨年までの白書と比較して、変化したポイントは7つある。
第1。
 冒頭に「軍事力の意義」という新しい文章を据えた。こうした項目はかつて51年版白書などにも目立たない形で姿を現したことはあるが、今回の特徴は「軍事力の役割ないし機能は、究極的には力によって相手に対する要求を充足させ」などの表現で、軍事力中心の世界観を展開し「軍事力の意義」を無批判に強調している点だ。その陰で、昨年版の白書まであった西サモアなど軍事力を持たない国への言及部分が消えた。
第2。
 米国の「前方展開戦略」を詳しく記述し、その中でソ連の艦艇の極東での出入り口に位置する日本の戦略的重要性を強調した。米戦略の一環として技術力の対ソ優位確保を狙っていることに対しても積極的な協力姿勢を打ち出した。米国防報告の引き写しと見られる文章も多々ある。日米安保体制が日本の安定を支えている面があるのは事実だが、米国の対ソ戦略である『前方展開戦略』にのめりこんで、日本の国土そのものをソ連に対する盾とするかのような見方は、自衛隊を支持しているとされる「80%以上」の国民の多くの考え方からも遊離しているといえるのではないか。
第3。
 米国への傾斜の裏返しで、「ソ連悪玉説」を一段と強調した。例えば(1)ソ連は西側に手薄な化学・生物兵器を重視(2)ソ連は地域紛争に介入し事態を複雑化(3)ソ連は南太平洋に積極的に進出(4)中距離核戦力(INF)の軍縮交渉もこれまでソ連の一方的中断などで日の目をみなかった――などと並べている。
第4。
 「洋上防空」の意味を拡大させ「本土防空」の必要性を強調した点は、防衛庁内で周到に準備された「転換」(防衛庁筋)だ。その背景には、56年の鈴木首相訪米以来、脚光を浴び表看板となった「シーレーン防衛」から、その課題をもとり込む形で「本土防衛」に重点を移しつつある、との防衛構想の転換がある。「シーレーン防衛」は日米軍事一体化の象徴的な存在だった。今回の転換は、それ以前の「本土防衛」に戻るのではなく、より深く米国戦略に入りこみ、有事での敵の北海道着上陸などを不可避とみてこれに備えるというもの。今度の白書で初めて、着上陸侵攻をすべて防ぐことは「困難」との見方を示し、「侵略への対処」の項を新設、「北部日本の防衛を重視」との言葉を入れたのは、こうした方向への伏線。陸上の新装備を中心に防衛費の大幅増につながる動きだ。
第5。
 専守防衛の方針を具体的に示した防衛計画の大綱について、否定的な議論を紹介し、これに対して「大綱見直しを考えていない」防衛庁の見解を詳述した。栗原防衛庁長官は大綱を守るべきだとの主張。大綱の原案を書いた現在の西広防衛局長に「君が将来防衛庁をやめたら大綱をよく知る人がいなくなる。今のうちに白書に大綱の意味を明記してほしい」と指示した結果という。逆に言えば、大綱はそれほど危機的状況にある。自衛隊制服組や防衛庁内局の若手、自民党国防族議員の間で見直し派が優勢になりつつある。こうした流れの底に、大綱が出来た11年前とは比較にならない防衛力の拡大があり、さらに輪をかける構想の転換があるのだろう。
第6。
 GNP1%枠に代わる新指針の閣議決定の経緯の説明では、中期防衛力整備計画(61―65年度)が期間中の1%枠突破の可能性を織りこみずみだったことや、新基準として自民党内に「1%程度」の案があったことには全く触れなかった。枠撤廃の背景には、「制約が外れて柔軟になったことが大事」と撤廃を評価した米側の圧力もあったが、それにも触れなかった。
第7。
 「国民と防衛」の項目で各国の予備役制度を紹介し「有事総兵力の半数」などと強調したのも新しい。現在、陸上幕僚監部では、自衛隊OBの約4万3000人からなる予備自衛官を、大幅に増すとともにその役割も後方支援から拡大して有事に備えた体制を整えたい、との構想が温められている。将来の具体的な問題提起をにらんでの布石といえる。
 (本田優記者)
 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。








サイトに関するご意見・ご質問・お問合せ   サイトマップ   個人情報保護

日本財団会長笹川陽平ブログはこちら



ランキング
注目度とは?
成果物アクセスランキング
14位
(28,844成果物中)

成果物アクセス数
432,030

集計期間:成果物公開〜現在
更新日: 2017年5月20日

関連する他の成果物

1.私はこう考える【北朝鮮について】
2.私はこう考える【中国について】
3.私はこう考える【ダム建設について】
4.私はこう考える【死刑廃止について】
5.私はこう考える【公営競技・ギャンブル】
6.私はこう考える【天皇制について】
7.私はこう考える【国連について】
8.私はこう考える【憲法改正について】
9.私はこう考える【教育問題について】
10.私はこう考える【イラク戦争について】
  [ 同じカテゴリの成果物 ]


アンケートにご協力
御願いします

この成果物は
お役に立ちましたか?


とても役に立った
まあまあ
普通
いまいち
全く役に立たなかった


この成果物をどのような
目的でご覧になりましたか?


レポート等の作成の
参考資料として
研究の一助として
関係者として参照した
興味があったので
間違って辿り着いただけ


ご意見・ご感想

ここで入力されたご質問・資料請求には、ご回答できません。






その他・お問い合わせ
ご質問は こちら から