1987/08/06 朝日新聞朝刊
63年度防衛費要求の骨格決まる 「洋上防空」整備に本腰
栗原防衛庁長官は5日、63年度防衛費の概算要求の骨格を決めた。新型ミサイルシステムを搭載したエイジス艦を1隻導入するほか、超水平線(OTH)レーダーの硫黄島・小笠原諸島設置のための現地調査費を組むなど、1000カイリ海上交通(シーレーン)防衛のための新装備体系である洋上防空システムが本格的に具体化され始めたのが特徴だ。
日米間で懸案となっている次期支援戦闘機(FSX)開発や、7月末の日米制服組によるハワイ協議で検討された対潜能力向上のための日米共同研究については、いずれもまだ流動的な段階のため見送られた。検討の進展次第では、予算案編成の時点で盛り込まれることになる。
栗原長官は、来年度が中期防衛力整備計画(61―65年度)の第3年に当たることから「中期防の着実な実現」を要求の根拠としており、要求総額は基準いっぱいの3兆7354億円(前年度当初予算比6.2%増)とした。
エイジス艦は米海軍のアーレイ・バーク級をモデルとするもので基準排水量7200トン。1隻千三百数十億円。一時期1700億円と見積もられていたが、為替の変動などで下がった。それでも最新の護衛艦の2倍の値段。67年の就航を目ざしている。現在エイジス艦を持っているのは米海軍だけだ。
OTHレーダーは、硫黄島の火山活動による地殻変動などの調査費が主で、数千万円を要求することになる。
海上自衛隊では、電子機器の性能を向上させた新型対潜ヘリコプターSH60Jを12機、対潜哨戒機P3Cの改良型11機の導入で対潜能力の強化に努めている。ただ、これは東芝機械の対共産圏輸出統制委員会(ココム)違反事件が表面化する以前から計画された改善だ。
航空自衛隊の迎撃戦闘機F15の15機導入、F4EJの21機改修は中期防であらかじめ見込まれた数字。
陸上自衛隊の新規装備は、水際、洋上撃破のため日本が開発した地対艦誘導弾6基で、とりあえずは教育用に配備する考え。師団の近代化は北海道が充実してきたため、重点を東北と九州に移す。
このほか今年度、航空自衛隊の飛行訓練時間を増やしたのに続いて、陸、海自衛隊の飛行訓練時間の増加など錬度向上、隊舎の整備なども要求する。
防衛庁要求の主な装備一覧
<海上自衛隊>
エイジス艦
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1隻 |
沿岸警備用護衛艦
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1隻 |
潜水艦
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1隻 |
掃海艇
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2隻 |
対潜哨戒機P3C
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11機 |
対潜ヘリコプターSH60J
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12機 |
電子戦データ収集機EP3
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1機 |
<航空自衛隊>
迎撃戦闘機F15
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15機 |
迎撃戦闘機F4EJ改修
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21機 |
救難用ヘリコプターHHS,60J
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3機 |
輸送機C130
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2機 |
中等練習機
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23機 |
地対空誘導弾パトリオット
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1個群 |
<陸上自衛隊>
戦車
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56両 |
装甲車
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23両 |
対戦車ヘリコプター
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8機
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地対艦誘導弾
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6基
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地対空誘導弾ホーク
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1個群 |
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