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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1987/01/12 朝日新聞朝刊
日米防衛協力と自衛隊(社説)
 
 インタオペラビリティーという言葉は、そのへんの英和辞書を引いても出てこない。防衛白書は「相互運用性」と訳しているが、それだけでは漠然としすぎている。
 ハワイでおこなわれた日米安全保障事務レベル協議は、このインタオペラビリティーについての本格的研究を推進するよう決定した。一体どういう研究になるのだろうか。
 昭和61年の防衛白書にはこうある。
 「日米共同訓練を通じて平素から自衛隊と米軍との戦術面等における相互理解と意思疎通を促進し、インタオペラビリティーの向上を図っておくことは、有事における日米共同対処行動を円滑に行うために不可欠であり、日米安全保障体制の信頼性及び抑止効果の維持向上に資するものである」
 要するに、自衛隊と米軍が可能な限り、作戦、情報・通信、後方支援、装備の全分野で同一化しようというものだ。
 日米防衛協力体制は年々強化されている。日米共同作戦研究に続いて、昨年末にはシーレーン防衛についての共同研究も完了、署名された。一方、昨年には3自衛隊・米国3軍による初の日米共同統合実動演習が実施され日米共同演習は新しい時代を迎えた。
 インタオペラビリティーの本格研究は、当然こういう事態を受けつぐものであろう。共同演習は、仕組みの上で、また量の面で、すでに十分な段階に入った。今後は質的な向上をめざし、日米防衛協力体制により精巧な神経機能をはりめぐらせたい――こういう発想からのことと思われる。
 われわれはこれまで、日米防衛協力体制にはおのずから限度があり、節度が必要だと主張してきた。地球規模の戦略の上に立つ米軍と、限定された領土防衛を任務とする自衛隊は、いろいろな意味で同じでない。それを無視して限りなく協力体制にのめりこむことは、自衛隊発足の精神に反すると考える。
 それだけにインタオペラビリティーの研究には、慎重な姿勢で臨んでもらわなければならない。仮に研究の結果、作戦から情報・通信、装備にいたるまで一体化することになれば、自衛隊の立場はきわめて微妙なものになるに違いない。
 作戦の相互運用性となると、有事の際の指揮者を日米どちらから出すか、という問題がある。情報・通信では使用する言語の問題が出てくる。装備については、兵器の輸入か国産かという大問題に行きつく。
 こうしたことは、直ちにお互いのナショナリズムを刺激し、新しい火種を生みだす危険性をはらんでいる。もし「自衛隊の米軍化」という色合いが濃くなるようなことがあれば、国民の不満は増し、誤った自主防衛論にまたとない口実を与えよう。軍事的合理性だけに目を奪われたり、日本の事情を軽視して、はたして健全な防衛協力体制ができるかどうか、疑問に思う。
 今回のハワイ協議で米側は「われわれの共通の目的は力により平和を維持することだ」と述べ、日本の一層の防衛努力を求めた。しかしわが国は、力だけが平和の維持に役立つという考えには立っていない。
 協議では、日本の防衛費増額を歓迎する一方で、米側は米国議会の中にある貿易・防衛リンク論を理由に、さらに一層の努力を促した。防衛費に定量的歯止めをかけることに、批判めいた発言もあった。
 日米友好の立場から、米側の意向にはある程度の配慮が必要であろうが、しかし防衛政策を決定するのはあくまで日本国民である。この点の確認がすべての前提だ、とわれわれは考える。
 
 
 
 
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