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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1985/12/22 朝日新聞朝刊
「海」「空」の装備は一流(検証・税 防衛費の断面:6)
 
 「米空母ミッドウェーは、大破炎上確実とみられます」「うちの潜水艦部隊もやるじゃないか」――まるで第2次大戦当時のような会話がいま、海上自衛隊の幹部の間で交わされている。
 10月前半、主として小笠原諸島から房総半島沖にかけ、日米艦艇120余隻、航空機約200機が参加して展開された「海上自衛隊演習」のあと、青部隊、赤部隊の双方の行動をコンピューターに入れるなどして再現した結果、ミッドウェーの撃破はほぼ確実、とわかった。
○英海軍しのぐ勢い
 演習の経過の詳細は秘密となっているが、小笠原付近から日本本土へ接近するミッドウェーを中心とする機動部隊を、赤部隊に属する日本の4隻の潜水艦が待ち受け、護衛する米駆逐艦や哨戒機の警戒網を抜けて50キロ以内に潜り込み、各艦4発の対艦ミサイルの発射(宣言するだけ)に成功したようだ。ミサイルの一部は対空砲で撃墜されたり外れたりし、また一部は護衛の艦に当たるとしても、16発も撃ち込めば何発かはミッドウェーに当たるはず。実戦ならたしかに「大破炎上」となった、と思われる。
 しかし、それらの潜水艦も帰途には青部隊の日本の護衛艦、対潜哨戒機に捕捉(ほそく)され、相当な損害を受けた、とも言われる。それは、米海軍もうらやむ海上自衛隊の練度を示した一例といってよかろう。
 海上自衛隊は、原潜と空母がない点を除けば、数でも質でも世界で一流の“海軍”に成長した。現在発注あるいは予算が決まっている艦が完成する64年度には護衛艦は58隻、69年ごろに62隻となり、現在主要水上戦闘艦58隻を持ち、やや減り気味の英国海軍をしのぐのは確実。可動率や性能、練度に疑問のあるソ連太平洋艦隊の主要水上戦闘艦80余隻とくらべても、さほどひけは取らない。米太平洋艦隊でも巡洋艦、駆逐艦など計88隻である。
 61年度予算で12機(1機118億円)を要求中の対潜哨戒機P3Cは、現在23機。これと交代しつつあるP2Jなどを合わせて、日本の対潜哨戒機は計103機。これが68年ごろにはP3C94機、P2J6機になる。米海軍はP3Cと、旧型のP3B計218機で全世界をカバーするが、日本はその約半分を北西太平洋だけに集中させることになる。西ヨーロッパ諸国の対潜哨戒機は、全部で80余機。日本の対潜航空兵力は、すでに他国に例のない高密度になっている。
 航空自衛隊も、1機109億円の戦闘機F15Jを61年度に18機要求している。戦闘機数は、将来も約300機で横ばいの見通しだが、68年度ごろにはF15Jは163機になる。完全にコンピューター化したレーダー、照準装置、垂直上昇も可能なパワーなど世界最高の性能。総合能力は、現在主力のF4EJ(ファントム)の何倍にもなりそうだ。
○腕は米空軍と互角
 ソ連空軍も近代化が進み、航続距離の長い戦闘機、戦闘爆撃機がふえている。極東のソ連海・空軍機は約2200機だが、そのうち万一有事の際、対日攻撃に向けうるのは「700機程度」というのが現在の防衛庁の推定だ。機数こそ日本の倍以上だが、ソ連の戦闘機ミグ23などの性能はF15Jには遠く及ばず、パイロットの飛行訓練時間も年間80時間程度と見られ、練度には疑問がある。
 航空自衛隊の訓練飛行時間は年間1人143ないし145時間。米空軍の240時間、西欧の180時間にくらべれば少ないが、米空軍との“腕くらべ”では互角の成績という。飛行訓練は燃料だけでなく、部品も消耗するのでF4EJで1時間120万円、F15Jだと226万円もかかる。航空自衛隊では、「訓練時間を5年計画で年160時間半にふやしたい」としている。
○ぼやく陸自の幹部
 海、空自衛隊にくらべ、陸上自衛隊は戦車など一部の“目玉商品”を除けば、装備は旧式。特に対空火器が少なく、使えるものは35ミリ機関砲「L90」が全国で57セットだけ。第2次大戦中に米軍が使った37ミリの自走対空機関砲「M15」が26両残っているが、走れないので演習にはトラックに乗せて出てくる。
 「装備での海空重視はいまに始まったことではない」と陸上自衛隊の幹部たちはぼやいている。
 海上自衛隊は、すでに世界で一流海軍の域に近づき、航空自衛隊も機数はやや少ないが総合力では西欧諸国の空軍に比肩する。財政危機が続き、他省庁は前年並みかマイナス予算に甘んじている。その中で、防衛費だけ突出させ、海空を中心とした防衛力増強をする必要があるのだろうか。
 (おわり)
 
 
 
 
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