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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1985/12/18 朝日新聞朝刊
「後任者負担」という細工(検証・税 防衛費の断面:3)
 
 いま、自衛隊の最大の「敵」は国鉄だという。「あちこちでぶつかる。向こうも必死。手ごわいですよ」と、退職者の再就職あっせんを担当する陸幕援護室の幹部は、真顔でいった。今年度から自衛官の退職者が激増し、分割・民営化で大量の余剰人員を再就職させねばならない国鉄と、真っ向から衝突している。
○予算抑制みせかけ
 防衛庁は、54年度から59年度にかけ、自衛官のうち約7割を占める幹部(将校)と曹(下士官)の定年を引き上げた。「1人につき1500万―3000万円になる退職金の支払いを一時的に抑える狙いもあった」と防衛庁幹部。
 その結果、今年春の参院予算委でも論議になった「老兵」増加や昇任遅れなどのひずみを生んだ。しかも、今年度から、定年延長で残っていた人たちがまとまって退職しはじめた。今年度の退職・同予定者は約6100人。前年度の2倍近い増え方だ。「後で苦労するのは目に見えていながら、一寸延ばしに先送りしてきた。後任者負担の典型的ケース」と人事、援護担当者はぼやく。
 この「後任者負担」という言葉は、防衛庁内でいま、流行語になっている。防衛予算に付きものの「後年度負担」をもじっているが、「後年度負担も、いわば後任者に処理をゆだねる後任者負担。結局は、目に見える防衛費を小さく抑えるためのテクニックです」と、ある制服幹部は打ち明ける。
○頭金なし、ヘリ購入
 例えば61年度予算概算要求の中で、3,400トンの「甲型警備艦」(現在のはつゆき級を、やや大型化した護衛艦)は、1隻約513億円となっている。このうち同年度の実際の歳出になる「頭金」は、わずか3900万円(0.08%)。残りは後年度負担だ。3機分約180億円を要求している航空自衛隊の新輸送ヘリコプターCH47に至っては、頭金なしである。
 巨額を要し、発注から引き渡しまでに数年かかる装備の購入方式として、後年度負担方式は昔から採用されてきた。しかも、頭金の額は、年を追うごとに少なくなり、巧妙になっている。10年前の51年度予算要求では、2,500トンの甲型警備艦は約320億円のうち頭金に約3億3000万円(1.03%)を充てていた。輸送ヘリV107は、4機で計約34億円のうち約5億3000万円(16%)が頭金だった。
 「ローン残債」を抱えながら次々に新型化し、値上がりする兵器を買い続ける。頭金をどんどん小さくしているから、残債は増え続ける。いわばローン地獄である。61年度予算概算要求の歳出額は約3兆3600億円、後年度負担は「残債」と新規分を合わせて約2兆8000億円。10年前と比べ、歳出予算額は2.2倍だが、後年度負担は3.2倍になっている。
○兵器以外は犠牲に
 その一方で、ツケにできない分は、とにかく切り詰められる。定年延長もその1つ。新潟県の陸上自衛隊新発田駐屯地では「101歳」が現役で働かされている。もちろん人間ではなく、明治17年建築の隊舎2棟。耐用限界を超えた、といわれて久しいが、なお36人がその中で暮らしている。
 熟練度を大きく左右する戦闘機パイロットの年間飛行時間。かつては200時間以上だったが石油ショックの影響もあって減らされ続け、50年代後半には143時間と、米国の半分強にまで落ち込んだ。燃料費や消耗部品費を抑えるためだ。
 だが、こんな「細工」もそろそろ限界。今年度から始まった退職ラッシュは、67年ごろまで続く。パイロットの飛行時間も「高価な戦闘機を買っても、乗りこなせなければ宝の持ち腐れ」と、61年度予算から増やす方向になった。
 最終的にツケを回される「後任者」は、常に国民である。
 
 
 
 
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