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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1985/12/17 朝日新聞朝刊
使い道に困るイージス艦(検証・税 防衛費の断面:2)
 
 「ミサイル艇? あれは注目されると困るんだ。疑問もあるが、政府首脳のお気に入りのアイデアですから」。海上幕僚監部のある将官は、こういって苦笑した。
○当事者も笑う内容
 ことし9月にまとまった「中期防衛力整備計画」の中に入っているミサイル艇は、54年に作られた「53中業」以来、常に計画に入ったまま、棚ざらしとなって来たものだ。上陸輸送船団に対し、小型高速のミサイル艇が突進、撃破する、という勇壮な光景は、いかにも政治家好み。だが、日本に上陸作戦をくわだてる国はがっちりと制空権を取ってから来るはず。上空に敵機が乱舞する中を、ミサイル艇が突っ込んでも自殺行為、という意見が海上自衛隊には強い。だから、計画の実行は長年見送られてきた。しかし今度の計画では1隻60億円―80億円のミサイル艇を、65年度に4隻発注、さらにその後数隻造る予定だ。
 コンピューターを使ってのOR(作戦研究)では、敵の制空権下でも4隻が突進すれば、3隻は輸送船団にミサイルを撃てる距離へたどり着ける計算になった。が、これは港にいる間に航空攻撃を受けなかったとしての話。実際には相手はミサイル艇がいる港を空襲したあと、上陸作戦を行うのではないか。「多分、そうでしょうな」。計画の当事者たちも、思わず笑い出すような内容も防衛力整備計画には盛り込まれている。
○商船より空母優先
 ミサイル艇なら4隻で、2、300億円だが、海上自衛隊が63、65年度に各1隻の発注を期待している「イージス艦」(約7,000トン)は計3000億円。現在の対空ミサイル艦が射程45キロのミサイルを積み、うまく行っても同時に2機しか対抗できないのに対し、「イージス・システム」は、ミサイルの射程が70キロになるだけでなく、同時に飛来する14ないし18目標に対しミサイルを誘導できる。レーダーが目標を探知してから、ミサイル発射までの時間も、いまの約20秒から半分以下へと短縮。発射速度は2秒に1発。これにより、飛行機だけでなく、艦に向かって飛んで来る対艦ミサイルをつぎつぎに落とそう――という構想だ。
 高いだけに、性能は確かにいい。米海軍は1隻1兆円(搭載機を含むと1兆5000億円以上)はする空母の直衛用に建造中だ。だが日本では、これで守るべき艦がない。商船を守るわけでもない。年間6億トン、有事でもぎりぎり2億トンは必要な日本の輸入量を船団護衛で確保するには護衛艦が何百隻もいるので、海上自衛隊もあきらめている。さりとて、本土から約1000カイリの航路帯を設けて、そこを哨戒し、商船を通すとすれば2隻のミサイル艦では防空の役には立たない。
 「米空母群前方などでの対潜掃討の際、航空攻撃からわが方の艦を守ることを考えている」と海上自衛隊はいう。有事の際、日本人の生存に必要な食料などの物資を運ぶ商船を守るよりは、まず自分たちの艦を守るための3000億円の投資、ともいえる。これぞ、文字通りの「自衛艦隊」とのジョークすら防衛庁内で聞こえる。
○性能に疑問OTH
 一方、62年度ごろに調査費をつけ、65年ごろから工費4、500億円で鹿児島県の喜界島、馬毛島を第1候補地として建設するOTH(超水平線)レーダーは、性能自体に疑問が出ている。「探知距離3000キロ、シベリア内部やオホーツク海まで見張れる」というふれ込みだが、精度は低く、縦15キロ、横26キロほどのマス目の中に移動物体があるかないか、が分かるだけ。
 OTHレーダーで「何か来そうだ」という前兆をつかんで、早期警戒機E2Cを発進させ、確認する、という方法では、サハリンやエトロフのソ連航空基地から2、30分の距離にある千歳、三沢などでは間に合わない。
 米空母の場合には、ソ連沿岸から通常かなり離れて行動するので、OTHレーダーで「前兆」をつかんでからE2Cを飛ばす、という方法が可能で、開発、設置に熱心だ。だが、空母のない日本にとって、OTHレーダーはどれだけ役立つだろうか。
 
 
 
 
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