日本財団 図書館

共通ヘッダを読みとばす


Top > 社会科学 > 政治 > 成果物情報

私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1985/10/12 朝日新聞朝刊
「専守防衛」揺らぐ新整備計画 攻撃に使える装備増す
 
哨戒密度は西側一? 空中給油機導入へ前進 軽空母も取りざた
 イスラエルによるパレスチナ解放機構(PLO)本部爆撃事件、イタリア客船乗っ取りと、その犯人を米空母から発進した米軍機が奪取した事件は、中東情勢に新たな波紋を広げている。同時に、私たちをうならせたのは、イスラエル機の長距離爆撃が空中給油機をフルに使って行われた、というニュースだ。「少ない戦闘機を有効に使うためにも」空中給油機は必要、として先に政府が決定した中期防衛力整備計画は、空中給油機導入へ一歩前進する内容を盛り込んだ。軍事的装備品のタテの面を見るか、ヤリの面を見るか、これはなかなか難しいが、今回の新しい防衛力整備計画をよく検討していくと、平和憲法の条文や、そこから生み出された自発的な抑制措置などに合致するのかどうか、心配になるものが少なくない。
 (中馬清福編集委員、鐘ケ江健児記者)
●変わる構想
 日本は第2次世界大戦で多くの国民を死なせたばかりか、アジアなど他の諸国に大きな犠牲を強いた。その反省から、私たちは専守防衛を独自の防衛方針としてきた。武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を使うこと。その防衛力も自衛のための必要最小限度のものとし、その防衛力を使うときは自衛のための必要最小限度にとどめること。これが専守防衛の趣旨である。
 だから現憲法下では、わが国の防衛構想、防衛計画は、専守防衛の枠から出ることができない。しかし軍事的合理性だけを基準にする立場の人からいえば、専守防衛は愚策の最たるもの、ということになる。そこで専守防衛を口にしながら、実はなしくずしに実態をかえていこう、とする考えが広がってきた。
 専守防衛は概念としてあいまいだから、換骨奪胎されやすい欠点がある。専守の「専」はどの程度か。「必要最小限の」防衛力とはどれくらいか。こんな疑問がいくらでも出てくる。政府の方針次第で、実質的にはかなりの変更ができる。
 装備品を例にとるなら、本来わが国は専守防衛的な装備に限るべきである。戦闘機は要撃とか迎撃とか呼ばれるもの。爆撃装置ははずし空中給油機は持ちません、といってきたのも、その原則からである。
 それが変わりつつある。第1に、装備の思想といったものが世界的に変わってきた。攻撃と防勢、と単純に分けられない装備がふえた。戦略防衛構想(SDI)が典型だが、対潜哨戒機さえも、その区分は難しい。
 第2、これは日本の事情だが専守防衛の枠が「1000カイリシーレーン」へ拡大されたため、従来の装備では能力的についていけなくなった。もっと航続距離の長い戦闘機、もっと多くの対潜哨戒機、もっと高性能の護衛艦が要求されることになった。
 しかし、これでも不十分だと防衛庁は言う。今回、「導入を検討」となった超地平線(OTH)レーダー、エイジス艦、空中給油機などがすでに次の出番を待っている。同庁にいわせれば、どれも専守防衛の枠内だが、最初に紹介した空中給油機の例で明らかなように、防勢専門といいきれないものがある。
 さらに、装備は装備を呼ぶ。3年後には計画の見直しがあるが、そのとき登場しそうな新装備が、早くも防衛庁の制服組のなかで取りざたされている。「強力なウサギの耳を」ということで、空中警戒管制機E3A、偵察衛星など。それに航空母艦まであがっている。
 他国の脅威が高まったのだから、防衛構想や方針が変わるのは当然、という意見もある。こうした意見に添って専守防衛を事実上ないものにするのなら、それだけの説明と手続きがなければならない。
●多い問題点
 新防衛力整備計画は専守防衛の枠内におさまっているか。(1)新計画で導入されるもの(2)新計画で導入検討のもの(3)今のままいけば3年後に浮上しそうなもの――に分けて、それぞれの要注意装備を検討してみた。
(1)新計画で導入へ
 《戦闘機》 新整備計画で計187機になるF15は、要撃戦闘機とされている。防衛学会編・国防用語辞典によれば、戦闘機は制空戦闘機、要撃戦闘機、戦闘爆撃機などに分けられ、要撃戦闘機は、主として地上の要撃管制レーダーの管制をうけて、侵入してくる敵機を妨害し撃墜することを任務とする。制空戦闘機は航空優勢を確保するため敵機をとらえて撃墜することを主任務とし、戦闘爆撃機は主として地上海上の戦術目標に攻撃を加えるのが任務。要撃戦闘機は専守防衛に適しているわけだ。
 ところが国防用語辞典はF4EJ、その前のF104Jは要撃戦闘機に入れているが、米国のF15は制空戦闘機に分類している。また最近の戦闘機のほとんどは戦闘爆撃機としての機能を持つ、とも言う。
 この点について航空自衛隊は「作戦時にどのような武装をするか、で戦闘機は分類される。空対空ミサイルだけなら要撃戦闘機、爆弾を積めば支援戦闘機(戦闘爆撃機)」という。
 ではF15はどうか。対地・対艦攻撃用の爆撃照準装置と空中給油装置が装備されている。この両装置はF4導入の際、周辺諸国に脅威を与えるとして取りはずされた経緯がある。F15に両装置を残したことについて防衛庁は(1)爆撃照準装置は射撃装置と一体。はずせない(2)空中給油装置は将来に備えて残す必要がある、と説明。そこから「使い方によっては他国への渡洋爆撃も可能。専守防衛の原則からみて問題」との見方も出てくる。
 
 《対潜哨戒機》 P3Cは100機態勢に。1機で九州に匹敵する海域が哨戒できるなど、原潜の探知能力は旧型のP2Jの10倍という。対潜哨戒機100機態勢の国は、米国を除いて西側にはない。対潜能力でも西側第2位になるが、哨戒密度では米国を抜いて1位、との見方もある。
 P3オライオン対潜哨戒機は潜水艦捜索能力ではもちろん満点の評価だが、潜水艦攻撃能力でも満点の10点をあげ、他の哨戒機を寄せつけない。水上攻撃能力も対潜水艦戦闘用哨戒機としては最高の8点を得ている。(J・ダニガン『ハウ・ツー・メイク・ウォー』)
 P3Cは対潜魚雷、対艦ミサイル「ハープーン」、機雷で武装している。対潜爆弾(爆雷)は積んでいないが、格納庫を改造すれば積める。だから対潜核爆弾も理屈の上では積載可能。
 
 《護衛艦》 9隻建造、保有護衛艦は62隻に。「大綱」には対潜水上艦艇を約60隻保有とあり、海上自衛隊は「やっと大綱水準に到達」という。
 しかし「大綱」のいう「対潜水上艦艇」には、400トン程度の駆潜艇が含まれており、護衛艦だけ60隻とはなっていない。「大綱」制定時には12隻の駆潜艇があったが、海上自衛隊は老朽化して退役する駆潜艇のかわりに護衛艦を建造、いつの間にか対潜水上艦艇は護衛艦だけという数え方にしてしまった。
 
 《C3−1》 こんどの防衛力整備計画の特徴の1つが、指揮・統制・通信・情報(C3−1)機能の充実。とくに通信衛星を利用した防衛通信網の整備がめだつ。防衛庁は、昭和63年打ち上げ予定の通信衛星CS3か民間が打ち上げる通信衛星に、中継器を確保するとともに、全国各ブロックごとに地上局を設けて衛星通信網を作り、現在の地上マイクロ回線との複線化した統合防衛通信網を整備する計画だ。また米海軍の艦隊用通信衛星フリートサットを利用する通話交信装置(8隻分)の購入を、61年度予算で要求している。
 
(2)新計画で導入検討
 《OTH》 新防衛力整備計画は、超地平線(OTH)レーダーについて「その有用性に関し検討の上、必要な措置を講じる」という。役に立つと結論が出れば導入するということだ。
 電離層の反射を利用、約3000キロ先を監視する同レーダーが、サハリン、オホーツク方面から太平洋に出るソ連機の動向を早期にキャッチ。これを受けて早期警戒機E2Cや迎撃戦闘機、艦艇の対空火力で対応する。
 しかし、これだとソ連領の内奥まで監視できることになるから、「専守防衛の国がそこまでやる必要があるのか」との議論がでてくる。他方、米国には北・北西太平洋に3カ所のOTHレーダー建設の計画があるため「これは米国のソ連監視網の一環。憲法が禁じる集団的自衛権に踏み込む心配はないのか」との疑問も出ている。
 
 《エイジス艦》 米国開発の新型ミサイル・システム搭載護衛艦エイジスについて、こんどの計画は「護衛艦の対空ミサイル・システムの性能向上について検討の上、必要な措置を講じる」としか書いていない。しかしエイジス艦2隻導入を含みに計3000億円は計上されているのだ。
 エイジス艦は同時に十数目標(ミサイルや攻撃機)に対処できるから、防空能力は抜群だ。海上自衛隊は、シーレーン防衛に有効というが、シーレーン防衛は広い海域が相手だ。費用対効果は大丈夫か。また米海軍では、エイジス艦は空母護衛用に整備されているが、それが専守防衛国家に必要か、との疑問も出ている。そこから「エイジス艦は有事の際の米第7艦隊の護衛役」との見方も出るわけだ。
 
 《空中給油機》 こんどの計画には「空中給油機の性能、運用構想等、空中給油機能に関する研究を推進する」と書かれており、OTHレーダーやエイジス艦と違って、計画期間中の導入は計画されていない。しかし「研究」が明記されたことで、3年後の計画見直し時に導入が具体化する可能性が大きい。
 昭和48年、当時の田中首相は「空中給油機は保持しない。空中給油の演習、訓練もしない」と明言した(4月10日参院予算委)。それがなぜ導入検討となったか。防衛庁は「航空機技術の進歩で、レーダーで見えにくい低空高速侵入が可能になり、緊張状況では空中警戒待機(CAP)が必要な時代となった。また、少ない戦闘機を有効に使い、滑走路が被害を受けて遠距離の基地を使う場合、空中給油が必要」と説明する。
(3)見直し時に浮上か
 こんどの計画には盛られていないが、3年後の同計画見直しの過程などで、導入の希望が出てきそうなものも多い。
 
 《E3A》 昭和53年、早期警戒機E2C採用決定の際、価格がE2Cの3倍以上ということで見送られたが、E3AにはE2Cにない管制(作戦指揮)機能があり、空海重視や洋上防空体制の整備検討の中で、改めて要望が高まっている。
 
 《偵察衛星》 「専守防衛には強力なウサギの耳が必要」との理屈から、強い願望が出ている。政府は今年2月、「衛星を直接、殺傷力、破壊力として利用するのは認められないが、それ以外で利用が一般化した機能であれば、自衛隊が利用しても平和目的に反しない」との統一見解を示しており、偵察衛星保有には、すでに道が作られている。
 
 《空母》 米海軍のミッドウェーのような本格的空母でなく「護衛型の軽空母」という。具体的にはフォークランド紛争にも出動した英国のインビンシブル(1万6000トン=シーハリアー5機、ヘリコプター9機搭載)と同クラスのものだ。かつてのヘリ空母構想でなく戦闘機を積む空母とするのは、シーレーンの洋上防空の必要性が高くなったのに対応するため、という。
 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。








サイトに関するご意見・ご質問・お問合せ   サイトマップ   個人情報保護

日本財団会長笹川陽平ブログはこちら



ランキング
注目度とは?
成果物アクセスランキング
14位
(28,844成果物中)

成果物アクセス数
432,030

集計期間:成果物公開〜現在
更新日: 2017年5月20日

関連する他の成果物

1.私はこう考える【北朝鮮について】
2.私はこう考える【中国について】
3.私はこう考える【ダム建設について】
4.私はこう考える【死刑廃止について】
5.私はこう考える【公営競技・ギャンブル】
6.私はこう考える【天皇制について】
7.私はこう考える【国連について】
8.私はこう考える【憲法改正について】
9.私はこう考える【教育問題について】
10.私はこう考える【イラク戦争について】
  [ 同じカテゴリの成果物 ]


アンケートにご協力
御願いします

この成果物は
お役に立ちましたか?


とても役に立った
まあまあ
普通
いまいち
全く役に立たなかった


この成果物をどのような
目的でご覧になりましたか?


レポート等の作成の
参考資料として
研究の一助として
関係者として参照した
興味があったので
間違って辿り着いただけ


ご意見・ご感想

ここで入力されたご質問・資料請求には、ご回答できません。






その他・お問い合わせ
ご質問は こちら から