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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2002/07/28 朝日新聞朝刊
「心の教育」強調 臨教審からの改革路線、中曽根元首相に聞く
 
 学習内容の3割減などを柱とする新学習指導要領をめぐって批判が相次ぐ。かつて、自ら臨時教育審議会(臨教審)を設け、現在の改革路線の基礎を築いた中曽根康弘元首相=写真=は現状をどう見ているのか。(堀江隆)
 
○問われる教員の力
――「学力低下論」が高まっています。
 確かに落ちている。「大学ランキング」誌が00年に実施した国公私立大学アンケートでは、学長の93%が「学力は落ちている」と答えた。大学当事者は学力低下を痛感している。
 今の大学生や高校生は字を知らない。文章が書けない。理科や数学にも弱い。突然キレて人を刺す青少年犯罪も増えているので、学力だけがすべてではないが、企業経営者の多くも「新入社員の基礎学力が足りない」と嘆いている。
 
――週5日制や学習内容の3割削減など「ゆとり教育」路線が、学力低下を招いた、と批判する声も強まっています。
 始めたばかりだから、結果を語るのは早いが、「総合的な学習の時間」を、どう指導したらいいのか分からない面もあり、試行錯誤の段階だろうと思う。ゆとり教育の真の狙いである「心の教育」を行うには、教員が人間的に豊かで、力がないとできない。
 
――週休2日制にも不安が強いようです。
 地域などでの受け入れ体制が十分にできていないところもあるからだ。文科省は受け入れプログラムも整っていると言うが、テレビやテレビゲームに向かっている子どもも多く、PRがへただ。毎土曜が休みになって、子どもを「お荷物扱い」にしている家庭も問題だ。
 
――「ゆとり教育」は失敗でしたか。
 こういう教育方法を目指した真意はよく分かる。私が臨教審を作った84年当時、受験地獄、詰め込み教育、偏差値重視、学歴偏重など、いろいろな弊害が出ていた。さらに青少年の犯罪も多発していた。そこで「ゆとりを持った教育にしないと、心豊かな人間を育めない」となった。こうした方向性が、今回の新学習指導要領に反映している。
 今の子どもは、私が子どもだった頃と比べようもないくらい負荷を負っている。インターネットなどによって情報はあふれ、IT(情報技術)や環境教育、英会話など、彼らが学ぶべき課題は昔に比べ、格段に増えている。
 そんな子どもたちに「心のゆとり」を与えようと考えるのは基本的に正しいことだ。
 
○基本法、大事な問題欠落
――「ゆとり教育」を含め今の教育政策の源は、中曽根さんが作った臨教審に行き着きます。
 臨教審の現場対応策そのものは、かなりいいものがある。順次実行され、展開されている。功績は認めてもいいと思う。
 しかし、一番大事な、基本的な問題が欠落していた。精神的なバックボーンがない。教育基本法に、ただ従っているだけだ。教育基本法は個人や自由が強調され、国家や公に対する観念や、日本固有の文化や伝統を尊重しようという大切なものが入っていない。
 何もナショナリズムで言うのではない。人間として生きるには、精神的な支柱がいる。今の教育体系を見ると、思想とか、哲学をまじめに自分で考える時間がない。
 
――むしろ、知識面の学習を再強化すべきだとの指摘がありますが。
 学力には国語、算数、理科だけでなく、道徳や体力も入る。学校には道徳や体育の時間もあるわけだから。だが、いま、その面が非常にか弱い。
 
――教育改革国民会議でも教育基本法改正などより、教育現場の問題を先に解決すべきだという声がありました。
 小渕(恵三・元首相)君が国民会議を作るときに話したが、教育基本法については私と同じ考えだった。しかし、国民会議では教育基本法改正には及び腰のようなところがあった。
 
――ブレア英首相やブッシュ米大統領は演説で教育の重要性を強調していますが、小泉首相はあまり触れませんね。
 彼は「米百俵」を言ったら、あとはすっかり忘れてしまった。仕事が済んだと思っている。
 
――なぜでしょう。
 個性かな。性格かな。特殊法人や郵政問題で忙しいんだろうけれども。熱意が、見あたらないね。
 
○「ゆとり」は評価
 「戦後教育の総決算」を掲げた中曽根首相(当時)は84年、首相直属の臨時教育審議会を発足させた。「ゆとり教育」に代表される今の教育施策・改革の源流をたどると必ず臨教審に行き着く。
 そのことを意識した中曽根氏も、インタビューで「ゆとり教育」の正しさを強調した。学力低下など問題の原因は教師の「質」や運営方法などに求めている。
 だが、中曽根氏は臨教審を「失敗だった」と総括する。同氏が目指した教育基本法改正に踏み込めなかったからだ。当時、中曽根政権は国鉄や電電公社の民営化に取り組んでおり、野党との対立を避けるため、基本法見直しに触れないことを約束する必要があった。
 いま、学校や親などの間で議論になるのは、「ゆとり教育」の是非だ。中曽根氏は「教育基本法をガチンと直すという政治的行動」を強く求めている。その主張は教育現場に携わる人たちに、どれぐらいの広がりを持つだろうか。
◇中曽根 康弘(なかそね やすひろ)
1918年生まれ。
東京大学法学部卒業。
元衆議院議員、元首相・自民党総裁。


 
 
 
 
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