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2003/05/12 産経新聞朝刊
【主張】民間人校長自殺 非協力の教員は反省せよ
 
 広島県尾道市の小学校に赴任した民間人校長(五六)が自殺した問題で、県教委は校長が教員の非協力的な態度に悩んでいたとする調査報告をまとめた。覚えのある教員はしっかり反省してもらいたい。
 報告はその具体例として、昨年五月の運動会前の職員会議をあげている。開会式での国旗掲揚と国歌演奏を指示した校長に対し、一部教員は「なぜ日の丸を揚げないといけないのか」「国歌演奏(テープ)のカセットボタンを押さない」などと反発し、校長は涙ながらに「みなさん、よろしくお願いします」と頼んだという。
 この校長は銀行マンとしての豊富な経験を買われ、昨年四月に小学校へ赴任したばかりである。校長に多少不慣れなことがあっても、教員が支えてやらねばならない時期に、これでは転入してきた生徒に対する集団的ないじめとほとんど変わらない。
 校長が自殺する前の今年三月初め、卒業式の式次第を作成するさいも、校長が西暦から元号を優先した表記に改めるよう指示したが、教員らは「それはおかしい」「私たちにはできない」と拒否している。県教委の報告は自殺の原因について断定を避けているが、こうした教員の執拗(しつよう)な抵抗が校長自殺の背景にあったことは確かだろう。
 広島県は日教組傘下の教職員組合の勢力が強いことで知られる。校長が自殺した小学校も組合の組織率が高く、校長は教員との意思疎通に不安を訴えていたといわれる。四年前、県立高校の校長が卒業式での国旗・国歌の実施をめぐり組合などの抵抗に悩み、自殺した。これが契機となり、国旗国歌法が成立したことは記憶に新しい。
 旧文部省は広島県の教育現場に対して是正指導を行ったが、今回の尾道市のケースを見る限り、末端まで行き届いていなかったようだ。校長を孤立させないためには、これからも教育委員会の支援と監視が必要である。
 民間人校長の制度は校長のリーダーシップによる特色ある学校づくりのため、平成十二年度からスタートした。校長が職員会議の決定にしばられるなど硬直化した学校運営に、民間の手法を取り入れようという狙いだ。現在、二十六都道府県で五十六人が赴任している。教員、生徒、保護者が協力してもり立てていかねばならない。


 
 
 
 
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