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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2003/03/23 朝日新聞朝刊
「教育の憲法」揺れる見直し 基本法改正、中教審が答申
 
 教育基本法を改正するよう、中央教育審議会(会長=鳥居泰彦・前慶応義塾長)が遠山文部科学相に答申した。47年の施行以来、一度も手を入れられていない「教育の憲法」。見直しへの反対論も根強いなか、中教審は何を、どのように変えようと提言したのか。
 (長谷川玲)
 
◇新理念
 教育基本法は、前文と11の条文からなる。答申は、それぞれに対応させる形で「改正の方向」を示した=表。
 現行法に記された教育の理念や原則を残すよう求めている点は多い。
 現行法の1条が定める「人格の完成」「心身ともに健康な国民の育成」といった基本理念や、3条の「教育の機会均等」、4条の「義務教育」などだ。「削除が適当」と明示したのは5条の「男女共学」にとどまっている。
 一方で、8項目にわたる教育の新理念を挙げ、前文か条文に盛り込むことを提言した。
 各項目には「『公共』の精神、道徳心」や「日本の伝統・文化の尊重」「郷土や国を愛する心」といった言葉が含まれている。規定されれば、現行法が目指してきた教育を様変わりさせることにつながる。
 学校や家庭教育の役割のように、条文ごとに新たな原則の規定を求めた部分もある。答申は、現行法をベースにしながら、実質的には新しい基本法を目指しているといえる。
 
◇人間像
 改正の方向は、すべて「21世紀を切り拓(ひら)く心豊かでたくましい日本人の育成」という目標から導かれている。
 答申は、自信喪失感の広がりや、倫理観・社会的使命感の喪失、少子高齢化による活力低下など、日本社会が「大きな危機に直面している」との認識を示す。危機を脱するために教育の大胆な見直しを求めた。
 <これまで日本人は、ややもすると国や社会は誰かがつくってくれるものとの意識が強かった。これからは国や社会の問題を自分自身の問題として考え、そのために積極的に行動する「公共心」を重視する必要がある>
 <グローバル化の中で、自らの国や地域の伝統・文化についての理解を深め、尊重する態度を身に付けることにより、日本人であることの自覚や、郷土や国を愛し、誇りに思う心をはぐくむことが重要である>
 これらの視点に基づいた教育で目指す人間像が「心豊かでたくましい日本人」というわけだ。その育成には、理念や原則を明確にするための改正が必要だと唱える。
 
◇未知数
 改正に反対する学者や教育関係者らからは、答申が家庭教育の役割や「伝統・文化の尊重」「国を愛する心」の規定を求めたことに批判が集中している。
 「個人の心や家族の間に国家が土足で踏み込むもので、法の関与できる範囲を超えている」「戦前の国家主義や全体主義に基づいた教育の復活につながりかねない」
 答申が描く「人間像」のイメージから、「国家や経済界に役立つ人間だけを育てようとしているのではないか」と疑う声も出ている。
 改正を求める有識者らの意見表明も活発だ。
 答申は「宗教的情操の育成」の条文化を求めなかったが、「人間の力を超えたものに対する畏敬(いけい)の念を教えることは欠かせないはず」とする反論が目立つ。
 基本法がどのような姿に変わるかは、最終的には教科書の内容や学校での日常生活にも反映することになる。改正論議は立法の場に移るが、賛否の隔たりは大きく、答申通りの見直しが実現するかは未知数だ。
 
◆教育基本法の改正をめぐる動き
 1947年3月 教育基本法施行。5月には新憲法が施行
   48年6月 衆参両院が教育勅語の排除・失効を決議
   56年2月 清瀬一郎文相が改正を主張
   60年8月 荒木万寿夫文相が改正主張
   87年8月 臨時教育審議会が「基本法の精神を教育土壌に深く根付かせる必要」と最終答申
 2000年12月 森喜朗首相の私的諮問機関・教育改革国民会議が見直しへの取り組みを提言
   01年11月 遠山文科相が中教審に見直しを諮問
   03年3月 中教審は「改正が必要」と答申
 
■教育基本法の現行条文と改正の方向
<現行の条文>
 前文 われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。
 われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。
 ここに、日本国憲法の精神に則(のっと)り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する
 第1条(教育の目的)教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充(み)ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない
 第2条(教育の方針)教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない
 
<改正の方向>
 (前文)教育理念を宣明し、教育の基本を確立する教育基本法の重要性を踏まえて、その趣旨を明らかにするために引き続き前文を置くことが適当▽法制定の目的、法を貫く教育の基調など、現行法の前文に定める基本的な考え方については、引き続き規定することが適当
 (教育の基本理念)教育は人格の完成を目指し、心身ともに健康な国民の育成を期して行われるものであるという現行法の基本理念を引き続き規定することが適当
 (新たに規定する理念)法改正の全体像を踏まえ、新たに規定する理念として、以下の事項について、その趣旨を前文あるいは各条文に分かりやすく簡潔に規定することが適当
 ・個人の自己実現と個性・能力、創造性の涵養(かんよう)
 ・感性、自然や環境とのかかわりの重視
 ・社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神、道徳心、自律心の涵養
 ・日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養
 ・生涯学習の理念
 ・時代や社会の変化への対応
 ・職業生活との関連の明確化
 ・男女共同参画社会への寄与
 
<現行の条文>
 第3条(教育の機会均等)(1)すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであつて、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によつて、教育上差別されない(2)国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によつて修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない
 
<改正の方向>
 教育の機会均等の原則、奨学の規定は、引き続き規定することが適当
 
<現行の条文>
 第4条(義務教育)(1)国民は、その保護する子女に、9年の普通教育を受けさせる義務を負う(2)国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は、これを徴収しない
 
<改正の方向>
 義務教育期間9年間、義務教育の授業料無償の規定は、引き続き規定することが適当
 
<現行の条文>
 第5条(男女共学)男女は、互に敬重し、協力し合わなければならないものであつて、教育上男女の共学は、認められなければならない
 
<改正の方向>
 男女共学の趣旨が広く浸透し、性別による制度的な教育機会の差異もなくなっており、「男女の共学は認められなければならない」旨の規定は削除することが適当
 
<現行の条文>
 第6条(学校教育)(1)法律に定める学校は、公の性質をもつものであつて、国又は地方公共団体の外、法律に定める法人のみが、これを設置することができる(2)法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であつて、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない
 
<改正の方向>
 (学校)学校の基本的な役割について、教育を受ける者の発達段階に応じて、知・徳・体の調和のとれた教育を行うとともに、生涯学習の理念の実現に寄与するという観点から簡潔に規定することが適当。その際、大学・大学院の役割及び私立学校の役割の重要性を踏まえて規定することが適当▽学校の設置者の規定については、引き続き規定することが適当
 (教員)学校教育における教員の重要性を踏まえて、現行法の規定に加えて、研究と修養に励み、資質向上を図ることの必要性について規定することが適当
 
<現行の条文>
 (家庭教育=現行法には規定なし)
 
<改正の方向>
 家庭は、子どもの教育に第一義的に責任があることを踏まえて、家庭教育の役割について新たに規定することが適当▽家庭教育の充実を図ることが重要であることを踏まえて、国や地方公共団体による家庭教育の支援について規定することが適当
 
<現行の条文>
 第7条(社会教育)(1)家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によつて奨励されなければならない(2)国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館等の施設の設置、学校の施設の利用その他適当な方法によつて教育の目的の実現に努めなければならない
 
<改正の方向>
 社会教育は国及び地方公共団体によって奨励されるべきであることを引き続き規定することが適当▽学習機会の充実等を図ることが重要であることを踏まえて、国や地方公共団体による社会教育の振興について規定することが適当
 
<現行の条文>
 (学校・家庭・地域社会の連携・協力=現行法には規定なし)
 
<改正の方向>
 教育の目的を実現するため、学校・家庭・地域社会の三者の連携・協力が重要であり、その旨を規定することが適当
 
<現行の条文>
 第8条(政治教育)(1)良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない(2)法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない
 
<改正の方向>
 自由で公正な社会の形成者として、国家・社会の諸問題の解決に主体的にかかわっていく意識や態度を涵養することが重要であり、その旨を適切に規定することが適当▽学校における特定の党派的政治教育等の禁止については、引き続き規定することが適当
 
<現行の条文>
 第9条(宗教教育)(1)宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない(2)国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない
 
<改正の方向>
 宗教に関する寛容の態度や知識、宗教の持つ意義を尊重することが重要であり、その旨を適切に規定することが適当▽国公立学校における特定の宗教のための宗教教育や宗教的活動の禁止については、引き続き規定することが適当
 
<現行の条文>
 第10条(教育行政)(1)教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである(2)教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない
 第11条(補則)この法律に掲げる諸条項を実施するために必要がある場合には、適当な法令が制定されなければならない
 
<改正の方向>
 教育は不当な支配に服してはならないとする規定は、引き続き規定することが適当▽国と地方公共団体の適切な役割分担を踏まえて、教育における国と地方公共団体の責務について規定することが適当▽教育振興基本計画の策定の根拠を規定することが適当


 
 
 
 
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