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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2002/10/08 朝日新聞朝刊
米の先進地 選択自在公立校も淘汰(競争加速 転機の教育:3)
 
 焦げ茶色の短髪にくりくりしたひとみ。スペイン語なまりの英語をしゃべる小中一貫校の7年ホセ・シャベズ君(11)は昨秋、転校せざるを得なかった。米国北中部のウィスコンシン州ミルウォーキー市で通っていた公立校がつぶれたからだ。
 ミルウォーキーの小中学生は、公私合わせて約200もの学校から入学先を選べる。ホセ君の学校は、生徒数が減った4年前、英語とスペイン語のバイリンガル教育を打ち出し、学区外から約200人を集めた。メキシコから移住したホセ君もその一人だった。
 この数年で2、3キロの範囲内に新しい学校が4校できた。授業料が免除される名門私立校の分校、民間が税金で運営するチャータースクール、3学年で学級を編成するユニークな公立校……。
 ホセ君の学校の児童数は激減した。児童数によって州の補助金が増減するため、財政難で昨年6月、閉校に追い込まれた。ホセ君らは、複数の学校へ散り散りになった。
    *
 人口約60万人のミルウォーキー市は、日本より教育の規制が緩やかな米国でも、「教育改革の最先進地」と呼ばれる。
 日本の市教育委員会にあたる学校区が管轄する公立校は、黒人やヒスパニックなどの低所得層が多い。80年代まで荒れ放題だった。見かねた州議員らが声を上げ、90年、税金で子どもを私立校へ就学させることができる「学校バウチャー(切符)制度」が全米で初めて始まった。
 一定所得以下の家庭の子どもを受け入れた私立校に、州が「学費」として1人あたり約5500ドル(約66万円)を支給する制度だ。総枠は1万5千人。これで市内の私立校の8割に行ける。
 さらに学校区は90年代、学区の自由化や、チャータースクールの開校も認めた。10年間で選択肢は限りなく広がった。
 黒人居住区に住むトニー・ヒギンズさん(46)はバウチャー制度で長女(18)を私立校に、次女(12)は厳しい指導で有力大学進学を目指すチャータースクールへ入れた。「貧しいぼくらが成功するには、学校を選ぶ権利が必要なんだ」
 学校選択の自由化で、昨年は市内の幼稚園から高校までの生徒の3分の1にあたる約4万3千人が私立校やチャータースクールなどへ流れた。
 学校区は、15人学級や、幼稚園から高校までフランス語やドイツ語で授業をする一貫校、芸術や運動に秀でた生徒のための専門校など多彩な公立校をそろえたが、競争は厳しい。
    *
 今年1月、ミルウォーキー市民は、市内のハンバーガー店「マクドナルド」のトレー紙を、「ここまでやるか」という目で見た。
 そこには見慣れたスーツ姿の男性が印刷されていた。地元テレビ局の教育担当記者だったドン・ホフマンさん(36)。隣には、「公立校を選ぼう」の文字があった。
 ホフマンさんは3年前、学校区のマーケティング担当として引き抜かれ、テレビCMや屋外広告に登場してきた。公立校の「すばらしさ」を伝える役回りだ。学校区は昨年、宣伝費に約1700万円を投じた。
 「公立校も、マクドナルドが『ビッグマック』を売るように宣伝しなければ、淘汰(とうた)される。教育はビジネスさ」。ホフマンさんは言い切った。
 日本でも小中学校の学区自由化は各地で始まり、チャータースクールを下敷きにした学校の研究に文部科学省が乗り出した。バウチャー制度も議論になりつつある。
 先進地ミルウォーキーで起きた改革が押し寄せている。


 
 
 
 
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