2002/07/30 朝日新聞朝刊
起業学生「学ぶ意味」追求(ニッポンの学力 転機の教育:10)
先生「メダカのオスとメスの外見上の違いは?」
生徒「ひれの形が違います」
7月中旬、横浜市の私立聖光学院中・高校の生物実験室。この日から、希望者20人を対象に6日間、環境ホルモンの影響でメダカのオスがメス化していく様子を確かめる実験を始めた。
「先生」の星野友さん(23)はバイオテクノロジーを専攻している東京工業大大学院の修士2年だ。リバネスという有限会社の社員でもある。
リバネスは、アルバイトも含めて社員は大学院生ばかり約15人。この6月にできた。「大学での研究を分かりやすく伝え、科学に対する興味を高める」「中高生に大学で学ぶ意味を伝える」ことなどが業務だ。
新学習指導要領で総合的な学習の時間が本格導入された。その手助けが、ビジネスチャンスになると考えた。
そう考えたのは、社員の中高時代の経験からだ。星野さんは「自分が通っていた時代の聖光は受験指導が中心。大学での勉強にもっと興味をもってもらいたい」
社長の丸幸弘さん(24)は東大大学院農学生命科学研究科の修士2年。理科系大学院生約50人が設立した「学生ビジネス研究会」というボランティア団体で活動したことが、起業のきっかけになったという。
「理科系学生が学んでいる内容は社会に出て有効か。何のための勉強なのか」。こうした問題意識が芽生えたからだ。
バイト社員の東大大学院修士1年の猿橋天さん(23)の専攻は身体運動科学系。
「就職がいいから」の理由で東京理科大の工業化学に進んだ。でも4年やってまったく興味がわかなかった。「高校で、勉強の中身や意義を教えてくれなかった」
思いは中学までさかのぼる。「区立の学校より塾の英語の授業の方がよかった。実践的で英語を学ぶおもしろさも教えてくれた」。だからリバネスの理念に共感した。
聖光学院はリバネスの初仕事。事業を拡大させるうえでの目標は、数が多い公立の中高からの受注だ。「学力差が大きい公立では、別メニューが必要」と猿橋さんは話す。
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