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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2001/03/21 朝日新聞朝刊
義務化の印象、遠のいたが・・・ 学校教育などに「奉仕」導入問題
 
 奉仕活動など体験学習の充実を柱とする学校教育法と社会教育法の改正案が十三日、国会に提出された。義務化を提言した昨年暮れの教育改革国民会議の最終報告よりソフトな内容に落ち着いたが、実施に向けて自治体や学校現場が「右倣え」で動き出すのは必至だ。阪神大震災後、ブームともてはやされてきたボランティア活動の足元が揺さぶられている。(藤生京子)
 改正案は、小中高校で社会奉仕や自然体験活動などの充実に努める(学校教育法)、教育委員会が奉仕活動の実施・奨励にあたる(社会教育法)としており、活動内容や期間は明記していない。大阪ボランティア協会理事で日本NPOセンター常務理事を務める早瀬昇さんは「『全員が行うようにする』とした国民会議の最終報告にくらべ、義務化の印象は薄まった。でもいまだに『奉仕活動』。そこの思想は変わってないわけですね」と困惑する。
 昨年十月、「『奉仕活動の義務化』に反対し、自主的な『ボランティア学習』の推進を求める要望書」を国民会議に出した。奉仕とは権威・権力に対して仕え服従する行為であり、義務化では本来のボランティア精神は育たないと訴え、全国の十二団体と個人約二百五十人の賛同を得た。
 だが、ボランティアのすそ野が広がり「世俗化」が進むなかで自発性という「見えないもの」を武器にして戦い続けることの難しさも痛感。「今となっては、法改正を逆手に取って、いかにおもしろいプログラムを提供していくかが勝負」と語る。
 二月に都内であった「東京ボランティアメッセ」では、義務化反対の意見が続出した。日本ボランティア学会も今月三日、有志が昨年開いた緊急フォーラムの反対意見を本にまとめ、一般にPRしていくことを決めた。
 とはいえ、最大のボランティア組織である全国社会福祉協議会や日本青年奉仕協会などは意見表明をしていない。国際ボランティア学会も五、六月に開くシンポジウムでこの問題を取り上げる予定だが、全体として、政治の動きに合わせた機敏さは見られない。
 「義務化という言葉にこだわるより、若者の危機に立ち向かう好機ととらえるべきだ」。大勢は、日米独のボランティア活動にくわしいアルフォンス・デーケン上智大教授の見方に集約されるようだ。
 もともと日本のボランティア活動は行政主導で組織化されてきた経緯がある。日本社会事業大学の辻浩助教授(社会教育学)は、ボランティア団体は概して、社会のありように批判的な目を向ける面が欠如してきたと話す。
 東京外語大の中野敏男教授(社会思想)もバブル崩壊後、「自己責任論」の大合唱のなか教育や医療など身近な市民生活で「自助」を求める動きが強まり、「助け合い」というボランティアが「動員」されようとしているとみる。
 それでも、ボランティア熱が高まっている背景を、東京ボランティア・市民活動センターの安藤雄太副所長はこう解説する。「何でも『反対』の従来の市民運動のスタイルに人々が違和感を覚え始めた。むしろ、現状を受け入れつつ、よりよい方向に変えていきたいという思いが、地に足のついた活動へ向かわせた」
 敷居が低くなったボランティア活動は、「楽しいから」「自分探しに」と言える自由も生み出した。だがそこでは「受け手」との関係は見落とされがちだ。「ボランティア=善」、だから導入という構図に落ち着きそうな今回の議論でも、恵泉女学園大講師で障害のある娘と暮らす最首悟さんは、「優越性のうさんくささ」を皮肉る。「自分が相手にすがるために、だれかを助けることもある」。
 ボランティアをする側・受ける側が依存し合う関係だからこそ、「内発的な義務」と呼ぶ責任が伴わなければならない。最首さんは西欧的な「市民」や「自立」の概念を問い直しながら、外から押しつけられた「奉仕」の義務化には反対だと話している。


 
 
 
 
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