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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1999/03/20 朝日新聞朝刊
法制化に追い風吹かず(よくわかる日の丸・君が代問題)
 
 卒業式を前に広島県立高校の校長が自殺した事件をきっかけに、日の丸・君が代の法制化問題が政治の表舞台に出てきた。戦後教育の中で意見が二分されてきた古くて新しい問題だけに、政府・自民党の中ですら今なぜ法制化なのか戸惑いがある。そこで歴史的経緯も振り返り、法制化の行方を考えてみた。
 (大野博、坂尻顕吾)
 
○自民内にも慎重論
 政府は今国会で日の丸・君が代を法制化する理由として、(1)日の丸、君が代は国旗、国歌として国民各層に定着している(2)それを文部省の学習指導要領だけで根拠づけるのは無理がある、ことを挙げている。
 しかし、一九九〇年の最高裁判決で学習指導要領の法的拘束力が認められ、全体としては学校現場で日の丸・君が代は定着しつつある、といわれている。このため、教育関係者や野党議員からは「なぜ、いま慌てて法制化する必要があるのか」という声が出ている。
 それだけではない。自民党の文相経験者は最近、文部省幹部に「すでに慣習として定着している。法制化はなじまない」と注意した。法制化論議が高まれば、逆に「法案の成立までは法的根拠がない」という空気を生むと心配したためだ。別の閣僚経験者は「安易な法制化論議は日の丸・君が代以外の国旗・国歌制定を求める運動につながる」と警戒する。
 自民党と連立を組んだ自由党は法制化に賛成しているが、野党は慎重な対応をとっている(表参照)。参院でキャスチングボートを握り、法案成立のカギを握る公明党も「法制化が必要かどうかはもっと議論した方がいい。君が代は『君』が主権者をさすのか、象徴天皇をさすのか議論がある」(冬柴鉄三幹事長)と政府の動きにブレーキをかけている。それでなくても後半国会ではガイドライン法案や中央省庁改革関連法案など重要法案の処理が残っており、日の丸・君が代の法制化は難しそうだ。
 
○教育が普及担った
 「長年の慣行で日の丸が国旗、君が代が国歌であるという認識が確立し、広く国民の間に定着している」。野中広務官房長官は法制化方針を打ち出した際、国民の空気をこう強調したが、日の丸・君が代はどのような歴史的経緯をたどってきたのか。
 まずは日の丸。江戸時代から船籍を示す標識として使われていたが、一八七〇年に太政官布告で寸法などが細かく定められた。明治初期、日の丸を掲げるのは船舶のほか、在外公館や開港場所在地の県庁などに限られ、もっぱら対外的な標識だった。
 祝祭日に官庁に掲揚することが徹底されたのは大正時代の一九二四年から。一九三一年には帝国議会に「大日本帝国国旗法案」が提案され、衆院で可決されたが貴族院で廃案となった。その後も再提出されたが、衆院の解散で再び廃案となり、法制化されなかった。
 一方、君が代。一八六九年、大山巌(のちの陸軍元帥)が、外国では国家元首が臨席する儀式で国歌が演奏されるのにならい、天皇の儀式で演奏する歌が必要だと考えたのが発端。歌詞を和漢朗詠集や古今和歌集の古歌から選定した。
 だが、メロディーは現在の旋律とは違った。海軍の軍楽隊教師フェントンが作曲したもので、「酒は飲め飲め」の黒田節に似ていたといわれる。現在の雅楽調の曲は一八八〇年、宮内省雅楽課の林広守が作った。君が代は一九〇〇年の小学校令施行規則で、祝祭日の学校の儀式で職員や児童が合唱することを義務づけられた。
 戦後は連合軍の占領下日の丸の掲揚が制限されたが、一九五八年に告示された学習指導要領で学校現場での日の丸・君が代が復活した。七四年には田中角栄首相が法制化の方針を表明。九三年に当時野党だった自民党が国旗法案を提出する動きを見せたが、政府が本格的に検討することはなかった。
 だが、学習指導要領の改定のたびに学校現場での指導は強化された。その意味で、日の丸・君が代の普及は、もっぱら教育が担ってきたともいえる。
 
●日の丸・君が代問題、各党の対応と主張
(1)対応(2)主な主張
自民党
(1)日の丸、君が代を法制化するため内閣部会で検討を始める
(2)(法制化は)当然のこととして、何ら疑問を持っていない(池田行彦政調会長)
 
自由党
(1)日の丸、君が代法制化賛成の方針を決定
(2)日の丸、君が代は大多数の人に、ごく自然に取り入れられている(扇千景参院議員会長)
 
民主党
(1)国旗、国歌として定着。プロジェクトチームで検討開始
(2)十分議論し、国民の大多数が納得できる形で国旗、国歌を決めるのが望ましい(菅直人代表)
 
公明党
(1)日の丸、君が代は国民に定着。プロジェクトチーム設置を検討
(2)時間をかけ慎重に検討すべきだ。今国会は十分な審議時間があるだろうか(神崎武法代表)
 
共産党
(1)国旗、国歌は法制化すべきだが、日の丸、君が代の法制化には反対
(2)国民的討論抜きの法制化は最悪の暴挙。そんなやり方には絶対反対(不破哲三委員長)
 
社民党
(1)日の丸、君が代の国民への定着は認めるが、法制化には反対
(2)なぜいま法制化なのか。政府の説明に説得力はない(清水澄子プロジェクトチーム座長)
 
●日の丸・君が代の歴史
1633年 朱印船に日の丸が掲げられる
1854年 徳川幕府、日の丸を「日本国総船印」と定める
69年 薩摩藩砲兵隊長大山巌が古歌「君が代」を国歌に選び、海軍軍楽隊教師のイギリス人フェントンが作曲
70年 太政官布告「商船規則」で船舶に掲げるべき国旗として「日の丸」の様式が定められる
71年 在外公館(ワシントン)に初めて日の丸が掲げられる
72年 開港場所在地の県庁に日の丸が掲げられる
80年 宮内省雅楽課の林広守が現在の君が代の楽譜を作成。天長節(明治天皇誕生日)に宮中で初めて演奏される
1900年 小学校令施行規則で紀元節、天長節、1月1日に職員、児童は式を行い、君が代を合唱することを定める(41年の国民学校令施行規則でも踏襲される)
24年 官庁が祝祭日に国旗を掲揚することを次官会議で決定
31年 帝国議会に「大日本帝国国旗法案」が議員提出されるが、審議未了で廃案
45年 連合国軍総司令部(GHQ)は日の丸掲揚を許可制にする
46年 国民学校令施行規則から君が代合唱の部分が削除される
49年 GHQ、日の丸掲揚の制限を撤廃
50年 天野貞祐文相、「祝日には学校や家庭で日の丸掲揚、君が代斉唱することが望ましい」との談話を発表
58年 文部省が告示した小学校などの学習指導要領で「国民の祝日などに儀式を行う場合には、国旗を掲揚し、君が代を斉唱させることが望ましい」と明記
61年 政府の公式制度連絡調査会議の「国旗小委員会」「国歌・紋章小委員会」が開かれる。ただ、法制化の検討は見送り
62年 各省庁が日の丸を毎日掲げることを政務次官会議で申し合わせる
64年 日経連、経団連など経済5団体、本社・事業所での日の丸掲揚を申し合わせる
74年 田中角栄首相、日の丸・君が代を法制化する方針を表明。具体的検討は行われず
75年 日教組、日の丸・君が代の法制化と学校教育への押しつけに反対する統一見解を決定
77年 学習指導要領の改定で「君が代斉唱」の表現が「国歌斉唱」に変わる
89年 新学習指導要領で「入学式、卒業式などにおいて、国旗を掲揚し、国歌を斉唱するよう指導するものとする」と明記し、文部省が指導を強化
90年 文部省が全国の小中学校・高校を対象に卒業式や入学式での日の丸掲揚・君が代斉唱の実施率調査を始める
93年 自民党の中山正暉代議士らが国旗法案をまとめる
94年 村山富市首相(社会党委員長)、「日の丸が国旗、君が代が国歌」と国会答弁。社会党も政策を転換し追認
95年 日教組、文部省との関係改善に伴い「日の丸・君が代反対」を運動方針から棚上げ
99年 卒業式での君が代の扱いに悩んでいた広島県立世羅高校長が自殺。政府が日の丸・君が代の法制化の検討を始める


 
 
 
 
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