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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1997/01/16 朝日新聞朝刊
先生にもっと自由を(社説)
 
 山にすむ山猫から、はがきが届いた。どんぐりたちが大もめにもめているので、知恵をかしてほしいという。山に着いてみると、大論争がおこっていた。
 どんなどんぐりが「いちばんえらいか」というのだ。
 「なんといったって頭のとがっているのがいちばんえらい」と、とんがっているのがいうと、「いいや、まるいのがえらい」と反論があり、「大きいのが」「せいの高いのが」とめいめいに叫んでいる。
 お手上げの裁判官・山猫に、宮沢賢治が授けた判決は確かこんなふうだった。「いちばんばかで、めちゃめちゃで、まるでなっていないようなのが、いちばんえらい」と言い渡したらいいと。すると、どんぐりたちは、たちまち鎮まった……。
 賢いことや偉いこととは本当のところ、どんなことなのだろうか。いま日本の学校教育は、百年前に生まれた賢治が童話に託したような問いかけに直面している。
 賢治ブームのさめやらぬ岩手で催された日教組の教育研究集会。全国からやってきた延べ一万人余の先生たちが、この問いを念頭に置いていることは明らかだった。
 これからの子どもたちには、自ら学び考える「新しい学力」が大切で、それを身につけるために「ゆとり」が欠かせないと文部省もいっている。「頭のとんがっているのがいちばん」とみるような物差しは、そろそろやめたいということなのだ。
 では、どうするか。山猫の判決ひとつで価値の転換がたちまち実現したようには、たやすくいかない。
 これまでの「あたまのとんがり」をめざした受験学力や偏差値学力の注入に代わって、どんな授業ができるのだろうか。先生たちが工夫と苦労を重ねているようすは、集会でその分野の報告が例年より倍増したことからもうかがえた。
 たとえば、昔からの教科のわくを取り払って、一つの課題を集中して追いかけるうちに、「させられる学習」から「自ら求めて学ぶ」楽しさに気づいていく子どもたち。「私たちは成長しました」と、誇らしげに学級新聞に書き残していく。
 教科書を離れた、この総合学習と呼ばれる実践は、「内から育つ」子らを信じる一部の学校の地道な努力が実って、全国に輪を広げはじめたようだ。中教審の一次答申にも、「総合的な学習の時間」の勧めが盛り込まれるまでになった。
 五年生と六年生が一緒になって学び合う異学年交流学習、子どもたちが自分で作る時間割、ノーチャイムなどの成果。先生が自分自身をセンセイと呼び、子どもたちを呼び捨てにするような学校文化への深い疑問も語られた。これらはみんな、新しい学校像づくりの試みにほかならない。
 二十一世紀の初めには、「ゆとり」をつくるために学校週五日制が始まる。いまは月二回の土曜休みだが、六日分の中身を五日に詰め込むのはそもそも無理がある。なにを教えるかを事細かに決めた文部省の学習指導要領が、それを強いてきた。
 教育委員会は、授業時間の数合わせにハンコを押したがる。教科書さえ自分で選べない先生たちは、お仕着せに慣れて専門性と自立性を見失ってきた。子どもたちは、自由な興味と体験をやせほそらせた。
 週五日にあわせたスリム化で、学校が栄養失調になっては困る。多くの報告が示すように、先生と子らの自由な学びの活動から、学校は豊かによみがえる。
 まず先生にこそ、創意工夫の心をかきたてる自由とゆとりを与えるべきだ。


 
 
 
 
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