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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1996/06/19 朝日新聞朝刊
その言うや良し、されど(社説)
 
 子どもたちに「ゆとり」をもたせて「生きる力」をはぐくむ。これが二十一世紀を展望した教育の基本だ、と中央教育審議会が一年余の審議をまとめて述べている。
 学校週五日制の完全実施も、そうした教育改革の一環として実現したいという。
 公表されたこの審議のまとめは、来月の第一次答申にほぼそのまま引き継がれる。その内容をひとことで採点するなら「言うや良し、されど」とでも言おうか。
 つまり本当の評価は、最終答申で示されるはずの具体的な実現への道筋を見なければ下せない。文部省がどこまで本気で取り組むものか、それも疑いなしとしない。
 なぜなら、「ゆとり」も「生きる力」もこれまでに何度もその大切さを指摘されてきたことだからだ。たとえば教育行政のうえでも、「ゆとり」が前回の教育課程改訂の目玉だったことは記憶に新しいし、二年前の教育白書では副題に「生きる力をはぐくむ」とうたっていた。
 肝心の週五日制についても、実施時期の目安を示していない。新しい教育課程づくりから始まる前例を踏むとすると、八年はかかる。せっかく教育の窒息状況を認めながら、これでは改革の熱意を疑わせる。
 生きる力とはなにか。審議のまとめでは「自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、問題を解決する能力」ととらえ、それをはぐくむために「個性の尊重」と「ゆとり」が必要だと強調している。
 さらに、「知識を教え込むことになりがちだった教育」からの転換を訴えて、こう言う。「学力の評価は単なる知識の量の多少ではなく『生きる力』を身につけているかどうかによってとらえる」
 いずれも、実にもっともだ。これは明治以来の学校像の転換をも意味する。文字通りに実現するなら、画期的な大改革と呼ぶべきものだろう。
 それなのに「されど」と思わせるのは、同様の指摘がこれまで実を結ばなかった経験があるからだけではない。端的にいえば、子どもたちの個性やゆとりや自ら考える力を抑えてきた原因について、審議会の分析は不十分にすぎる。中央集権的で画一的な文部行政の責任に一言も触れることがないのは、いかにも説得力を欠く。
 教育のゆがみの責任が「追いつき追い越せ」という日本社会にあるとする総ざんげ論にとどまっているかぎり、改革の焦点がぼやけてしまうのも当然のことだ。
 この意味で、戦後ほぼ一貫して「学校」をしばりつけてきた学習指導要領と検定教科書の固い枠組みに対して、わずかに「弾力化」を示唆するだけでは、せっかくの改革理念も色あせるのではないか。
 もう一つ、受験競争の圧力を緩めないことには、「ゆとり」も「生きる力」も受験学力に押しつぶされる。中教審のまとめも「この緩和なくしては絵にかいたモチ」だと率直に認めている。年度末までの最終答申の審議に残された課題として、斬新(ざんしん)な解答を期待したい。
 学校的秩序や文化がゆきわたった学校化社会といわれる。そこからの脱却をめざす道筋は、企業も家庭も地域も力をあわせて作り上げなければならない。
 しかし、その第一歩はやはり学校がまず変わってみせることだ。教え学ぶことの中身を、ただ「厳選」するだけでなく、教科そのものの組み立てから問いなおす作業が必要だ。それはとりもなおさず六・三・三制の見直しと不可分のものとなろう。
 二十一世紀の教育というのなら、そうした展望のもと大胆な議論を望みたい。


 
 
 
 
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