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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1996/03/23 朝日新聞朝刊
五日制で学校改革を急ごう(社説)
 
 学校の週五日制が月一回から二回に広がって一年。さて次の展開は、という問いに、中央教育審議会が「完全五日制」の実施をめざす、という答えを出した。毎週土曜日は、いずれ学校が休みとなる。
 この結論自体は、審議をまつまでもなく分かっていた。数年来、議論は出つくして試行が積み重ねられ、月二回の実績もできた。そのいちばん後に、おもむろに中教審がお墨付きを与えたという形だ。
 今回、総会で了承された小委員会のまとめは、五日制が必要であることを説明する理論武装の趣がある。それはそれで、日本の学校教育にとって歴史的な試みに踏み出すためには大切な作業だったと思う。
 しかし、これからの課題はさらに重い。まず、最終方針が決まった以上、実施に向けた準備を急ぐべきだ。まとめは、肝心の実施時期のめどさえ示していない。これでは責任のがれではないだろうか。
 本答申は、別の委員会の報告と時期を合わせ今年夏にずれ込む。これまでの例にしたがえば、本答申のあと教育課程審議会による学習指導要領の改訂をへて、実際に完全五日制が実現するのは、二〇〇〇年以降になってしまうだろう。
 一年でも繰り上げて実現するために、本答申では実施時期を明示し、文部省も指導要領を改める手順にいまからとりかかってほしい。改訂をにらんで、教育団体の間ではお決まりの陳情合戦がもう始まっている。十分に議論の時間をとるためにも、教育課程審の着手は早いほうがいい。
 審議のまとめは、五日制の導入について「教育改革の一環であり、今後の望ましい教育を実現していくきっかけになるものとして積極的にとらえる観点が大切」と述べている。学校改革につながる五日制を、と主張してきた私たちは、だからこそ一刻も早い導入を望むのだ。
 その「今後の望ましい教育」について、まとめは「自ら学び、自ら考える能力」を育てること、そのために「ゆとりのある教育活動」を展開することを柱にした新しい学校像を描いている。
 これまで長く慣れ親しんできた、知識を一方的に教え込む教育を転換することと、学校ですべての教育を完結的に担うのではなく地域と家庭との分担を強調する。
 このような考え方には、さほど異論はあるまい。学校教育のゆがみについて責任を負うべき中教審と文部省が、やっとこの認識に至ったことに感慨を覚える人もいるだろう。いじめ自殺、不登校に象徴される子どもたちの告発が、教育行政を揺り動かしたことの重みも忘れてはならない。
 今後の答申に向けた審議に、ふたつ注文しておこう。学校のスリム化や学校の改革というときに、主体が相変わらず文部省、教育委員会、校長、教師と連なる従来の枠組みにとどまっているのは残念なことだ。学校自身の改革に、子どもたちと父母の参加が欠かせないとする視点がなければ、かえって画一的な学校が凝縮されて再生産されることにならないか。
 もうひとつは、国民的な関心がきわめて高いテーマなのだから、審議はもっと開かれたものにすることが望ましい。今回のまとめの全文も公開されなかった。
 たとえば、教育内容の「厳選」をめぐって科目ごとに具体的な削除項目が例示されたが、課程審の異例の先取りなのに、個別の議論は実はほとんどなかったという。このいきさつも明らかではない。これでは、行政の隠れみの審議会といわれよう。
 見識ある委員たちの肉声が聞きたい。


 
 
 
 
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