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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1995/08/30 朝日新聞朝刊
「和解」を教育再生の力に(社説)
 
 日教組と文部省の話し合いが実って、四十余年にわたる教育界の対立に終止符が打たれるかもしれない。九月早々に開かれる日教組の定期大会で、その新しい運動方針が認められる見通しだという。
 教育を古い政治的対立から解き放て、と私たちは主張して、この話し合いに期待してきた。イデオロギーを軸にした反目は、冷戦解消から連立政権成立にいたる時代の変化に取り残されている。なによりも、根深い相互不信からは、積年の教育荒廃に有効な解決策を生み出せなかった。
 両者の協調がなれ合いではなく、望ましい教育改革に向けて踏み出す土台となるなら、歴史的和解と呼ぶにふさわしい。
 和解協議の柱となった(1)日の丸・君が代(2)学習指導要領(3)初任者研修(4)職員会議(5)主任制について、日教組はこれまでの反対や形がい化をめざす運動を改め、文部行政の方向へ大きく転換する道を選んだ。
 文部省のほうは、たとえば学習指導要領問題では「教育現場の創意工夫」を認めるなど、柔軟な姿勢をとるという。日教組委員長を中央教育審議会委員にするなど、関係改善の実を表す方法を検討している。
 しかし、伝えられるような和解の中身では、戦後教育の評価で白と黒ほどの違いがある両者が、こんどはどのような理念に基づいて共同歩調をとろうとするのか、よく見えてこない。せっかくの「和解」も、その行き着く先が部外者に理解しにくいのは残念というほかない。
 半年余の協議には密室の取引という印象を免れないし、肝心の子どもたちのためにという視点も感じ取れない。政界の流動化を後追いし、自己保存の談合という指摘もある。なにしろ組織率の低下と財政難になやむ日教組と、自民党の一党支配が崩れて長年の寄る辺を失った文部省のことだ。健全な相互批判まで封じこめるような結果となっては無責任というものだろう。
 これらの疑問について、両者はこれまでの姿勢の自己評価とともに、はっきりした答えを示してほしい。集権的な文部省とその鼻息をうかがうだけの地方教育委に、父母の不信感は根強い。組織の指示待ちの現場教師についても同じだ。受験過熱からいじめにいたるまで、行き詰まった教育の再生を願う人びとは「和解」が教室の教師と子らに何をもたらすのか、切実に知りたいと思っているにちがいない。
 教育行政、学校、教師への失われた信頼を取りもどす絶好の機会だ。「和解」の意味について、日教組は自由な論議を通じ、地域の父母をはじめ広く納得を得る努力を重ねなければならない。文部省も国会などで分かりやすく説明する義務がある。
 敗戦直後、官民あげて取り組みかけた教育の民主的改革は、冷戦に伴う逆風に吹き飛ばされ、文部省の管理統制と日教組の抵抗という構図に姿を変えた。和解項目にしても、歴史的には教師からの「教育の奪回」という自民党方針に沿った文部省の一連の仕掛けにほかならない。「教え子を再び戦場に送るな」を掲げて共感を得た日教組も、社会党支持の狭い枠にとどまり結局、両者の抗争はそれぞれに「教育の政治的中立」を疑わせるものだった。
 苦い歴史から学ぶべき教訓は、政治からの教育の自律性を保障することにつきる。そのためにこそ、文部省と教職員組合との協調は意味をもつ。教育基本法にあるように、教育は国民全体に対して直接に責任を負って行われるべきものだ。そうした土台の確認が双方になければ、和解はともに目先のご都合主義に終わるだろう。


 
 
 
 
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