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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1994/11/07 朝日新聞朝刊
日教組の期待される将来像(社説)
 
 やせたりといえども組織人員四十万人の日教組が、政治環境の急変に戸惑い、みずからの進路を手探りで求めている。
 これからの教育と教職員組合運動は、どうあるべきか。この根本的な課題について半年間、外部の研究者も交えて検討してきた。その中間報告が「21世紀ビジョン委員会」から発表された。
 「五五年体制に別れを告げて、新しい歴史に向けて力強く出発を」と報告の前書きにある。そのような問題意識は当然必要だし、意気込みも良しとしよう。
 しかし、中間報告を一読する限り、議論がまだ生煮えの印象を免れない。方向転換のかじを取るのに精いっぱいのあまりか、どうも足元が定まらない感じがする。
 まだ中間報告だから、今後の論議に期待してひとつ注文しておきたい。
 なによりも、これまで日教組の果たしてきた役割について、きちんとした歴史的総括がほしい。その光も影もありのままに、過去を振り返ることなくして、正しく前を見通して進むことはできない。
 報告が運動の歴史的な評価に触れていないわけではない。だが、たとえば戦後教育をめぐる対立について「中央統制を強める政治的潮流が日本の政治のなかで支配的位置を占めることになりました」といった表現でくくっているが、まるで無味乾燥な検定教科書を読まされるかのようだ。
 このような一見客観的な、主体の顔が見えない記述によって、自分の責任も「潮流」をつくったはずの相手のそれも、時代の流れのなかに押しやってしまっていいのかどうか。この種の不明確さと歯切れの悪さが報告にはつきまとっている。
 これはおそらく、組織内の左右の立場への配慮のほかに、支持してきた社会党が自民党とともに政権の座にある変化を反映したものと思われる。それによって、日教組の本当の相手は文部省を後ろで操った自民党政治だった、などといった調子の記述では貫けなくなったのかもしれない。
 ものの考え方の隔たりを横に置いて、「文部省と教育委員会が教育改革の社会的パートナー」と言われても、多くの人は面食らうだけだろう。是は是、非は非として過去を見据えるには勇気がいる。率直で誠実な自己評価がなければ、組織再生に不可欠な父母らの信頼も得られまい。
 戦後、対立軸となってきた課題でいえば、教育の政治的中立とは何か、それを確保するシステムはどんなものか、教育基本法への評価はどうなのか、日の丸・君が代は――などについて議論を避けてはなるまい。離合集散にあわてる諸政党にただちに足並みをそろえることはない。「理念なき方向転換」だけが残るようでは困る。
 中間報告のなかで、とくに「現場教職員の時代へ」という指摘や、地方分権の考え方に基づく教育行政と学校運営の提言は的を射ている。政治的イデオロギーの対決とは別の次元で、日々営々と教育の質の向上に力を尽くしてきた教職員たち。その知恵と努力が正しく評価される時代を、という主張には深くうなずかされる。
 日教組はそれらの「英知のサポーター」として政策立案能力を高め、教育情報センター機能を果たすべきだ、という。これは日教組の将来像の一つであろう。
 「日教組が変われば、教育委員会や文部省も変化する」と報告は言う。教室の第一線で、画一的な行政と学習指導要領の拘束に悩む教師たちが、それほど楽観的になれるかどうか。いや、楽観的になれるような説得力ある最終報告を期待したい。


 
 
 
 
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