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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/01/14 朝日新聞朝刊
教師こそ意識を変えなければ(社説)
 
 時代の激しい変化を前にして、立ちすくむ教師たち――秋田市で開かれた日教組の第四十二次教育研究全国集会をそう総括すれば、厳しすぎるだろうか。
 象徴的だったのは、業者テスト問題をめぐる集中討議であった。
 埼玉教組書記長は、「業者テストを使った人買いと人売りが行われている進路指導の現実は、教育でもなんでもないと自己批判する」と語った。
 その後の討論では、いくつか現状が報告されたものの、「偏差値輪切り」の現実をどうしていくのかについて、活発な討論はないままで終わった。沖縄の定時制高校教師の「発言が渋いのは、われわれも加担している問題だからだと思う」という言葉が、参加者の胸の内を語っていた。
 この集中討議は、教研集会の直前に、関連の分科会に急きょ組み込まれた。各分科会での報告は前年の六月から九月にかけて用意されたもので、埼玉で昨年十月に端を発した一連の騒ぎへの対応が間に合わなかった面はあろう。
 だが、ドロナワ式に設定された討議の場ではあっても、これまですでにさまざまな報道がなされ、関係者や識者による問題点の指摘、改善策も論じられてきた。現場の教師こそ、その矛盾を最も深刻に受け止めているはずだ。
 にもかかわらず、自分たちがどう考え、どう変えていくべきかについて、自らの血を流すような率直な意見交換が乏しかったことは、いかにも残念だ。
 日教組が偏差値重視の弊害を確認し、「市販テストの不使用」を決定したのは、七二、七三年の大会であった。その後、偏差値による高校の序列化が進み、「中学浪人」を出すまいとすれば偏差値に頼らざるを得ない、という現実に教師も親も押し流されてきた。
 その弊害が噴出したのが、今回の「埼玉問題」にほかならない。日教組は昨年十二月に「業者テスト・偏差値使用をやめ、受験競争を解消し、入試制度の抜本改革を求める決議」をし、文部大臣への申し入れも行っている。
 横山・日教組委員長は開会のあいさつで「日本の教育と社会の深部で大きな変化が起こっている」との認識に基づき、「私たちも硬直した画一主義・効率主義・管理主義に陥っていないか自らの教育実践の質を問い直し、意識変革を行うことが重要ではないか」と問いかけた。
 だが、その問いかけは、参加した教師の一人ひとりにまでは届いていないようだ。偏差値問題とともに注目された「学校五日制」についても、教師の側の意識のズレがのぞいていた。
 生徒のゆとりを増やし、従来の偏差値で測れる詰め込み教育とは異なる、「新しい学力」の充実にどうつなげていくのか。それが問われているのに、実践リポートの中には、授業時間のやりくりといった対応の報告にとどまったり、「労働強化だ」と反発を示すものまであった。
 激しくなる一方の受験競争は、エリート校と教育困難校の二極分解を進め、偏差値の弊害は小学校にまで及んでいる。そして、さまざまなひずみの根底にある、強固な学歴社会。その行き詰まりに直面して、臨教審、中教審は大胆な改革を提言し、文部省は上からの変化を推進しつつある。
 潮の流れが向きを変え、速度を上げている時だからこそ、子供たちをあずかる教師が何を考え、どうしようとしているかを国民は注視せざるを得ないのである。


 
 
 
 
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