学校でエイズをどう教えるのか――。秋田市を中心に十日始まった日教組の教育研究全国集会に初めて中学校、高校でのエイズ教育の実践報告が寄せられ、十一日からの分科会で発表される。コンドームを教室に持ち込んで予防方法を教える中学校がある一方、「どう教えればよいか迷ってしまう」という高校教諭のリポートも。報告からは、模索が続く現場の様子が浮かび上がった。
エイズ関係の報告は保健体育や女子教育の分科会を中心に集まった。東京の安方中学校の山中智子教諭は、理科の授業での実践をまとめた。六年前から血液の単元などでエイズを説明してきたが、一昨年、八時間かけて男女の体のしくみなど、性教育の基礎からエイズまで触れた。
「性教育はまったくされていない」という前提で授業を組み立てた。最初の五時間で、性器の正しい呼び方、構造、性交、出産、避妊、コンドームの使い方、中絶などを教え、次の一時間で「愛すること」「自分らしく生きること」を考えさせた。そのうえでエイズの予防法や、「あなたの家族がエイズに感染していたらどうしますか」などの問いかけをして、人権問題につなげた。
広島井口高の村上恭子教諭は一九八七年から実践を始めた。「どんな病気なのか」という授業に始まり、模索しながら自分で患者に面会して認識を深め、授業に工夫を加えてきた経過を報告。生徒の関心が感染源や予防法から、感染者とのかかわりに、移っていく様子がうかがえるという。
大半が男子生徒の鹿児島の県立高校では、性教育の土台がほとんどない状態で、二時間で性教育映画を見せ、養護教諭が補足説明を加えた。エイズには触れたが、ごくわずかだった。
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