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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1992/08/30 朝日新聞朝刊
高校入試の「多様化」とは(社説)
 
 バルセロナ五輪のマラソン代表選手選考が思い出される。日本は複数のレースを選考の対象としたために、実力の判定がむずかしく、大いに議論を招いた。
 米国のやりかたは1発選考で、それはそれで非情な面もあった。カール・ルイス選手が五輪100メートルに出場できなかったのもその結果だ。
 どちらが公平か、どちらが説得力をもつか、簡単には言い切れない。
 高校入試のありかたも似たようなむずかしさをかかえる。
 一斉一律の学力テストで選考すれば、ある種の公平さは保証できる。しかし、運不運、偶然の入る余地も大きい。日ごろの勉強のしかたも変わってくる。
 学力テスト以外の要素を加味して選考する場合、だれが何をいかに判定するかが問題になる。恣意(しい)の入る余地がある。公平さへの不信も生まれよう。
 今回の文部省の高校教育改革推進会議・入試部会の報告は「高校入試の多様化」を鮮明に打ち出した。
 受験生がひとつだけでなく、複数の公立高校の試験を受けられるようにする。試験のしかたも、面接から小論文までいろいろな方法をとりいれる。入試教科も5教科と限らず増減させる。同じ学校、学科でも一律の試験をするのではなく、一部に異なる方式をとる。推薦入学をもっと活用する。そんな提言である。
 とりわけ注目されるのは調査書(内申書)の扱いである。
 これまで内申書は選考の重要な資料とすることが義務づけられていたが、内申書なしの選抜にも道をひらくべきだとした。ただし、定員の一部のみに適用するなど例外的な方式にとどめると歯止めをかけた。また、内申書の比重をうんと減らして単なる参考資料にする方式も認めている。
 ひらたく言えば、大きな縛りになっていた「内申書重視」の規則をはずし、入試の方式「何でもあり」にしたわけだ。その方式自体は実施主体の教育委員会、学校にげたを預けた。もとより、上意下達ではなく、自主性尊重は大いに結構なことだ。内申書にいろいろな問題があったことを率直に認めたことも評価できる。しかし、疑問がないわけではない。
 多様な選抜方式を勧めながら、一方で学力テスト1本でもいいですよ、という考え方のことである。マラソンの例でいえば、複数の選考レースを提言しながら、一発勝負も結構、とするわけだ。試験、選抜についての理念が揺らいでいる。
 しかし、これはまさにいま教育の世界が深い悩みをかかえていることの反映でもある。入試方式でくりかえしてきた振り子運動のひとつである。
 ある方式をとるとその矛盾が拡大してくる。そこで逆の方式を採用する。そのくりかえしである。どうやら最善の方式というものは発見できないらしい。最善が見つからなければ次善を見つけるしかない。
 そこで提案したい。教委、学校の「自主性尊重」を最大限に利用することである。まず、入試方式を工夫する過程を大事にしたらどうか。地域や父母を巻き込んだ開かれた検討会もそのひとつだ。現場の教師たちも大いに議論をかわす。
 「自主性尊重」は、無駄が多い。時間もかかる。しかしそのうえでの多様化は大いに結構。また、たとえ画一化に結果しても致し方ない。強制的ではないのだから。
 ただ、子どものため、という視点さえ失わなければ、である。


 
 
 
 
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