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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1991/12/26 朝日新聞朝刊
平和教育、揺れる現場 社会党の「日の丸容認」(潮流・政治・底流)
 
 戦後の平和教育運動のシンボルの1つ「日の丸反対運動」が大きく揺らいでいる。社会党が、これまで「侵略の象徴」としてきた日の丸を、条件付きながら容認するとの姿勢に転換。これを受けて、教育の現場でも、学校での掲揚阻止など従来の運動を見直す機運が出始めた。戦争の記憶が薄れるなか、平和教育もまた変容を迫られているようだ。
 <社会党の新見解>
 嶋崎譲・文化教育委員長が11月24日に発表、12月19日からの社会党大会に報告、承認された。戦後補償問題の解決、戦争責任と平和への決意を国会決議で明確にしたうえで、平和の国旗として再生するとし、田辺委員長が提唱した国会決議の実現という条件つきながら「国旗」として認める道を開いた。85年の教育文化局長見解では、歴史的に標識として用いられてきた経緯は追認したが、国旗としては認めていなかった。
 
○最後のきずな
 「賛成79で少数否決」。13日の日教組中央委員会。日の丸の掲揚阻止闘争の強化を求める修正案が、過半数にわずか3票足らずで否決されたとき、大場昭寿委員長はほっとしたような笑みを浮かべた。社会党の新見解が引き金になり、左派の反発が表面化、闘争強化が大きな流れになることを恐れていたからだ。
 日教組は今も「教え子を再び戦場に送るな」というスローガンを掲げる。戦前の軍国主義教育への反省が運動の原点。昨年の定期大会で文部省との政策協議を重視する現実路線に転換した際、執行部は左派の突き上げに対して、平和教育を軸とした「基本路線は同じ」と強調した。日の丸への抵抗は、左右の対立を超えた「最後のきずな」(幹部)でもある。
 社会党の新見解を受け入れれば、右派が容認へと突っ走る可能性がある。逆に拒否すれば、左派が阻止運動を強化しかねない。日の丸を国旗と明記した小学校教科書が来春、使用開始になり、処分激化が懸念される情勢もある。大場氏が9日の社会党との会談で検討機関での再協議を要請したのは、組合内の論議が煮詰まるまで党の正式決定を先送りしてほしいとの願いが込められていた。
 
○再生への道
 しかし、その会談で、社会党シャドーキャビネット委員会(影の内閣)の嶋崎譲・文化教育委員長は「日教組は日教組の立場でやればいい。社会党は一般国民や勤労者のことも考えている」と突っぱねた。
 新見解は、田辺委員長が掲げる社民勢力結集や現実路線とも符合する。同時に、党内には、これまでの平和教育運動に対して「シンボリックな日の丸反対運動にかなりのエネルギーが費やされ、新しい展開につながらない」(幹部)との反省があった。
 社会党が新見解と相前後して、戦後補償の解決を含む国会決議要求や、教科書問題解決の国際会議構想を打ち上げたのは「戦争責任をめぐる論争で、平和教育を再生したい」(嶋崎氏)との思いからだった。
 新見解をめぐる社会党大会の論議も、日教組への事前の根回し不足など手続き上の問題が中心だった。執行部は「半歩先をいく社会党が、日教組を引っ張っていく」(幹部)としており、大枠は変えずに党の正式見解決定への手続きを急ぐ考え。
 「再生への道」を歩む上で、日教組はそう遠くない将来、「日の丸」の決着をつけなければならなくなりそうだ。
 
○掲揚を始めた長崎県議会 社党、正面切って反対できず
 長崎県議会で16日、戦後初めて議場に日の丸が揚がる「事件」があった。しかし、社会党は正面切って反対できなかった。
 自民党から掲揚が提案されたのは13日。「学校での掲揚をさらに統一させるため、県議会が模範を示す」という理由だったが、社会党に対しては、新見解をたてに、「認めるんだろ」。
 社会党県本部の森安勝書記長は「シャドー(影の内閣)の容認方針がある。日の丸に反対すると、中央との関係はどうなるのか……」と悩んだ。結局、議長職権で掲揚した手続きを問題にして反対に回るという苦しい対応を余儀なくされた。
 同県本部の代議員は、19日の社会党大会で、日の丸に関する執行部の党務報告に対し、「納得出来ない。侵略を受けた民族はまだ日の丸を覚えている」と新見解を批判。執行部からは、地方での具体的な運動についての答弁はなかった。
 現在、都道府県議会の中で日の丸を掲揚しているのは、長崎を含め13県ある。社会党として従来の反対姿勢を守るのかどうか、長崎県同様の悩みを抱える地方組織も出てきそうだ。
 
○戦争のしょく罪をまず先に 大場昭寿・日教組委員長に聞く
 ――新見解について、社会党には何と言ったのですか。
 党は党として考えるということだから、撤回しろとは言わない。「社会党大会後、機関を設けて日教組の意見を聞いた上で、党の正式見解を出したらどうか」とは言った。
 ――新見解は何が問題なのですか。
 タイミングが悪い。PKO協力法案の審議中に出すのは、(容認の前提となる国会の不戦決議が)PKO参加の免罪符ということにもなる。日の丸が国民に定着しているから法制化する必要はなかったというが、国論が二分されているから政府も法制化できなかったのだ。
 ――日教組の立場は。
 日の丸自体は否定しないが、認めると言い切れない要素がある。戦後処理がなかった。(戦争中は)常に日章旗が先頭にあった。日の丸は余りにもせい惨な歴史を背負っている。国家主義で強制するのは良くない。教職員や地域の父母と議論し、卒業式で日の丸を揚げようと合意したなら、ぼくは「揚げてもいい」と言う。
 ただ、揚げなければ処分、という形は反対だ。国の施策で加害者としての立場を教えることが必要だ。日の丸の過去の暗いイメージ、戦争と侵略のシンボルという印象が薄れてきた時に、国旗として承認されるべきだ。
 ――その場合、法制化も認めるのですか。
 法制化しなくていい。国会や地方議会がやるべきことは、戦争しょく罪だ。
 ――処分者への救援資金が組合財政を圧迫しています。これ以上処分者は出せないのでは。
 否定はしない。日教組の中にも「処分を受けるまでやらなくても」という意見もある。この問題で組織を二分すべきではない。どうしても(処分覚悟で全面闘争を)やりたいと言うなら、74年の日教組見解は破棄しなくてはおかしい。
 
 <74年日教組見解の要旨>
 国家の標識として取り扱われてきた事実は、否定しない▽天皇制国家主義のシンボルとして扱われてきた歴史的事実にてらして、この思想を復活する意図には反対▽国家主義の復活強化を目的とする法制化には反対▽学習指導要領をてこに学校教育に強制的に持ち込むことには反対。


 
 
 
 
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