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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1991/01/29 朝日新聞朝刊
先生に期待したいこと(社説)
 
 「聖戦遂行」に国民も、子ども・青年もかり立てられていった。教師たちは、全体として「教え子を戦場に送る」役割を負わされたのである。
 ――太平洋戦争で先生が果たすことになった役割を『日教組40年史』は右のようにつづっている。
 その日教組の教育研究全国集会(教研集会)が東京で開かれた。年1回、教室でのさまざまな体験を持ち寄って討論し、以後の授業に反映させようとの趣旨だが、今回は湾岸戦争がいろいろな分科会で論議を集めた。結果として戦争に深くかかわった教育の歴史を考えれば、取り上げるのは当然といえよう。
 連日の新聞の投書欄が示しているように、湾岸戦争をめぐってはさまざまな声がある。これこそ絶対に正しい、と万人が納得する考え方を見いだすのはむずかしい。
 教研集会でもいろいろな意見が出た。湾岸戦争に関して、子どもたちにいま、なにをどのように教えたらよいか、という悩みを訴える先生も多かった。
 ある中学の先生は「どんな戦争もよくない、と教えてきた者として、子どもたちにどう説明すればよいのか」と語った。「テレビの戦争ニュースを子どもたちはゲーム感覚で見ている。これまで平和教育をしてきたはずなのに、自分は何をしていたのだろう」と述懐した先生もいる。
 「授業で教えた〈あるべき国連〉と、現実の〈こうなっている国連〉との差に戸惑っている」という告白。自衛隊に所属する教え子の定時制高校生に「戦争に行け、と隊長に命令されたらどうすべきか」と問われ、絶句した体験。
 教師として頼りない、という批判があるかもしれない。基本的な勉強が不足している、と思われる意見もなかったわけではない。しかし、上から命じられたことをそのまま子どもに伝える態度よりは、悩みながら考えようとする先生の方が、子どもも親も信頼できるのではないだろうか。
 「戦火の中には、かならず子どももいて、子どもが死んでいっている。そのことを、つねに頭に置きたい」との発言も記憶に残る。
 批判、反論、それに助言も、いろいろとあった。もとより簡単に結論が出せる問題ではない。ただ、教室から出発した問題を率直に話せる場があることは大切だと思う。
 こうした率直さは、各科の授業の仕方、不登校の子どもにどう接するか、校則をどう考えるか、など本来予定されたテーマをめぐる議論でもかなり目についた。
 たとえば、校則。子どもと先生が一緒になって、あるいは子ども主導で改めた例がいくつか報告された。服装や髪形を中心に、思い切って簡素化する方向である。2、3年前にはほとんど考えられなかった傾向だ。そうやって作られた校則は、当然のことながら、割合によく守られる、という。
 むろん、この教研集会の欠点を数え立てることはできる。しかし、参加者は総じて、問題に真剣に立ち向かおうとしていた。近年の集会では、なかなかなかったことだ。
 もともと教研はこの時期に催されていた。しかし、このところ、夏休みだったり秋にずれ込んだり、不規則な開催が続いた。組合に亀裂が生じたためである。紛争のさなかに、実りある論議は容易ではない。
 たもとを分かって、やや落ちついて議論できる雰囲気を取り戻した。5年ぶりの「正常化」だ。一方の全教(全日本教職員組合協議会)も今週、教研集会を開く。こちらも、収穫を期待したい。


 
 
 
 
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