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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1989/09/10 朝日新聞朝刊
子どもの存在忘れた日教組分裂劇(社説)
 
 自分が食べる米を背負い、すし詰めの列車に乗って、全国各地からざっと5000人の先生たちが、奈良県橿原の野外に設けられた会場に集まってきた。42年前、昭和22年6月のことだ。
 照りつける太陽のもと、組織のあり方をめぐってカンカンガクガクの論議がたたかわされた。昼食は持参のにぎり飯をほおばり、議論は日が暮れて互いの顔が見えなくなるころまで続いた。こうして日本教職員組合(日教組)は結成された。
 考え方の相違はさまざまにあったが、「子どもたちの教育のために」という旗印が、多数の先生を1つの組織に結びつけたのだと思う。結成後の日教組が最初に力を入れたのは、新制中学の校舎の不備と教員不足の問題だった。
 42年後。きのうまで鳥取市で開かれていた第68回定期大会で、日教組はついに主流派(社会党系)と反主流派(共産党系)との分裂へ踏み出した。
 各地から主流派を中心に約1500人が会場の室内体育館に集まり、11月に結成される新「連合」に参加することを決めた。これに反対する反主流派の代議員は大半が大会そのものをボイコットし、姿を見せなかった。
 歴史的な分裂といえる。しかし会場に悲壮な雰囲気はほとんど感じられなかった。この組合が委員長人事や労働戦線統一をめぐり、大会さえ開けない「400日抗争」を繰り広げていたのは、つい1年半ほど前までのこと。その延長線上の現象と考えれば、分裂は当然の帰結という見方もできるかもしれない。
 数を頼みとする安心感もあるのだろう。公称60万人の日教組で、主流派は分裂後も50万人近い勢力を保つとの見方が一般的。多数派の立場はとりあえず動かない。
 安堵(あんど)の空気のなかで目立ったのは、「教育」をテーマに設けられた討議の時間での、論議の低調さである。組合員である個々の先生は、教室で起こるいろいろな問題で悩んでいるはずなのだが、それらに触れた話はきわめて少なかった。
 もちろん大会の場は、先月開かれた教育研究集会などと違って、もっぱら教育を論じるところではない。けれども日教組の運動を他の労働組合と同列に扱うことができないのは、学校教育を通じて子どもや父母と深くかかわっているからなのだ。
 それなのに、この大会で子どもは、主役どころか、わき役にもしてもらえなかった。組織の分裂という重大な局面なのに、「分裂が子どもたちにどんな影響を与えるか」「それぞれの学校に波紋は及ばないか」は、ほとんど語られなかった。
 大会だけではない。それに先立つ主流派と反主流派の折衝でも、子どもの問題は論議のテーブルにはのらなかったようだ。学校で子どもを相手にしている先生なら当然考えることが、組合幹部の頭にはないらしい。
 主流派は、反主流派の責任を求める査問委員会をつくった。分裂にともなって今後、主流、反主流両派による組合員争奪戦や新規加入の誘いかけが激しくなると予想される。
 この騒ぎに子どもが巻き込まれはしないか、気がかりである。子どもの存在を忘れた分裂劇を演じているのだから、杞憂(きゆう)とはいえない。そうした事態だけは避けてもらいたい。
 「子どもたちの教育のために」との発想を運動の中心に据え直さなければならないと思う。そうでないかぎり、分裂したあとの日教組の2つの組合とも、広く父母の支持を得るのはむずかしいだろう。


 
 
 
 
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