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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1989/08/12 朝日新聞朝刊
先生はムラを出られるか(社説)
 
 夏休み。この機会にと、学校や教育のあり方をめぐって話し合う集いが各地で開かれている。親たちの集まりでは、「自分の子はもう1年も学校へ行っていない」「給食を食べるのが遅いと注意されてから、すっかり落ち込んでしまった」といった具体的な問題、訴えがいくつも出る。
 授業の質、校則、進学や就職の指導、登校拒否、体罰……。先生を頼りにし、信じながらも、親の側には先生に対する不満や不安も少なくない。
 先生たちは、こうした批判をどう受けとめ、どうこたえようとしているのだろう。
 日教組などが主催する教育研究全国集会(教研集会)が盛岡市で開かれ、全国から約4000人の先生が集まった。教室での体験をもとに話し合い、以後の授業に役立てようとの趣旨である。
 これまで38回の歴史のなかで、夏休み中の開催は初めてだ。本来は新学年を前にして1月か2月。それがおととし、去年と組合の内部問題が原因で大幅に遅れ、今年も元に戻せなかった。
 異常さは、まだある。実践例を報告することになっていた先生が、かなり欠席した。臨海学校など夏休みの学校行事にぶつかった人、休み中に開催される別の官または民間主催の研修会に出席した人、それに組合主流派の路線問題への不満から意図的に欠席した人。26の分科会が設けられたが、平均して5分の1程度の報告者が欠けた。
 皮肉なのは、そうした異常さがかえってプラスに作用した面が見えたことだ。
 報告者が減ったため、結果的に1つの主題についてじっくりと討論する余裕が生まれた。たとえば、登校拒否の報告をめぐって「管理教育に問題がある」「いや、家庭にこそ根本の原因がある」「それ以前に、学校に来ないことを悪と見る発想を再検討すべきではないか」などと論議が進む。
 あるいは「討論する力のない子どもが増えた」との発言をきっかけに、「しかし、先生の中にも討論能力のない人が少なくないではないか」と話が展開していく。
 「教研屋さん」なる言葉が、先生の世界にある。毎年のように教研に出席し、実践例を報告するうち、だんだんプロになって演技たっぷりの報告技術だけが突出した先生をそう呼ぶ。その姿が今回はめっきり少なく、どちらかといえば素朴な問題提起が目立った。
 ただし、これらは「やむを得ず」出てきた現象に近い。足が地についた討論も、分科会全体から見ればまだまだ主流ではない。父母との接点をさぐる努力も、とても十分とはいえない印象である。学校や先生は絶対的存在、との先生自身の意識に、著しい変化は認めにくい。
 先生の社会は、これまでの自民党の姿にどこか似ている。大きな力を持ち続け、ムラ(学校、教育界)の中での発言力を確保すれば、地位は安泰。父母など外の世界からの少々の批判には揺るがない。
 しかし、自民党はその路線をたどり続けることができなかった。そして、先生を取り巻く状況も、だれもが知っているように激しく変わりつつある。学校教育がいまほど多くの問題を抱えている時代があっただろうか。
 なにより子どもたちのために、先生は住みなれたムラを出ていかなければなるまい。まず、父母に代表される外の世界との接点を、もっと豊かにしてもらう必要がある。
 教研集会を傍聴したかぎり、その望みはないわけではない。これからの道が平たんでないのも確かだが。


 
 
 
 
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