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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1989/02/18 朝日新聞朝刊
家庭科共修(学校が変わる 新学習指導要領:6)
 
 根強い男女分業意識 大学受験の優先も障害
 「時代のすう勢、でしょうか。生徒の反応は皆目、見当がつきませんが……」。90年以上の伝統を持つ男子校で、進学校としても知られる埼玉県立浦和高校の長谷川肇志校長は、こう切り出した。高校家庭科が、長い議論を経て、新学習指導要領案で男女とも必修になることについての感想である。
 
○戸惑う男子校校長
 同校にはもちろん、家庭科の授業も家庭科室もない。「これまでの裁縫・料理中心から今回の改訂で、消費生活や福祉、親子関係などを盛り込み、男子にも受けいれやすい内容にはなりました」という長谷川校長も、とまどい気味だった。
 高校での家庭科男女共修の先進地は、京都である。1978年まで続いた革新府政は、激化する受験戦争に抗して、男女共学、小学区制、総合制の「高校三原則」を堅持した。共修はこの「三原則」のもとで、多くの高校での実績を踏まえ、74年度に一斉実施された。京都には、全国から見学が相次いだ。
 ほぼ同時期、長野県では「理念としては男女共修が望ましい」との県教委の見解を足がかりに、5校が共修に踏み切った。熊本県ではその4、5年後、県高校教育研究会家庭部会が「男女で学べる内容」の検討を始めたのを機に共修校が増え、今年度は全日制普通科高校の3割が共修を実施した。家庭科共修は、わずかな数ながら、全国各地に広がった。
 京都ではいま、府立高校48校のうち、33校が共修を実施している。「共修を始めたころは、料理実習では恥ずかしそうにもじもじする男子が多かった。しかし、今はグルメ番組の影響か、全く抵抗感がありません。包丁を持ったことのない生徒が多く、手つきは危なっかしいですが、みんな授業を楽しんでいます」。京都府立鴨沂高校で家庭科を教える中野慧子教諭は、こう言った。
 
○先進地でも縮小へ
 だが、その先進地・京都で異変が起きている。
 ある府立高校で昨年末、校長が突然、職員会議を招集した。新年度のカリキュラムで、これまで共修だった「家庭一般」を学力伸長を狙った進学コース(2類)では女子のみの履修とすることを伝えた。昨年の早い時期に、「新年度も共修」が既定方針になっており、家庭科の教師らが異議を唱えた。しかし、「校長権限」は絶対だった。この高校のほかにも数校が「男女共修」を消滅、あるいは縮小させる予定だ。
 こうした変化は、11年前の保守府政への転換と無縁ではない。85年春からは、各高校に、標準的なコース(1類)と、進学コース(2類)などを併設し、小学区の枠を原則的に取り払った。併せて家庭科も、現行の指導要領通りに女子のみ必修に改める動きが強まり、新設校を中心に10校が共修でなくなった。共修を実施している高校の中でも2校は、進学コースからは、はずしている。
 府教委の幹部は言う。「大学進学に力点を置いたコースでは共修をやめて、英語などの教科を充実させる動きがまだ続くだろう。新要領をどういう形で実践するかは未定だ。よそのやり方を見ながら検討したい」。少なくとも府教委からは「モデル」の意識は消え失せている。
 静岡県内の高校で、「エリートコース」とされる理数科の女子入学者数が、予備選考を通じて制限されていた問題が、昨春明らかになった。その理由も「女子が一定数を超えると大学受験に役立たない家庭科授業が必要になるから」だった。
 家庭科男女共修の障害は、「性別役割分業」の意識だけでなく、「大学受験」を至上命題とする考え方にもある。新要領案では、「家庭一般」「生活技術」「生活一般」のうち1科目を履修、当分の間特別の場合「生活一般」は4単位のうち2単位を体育などで代替できる。これについて文部省は、男子校など人員や設備の整わない高校への配慮としているが、教師の間では「初めから逃げ道をつくるようなもの」と早くも批判がある。文部省の河野公子教科調査官も「下手をすると女子も2単位に後退しかねない」として、条件が拡大解釈されないよう厳しく指導していく考えだ。
 
○現場は効率を優先
 高校家庭科の内容が改訂案で新たな装いをみせるのは、単に「男子に学びやすい」という趣旨だけでなく、改訂全般で打ち出された「人間としての在り方生き方教育」に通じる、家庭基盤の強化という狙いもある。だが、その狙いは、効率的な受験教育に支配されがちな高校の現場に、どこまで浸透していくだろうか。家庭科男女必修が抱える課題は、少なくない。


 
 
 
 
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