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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1989/02/16 朝日新聞朝刊
習熟度別(学校が変わる 新学習指導要領:4)
 
 教員の数、増やせるか 柔軟さ欠けば「選別」に
 かつて都内屈指の有名校だった千代田区立一橋中学校(武俣践夫校長、約800人)。2、3年の数学と英語で、約30年前から習熟度別授業をしている。
 例えば2年生の「1次関数」。3つのクラスに、プリントが3枚配られる。1つのクラスは1枚目の、「傾きと切片」などの問題を、かんで含めるように教え、2枚目以降は触れる程度。別のクラスは1枚目をさっと終えると、2枚目の座標を求める問題へ。もう1つのクラスは3枚目の発展学習へ進む。
 
○差別感解消に配慮
 「当初は、有名都立高校への進学が主眼だったが、私立中学への進学熱が高まった10年以上前からは、意味が変わってきた。習熟度別指導の重点は下位集団のレベルアップに移った」と武俣校長はいう。
 3段階のクラス編成は固定せず、年3―5回クラス替えをする。ボーダーライン上の子は授業中の様子や本人の希望を加味し決めたり、指導の重点は違っても触れる範囲は同じにしたりする。生徒に差別感を抱かせないようとの配慮からだ。
 「課題は、きめ細かく対応しようとすればするほど、教員配置が重要な条件になる点だ」と武俣校長。同校は通信制課程があり、普通の中学より恵まれた教員数が、約30年の習熟度別指導を支えてきた。
 
○理科教師が数学も
 長崎県北松浦郡鹿町町の町立鹿町中学校(森田正徳校長、約300人)が4年前、1年生の数学で習熟度別授業を導入したのも「学力差の広がりに、放課後の個別指導では対応しきれないため」(森田校長)だった。単元ごとに3段階のコースを生徒に選ばせ、評価も、方程式はCだったが図形ではA、などと細かくなる。「生徒も差別感を抱かず伸び伸び学習している」という。
 悩みは教員数。教員が、1教科2人しかいないため、数学の習熟度別授業には理科の教師を充てている。「効果があるので他の学年や教科にも広げたいのですが、できません」
 一方、3年前に1、2年の数学に、基礎(A)、応用(B)の両コースによる習熟度別授業を導入した愛知県刈谷市の市立雁が音中学(神谷行雄校長、約680人)。基礎コースの64%、応用コースの44%の生徒が、「コース別授業はいい」と答えた。基礎コースの生徒や親の反応が良かったことに教師たちは意を強くした。
 しかし、昨春、県の研究指定校からはずれると同時に、習熟度別授業は消えた。「何種類ものプリントを作り、仕事量が膨れ上がり、担当の教師は毎晩8時、9時まで学校に残った。結局、やった方がいいが教員数が足りず対応できない、ということになった」と、羽佐田昌也教諭(数学)は説明する。
 
○「放置」されがちに
 新学習指導要領案は、個性を伸ばす一方策として、「習熟の程度に応じた指導の工夫」を初めて中学校にも盛り込んだ。しかし、前回改訂から導入されている高校の教師の間では、批判的な意見も少なくない。「教員定数に余裕のない状況で始めると、できない子はやはり放置されるといった悪い面が出やすい」というのだ。
 千葉県立小金高校の加藤雅一教諭は、同県松戸市で週2回開かれる「自主夜間中学」で数学を教えている。「生徒」の大半は、登校拒否の経験のある中学生や高校生らだ。
 ここの子どもたちの中には、小学校の分数や小数、割合の計算からわからなくなる例もある。「できる子に教えるのは楽だ。わからない子に興味を持たせ教える方が何倍も大変だと思う」と加藤教諭。その経験などから同教諭は「習熟度別指導がうまくいっている高校は、人数などクラス分けが細かく柔軟で、生徒の希望が生かせている。だが、それができるだけの教員の余裕がないと、生徒にとっては単なる選別、振り分けになってしまう」と懸念する。
 文部省はこれまでの中学校教育を「画一的に過ぎた」とし、習熟の程度に応じた指導を導入することで、これを一挙に変えようとしている。だが文部省が説く「個に応じた指導」の成否は、教員の意識改革、努力はもちろんのことだが、教員の数を増やすという条件整備にもかかっている。もしそれに失敗すれば、いまよりかえって悪くなるという危険性を秘めての、「方向転換」といえる。


 
 
 
 
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