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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1989/02/15 朝日新聞朝刊
道徳重視(学校が変わる 新学習指導要領:3)
 
 指導計画、教委に提出 自由な実践縛る懸念も
 東京都内のある中学校で、この9日、受験目前の3年生を励ます1、2年生たちの声が体育館に響き渡った。「勇気を出して、嵐(あらし)を走れ」
 これにこたえて3年生の代表が「頑張ります」と決意を述べる。1、2年生は、「若者たち」を歌ったり、5000羽の折りづるを贈ったりした。
 同校は4年前、教師への暴力など荒れに荒れていた。生徒全員がそろっての激励会は、当時を知る先生たちにとっては、考えられない光景だった。
 
○話し合いの時間に
 学校の再建は、各クラスの話し合いが基礎になった。数十時間の話し合いを経て生徒会が立ち直り、「暴力一掃」を決議した。やがて、ツッパリたちが体育祭では学年ごとの応援団長を務め、「みんな力(りき)入ってるから」と文化祭にも参加してくるようになった。
 各クラスの話し合いに充てられたのが、週1回の「道徳」の時間だった。今でも、道徳の時間は授業をせず、学校行事の準備や校則の簡素化などを話し合う学級活動に使っている。
 「道徳」が小、中学校に設けられて30年になる。なのに、いまだに、とかく敬遠され気味だ。ちょっと古いが、文部省の6年前の調査では、学校全体の道徳の年間指導計画を5月時点で作成済みの学校は、小学校72%、中学校79%だった。
 「前年の計画をコピーしているだけ、という話もよく耳にする。まがりなりにも毎年作成しているのはせいぜい6割」(文部省幹部)との見方さえある。
 
○乗ってこない生徒
 道徳は戦前、「修身」と呼ばれ、「忠君愛国」思想の注入に大きな役割を果たした。こうした点から、教師たちに警戒心があることも敬遠の背景にある。だが、最大の壁は「最初から模範回答が見えるような本を読む授業に、子どもたちが乗ってこないからだ」と多くの教師がいう。
 文部省は2年前、学識経験者らを集めた道徳教育振興会議を都道府県ごとに結成した。「非行対策推進」が旗印だったが、狙いは学校の外堀を埋めることにあった。そして、今回の新学習指導要領案では、道徳教育の重視を前面に押し出した。
 重視路線を支える方策の1つは、従来は指導書で定めていた「年間指導計画の作成」を法的拘束力のある学習指導要領に盛り込んだ点だ。指導計画は学校が決め、教育委員会に提出する。「今後は教育委員会によるチェックが強まる恐れがある」と日教組は警戒する。
 
○副読本に補助検討
 文部省が求める年間指導計画はどんなものか。「すでに新指導要領案に沿ったものだ」と同省が折り紙をつける東京都品川区立八潮北小学校の場合は、学校行事などを通した指導の重点のほか、道徳の授業の使用教材などを事細かく書き込んである。《6年生2月第2週 国民としての責任を自覚し、国家の発展に尽くそうとする心情を育てる。資料は東京書籍。児童への発問は……》といった具合だ。
 教材も改革のターゲットにしている。道徳には検定を受けた教科書はなく、市販の副読本や文部省の奨励を受けて都道府県教委が作った副読本が自由に使われている。国による価値観の押しつけを避けるためだ。ところが、これらの副読本も十分には普及していない。そこで文部省は、副読本購入に補助金を出して使用の拡大を図ることなどを検討中だ。
 補助に当たって同省は、「検定はしない」としながらも「税金を使う以上は、どんな本でも対象にするわけにはいかない」(幹部)とする。準教科書化の思惑も見え隠れしているようだ。
 こうした文部省のてこ入れの一方で、道徳の時間を対話の場に活用する教師たちも増えている。今年度の「道徳と特別活動の教育研究賞」(総合初等教育研究所主催)で表彰された松山市立桑原中学校の野本千寿子教諭(41)もその1人だ。
 グラウンドで生徒に引きずり回され、「本音でぶつからなくては」との反省の上に立っている。建前は言わず、副読本にもこだわらない。校内暴力を繰り返した生徒が「相談できるのは、先生だけや」と言うほどの成果が、評価された。
 自由で自主的な取り組みは、各地で芽生えてきている。そこへ指導計画作成の強調や性急な副読本の普及推進という文部省の方針が頭をもたげてきた。「これでは、学校やクラスの実情に応じた実践を縛ってしまうのではないか」。こんな懸念が、現場から出始めている。


 
 
 
 
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