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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1989/02/12 朝日新聞朝刊
日の丸・君が代(学校が変わる 新学習指導要領:2)
 
 どう教える意味・背景 具体性に欠けあいまい
 毎朝、「君が代」のメロディーが流れると、運動場で遊んでいる800人余りの子どもたちがその場で、「きをつけ」の姿勢をとる。正面のポールに「日の丸」がゆっくりとのぼってゆく。それをじっと見つめていなければならない。
 宇都宮市から北東へ30キロの那須郡烏山町の町立烏山小学校。渡辺和太留校長は「このあたりの学校では珍しいことではない。1日の始まりに、気を引き締めるのが狙いだ」という。
 同校の子どもたちは、日の丸・君が代をどう理解しているのだろうか。「深い意味は分かっていないだろう。内容に踏み込んで指導していないからだ。国旗はともかく、国歌の中身を教えるとなると、君が代の君ひとつをとっても、どう教えるか、なかなかむずかしい」と渡辺校長はいった。
 
○事実上の義務づけ
 今回の学習指導要領案の大きな特徴の1つが、国旗・国歌の事実上の義務づけだ。現行要領の《国旗を掲揚し、国歌を斉唱させることが望ましい》を、《国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導する》と改めた。「《望ましい》では校長が指導しにくい。今後は教員が従わなければ、処分の対象になる」と文部省の担当官は説明した。
 日の丸・君が代は1958年の要領で「国旗」「君が代」として登場した。遠慮がちに「君が代」と呼んでいたのを「国歌」と言い換えたのが、約20年後の77年の要領だ。そして、それから10年余後の今回、「処分」を振りかざしての徹底化である。
 さらに今回の要領案で見逃せないのは、小学校の社会科などで、《わが国の国旗と国歌の意義を理解させる》との内容が盛り込まれたことだ。
 
○歯切れ悪い担当者
 一昨年12月の参院決算委員会で、君が代をどういう意味として教えるのか、と問われた西崎清久・文部省初等中等教育局長は、こう答弁した。「象徴であられる天皇陛下を中心として日本国あるいは日本国民というものがとこしえに繁栄するようにという歌詞の意味であると(教える)。これははっきり歌詞の意味として教えることは必要である」
 文部省が「君が代の君は、象徴としての天皇」と解説するのは、この答弁がもとになっている。しかし具体的にどう教えるかは、新要領案でもあいまいなままだ。憲法と天皇制にかかわる深刻な問題を引き起こしかねないだけに、文部省も「どこまで教えるかはまだ検討していない」(高岡浩二・小学校課専門員)と歯切れが悪い。
 一方で、日の丸・君が代の押しつけ反対、を唱えてきた日教組も「何が問題なのか、歴史的背景まで突きつめて教えてはいなかった」(神辺英保・教文部長)というのが現実だ。
 そんな中で、批判派の間からも、子どもたちに、その意味や背景をむしろ積極的に教える必要がある、との動きが出ている。
 「日の丸・君が代に反対するネットワーク」のメンバーで千葉県内の小学校教員である中村秀樹さん(38)。この1月、校舎に半旗が掲げられているのを見て、子どもたちに「なぜか知っている?」と問いかけた。「始業式」「違うよ。天皇が死んだんだ」から始まり、「なぜ天皇が死んだら、日の丸を揚げるの」「天皇陛下は偉いの」「どんなことをした人?」……。子どもたちの論議は展開した。
 音楽家や詩人、演出家らでつくる「国歌を考える会」(千田是也代表)が「知るや『君が代』 知らずや『日の丸』」と題するブックレットを数年前に発行したのも、狙いは同じだ。日教組の教員を中心に、約8万部が売れ、増刷を重ねている。
 
○「きちんと教えて」
 『日の丸・君が代問題とは何か』との著書のある山住正己・都立大教授は言う。「日の丸・君が代はいつどのようにつくられ、戦前の日本の社会でどんな役割を果たしたのかを歴史教育の中で、きちんと教えるべきだ。その一方、入学式や卒業式での日の丸・君が代は不要。それが実際には逆になっている」
 文部省は85年、卒業・入学式の日の丸・君が代の徹底を求める通知を出した。新要領案が実施されれば、日の丸・君が代はさらに多くの学校に広がる。
 しかし、歌詞の意味も知らされぬまま、ただ歌わせられるだけとすれば、子どもたちは将来、どう育つのか。新要領案が強調する柱のひとつである「日本の文化と伝統」とのかかわりは新要領案でも明らかでない。


 
 
 
 
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