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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1988/03/15 朝日新聞朝刊
教育論議をせばめるな(社説)
 
 隠れみのとか、腹話術の人形というふうに、審議会なるものはとかく、役所にとって都合のいい存在とみられがちだ。では、つぎの2つの審議会は、どんな存在だろうか。
 首相の諮問機関であるポスト臨教審の設置法案が国会に提出される。と同時に文部省は、臨時教育審議会(首相の諮問機関)が設けられていたあいだ休眠状態だった中央教育審議会(文相の諮問機関)を、4年ぶりに再開する方針を決めた。
 ポスト臨教審は、正式には臨時教育改革推進会議。委員は7人で、臨教審の答申を受けて進められる教育政策の「実施状況を検討し、円滑で効果的な推進について調査審議する」ことになっている。
 つまり、新しい教育改革をめぐって討議する機関ではない。中島文相も国会答弁で「臨教審答申を実現するための応援団役」と明言した。隠れみのどころか、表に出て旗を振る存在として認めた形である。首相直属だが、事務局は実質的には文部省が担当する。
 こうした審議会が必要かどうか、疑問を抱かざるをえない。首相自身も、何を諮問したらよいのか戸惑うのではないだろうか。
 それかあらぬか、文部省も設置法案成立にもう1つ熱を入れていないといわれる。自民党文教族の幹部は「ポスト臨教審法案は波間に浮かんでいるだけの船で、だれもスクリューを付ける人がいない」といったそうだ。
 政権末期の中曽根前首相の、たっての要請でポスト臨教審を設置する方向が決まった。しかし、出来上がった形は、前首相の意図とは相当に隔たったものだと思われる。「(臨教審答申は教育改革に)切り口をつけただけの部分や適当に処理したところもある」との評価にも示されているように、前首相は引き続き教育改革の論議を、と新審議会に期待していたのだろう。
 教育改革をめぐっては、まだまだ知恵を集めなければいけないという点では、われわれも同感だ。この受験体制をどうするのか。いじめや登校拒否の底に何があるのか。身近な問題で方向が定まっていない事柄も多い。
 再開する中教審に論議は任せてほしい、というのが文部省のハラらしい。文教族ともども、臨教審で首相官邸に奪われた教育改革の主導権を取り返したい、との思惑が見える。それは、竹下首相の唱える「つかさつかさに任せる」という考え方にも沿う。
 けれども、それでは論議が狭く限定されてしまう恐れが多分にある。たとえば、中教審にとりあえず諮問すると伝えられる「生涯学習のあり方」が、文部省だけでなく厚生、通産、郵政などさまざまな省庁にまたがる課題なのは明らかだ。あるいは帰国子女の問題も、外務、通産など広い範囲にわたる。
 過去13期の中教審の審議は、ともすると文部省の管轄の枠内にとどまりがちだった。国民の強い関心を呼び起こす教育論議を尽くしえたとはいいがたい。臨教審が発足するとき、従来の中教審で論議すればいいではないか、といった声がほとんど出なかったことが、中教審への期待の程度を物語っている。
 どのような場で改革を論じていくのか。この際、もう一度考えてみるべきだ。ポスト臨教審法案を手直しして、中教審よりずっと開かれた機関、たとえば臨教審と中教審の間に位置する性格の審議会をつくるという考え方もあるだろう。
 教育をこれからどうすればよいのか。
 その点で、このところ国会での野党の発言に活気が乏しいのも気にかかる。具体的な改革策をあげ、討議し、責任を十分に果たしてもらいたい。


 
 
 
 
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