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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1987/11/24 朝日新聞朝刊
再生なるか混迷日教組 学校に根をおろした活動を
 
 長期にわたった日教組(日本教職員組合、約60万人)の内紛は、総評の調停で組織分裂は免れ、来月の定期大会開催が決まり、やっと収拾したものの、内部の亀裂は深い。1年半も組織が正常に機能しない状況が続き、それぞれのグループが政治的な思惑にこだわり過ぎた結果、教育実践という最も大切な活動を重視する意識が薄れていったように思われる。学校教育の責任者としての立場から、運動再生の足掛かりをつかむことが、40年の歴史をもつ日教組の当面の課題だろう。
 (大森和夫編集委員)
 委員長人事に端を発した今回の内紛は、日教組が結成以来抱えてきた主流派(社会党系)と反主流派(共産党系)の対立、主流派内の右派と左派(社会主義協会系)の主導権争いを浮き彫りにし、政治闘争的色彩を強めてきた日教組運動の体質をあらわにしたものだった。
 日教組運動は時にはストライキを含む激しい闘争にみられるように、国の文教政策への抵抗を基本に据えた。それは昭和30年の保守合同を契機に、自民党・文部省が戦後の教育体制を手直ししようと、日教組の弱体化をも狙い、教育の内容や方法への介入、教職員の管理を強めたためでもあった。「戦後教育の見直し」に歯止めをかけようとする闘争は、保守、革新が激しくぶつかり合う政治状況の下で、父母に理解される側面をもちながらも、一方で内部対立の激化、財政負担増、組織の衰退という大きな重荷を日教組自身に背負わせることになった。
 日教組の政治的な体質は、文部省・自民党に向けられただけでなく、内部の敵対関係に拍車をかけ、大会のたびに路線の対立となって表面化した。日教組が初の1日ストを実施した49年、定期大会で反主流派が主流派を「スト万能、スト至上主義」と批判、組織は揺れた。その後、主導権を握る主流派右派が組織防衛などのため柔軟な対応に変わり、右派と反主流派が“スト自粛論”、主流派左派が「ストを構えた戦術論」という対立の図式をとる。
 一方、労働戦線統一問題や教育改革闘争では、“現実路線”の右派と「右寄り再編の労戦統一反対」「臨教審路線粉砕」を掲げる左派、反主流派の確執が続いている。とくに全民労連への対応が、左右の抗争の火ダネであることに変わりはない。
 また、執行部と現場教師との断絶をみせつけた。例えば臨時教育審議会答申による教師の初任者研修制度に対し、組織として反対を表明したものの、教師一人ひとりが具体的にどう対応していけばいいのか、という課題に明確な指針を示すことはできなかった。日教組運動にしばしば指摘されるひ弱さを物語るものだろう。中央執行委員(定数40人)のほとんどが役員専従の休職期間(5年)を過ぎた“プロ専従”であるという事情も一因だ、という指摘もある。
 過去32回の統一ストで延べ84万人が懲戒処分を受けたことが、日教組運動に暗い影を落としている。その大半を占める戒告処分でも、3カ月昇給が遅れると、1年で約3万円の減収になる。こうした経済的損失を補償するため日教組は毎年、一般会計の約4倍の救援資金特別会計(61年度約133億円)を組む。このため組合員1人当たりの組合費は、月額平均約7000円(文部省調べ)になるという。とくに救援資金のうち約90億円が福岡など左派の九州各県組合員(被処分者)に支払われており、主流派内の対立を複雑にしている。
 しかし、なんといっても組織率の激減が、日教組の最大の悩みだろう。33年に86.3%だったのが、61年10月には48.9%まで下がった。とくに新採用教職員の日教組加入率の低下が目立ち、28.2%に落ち込んだ(いずれも文部省調べ)。若い層を中心とした“組合離れ”に加えて、政治的抗争やスト戦術、高い組合費負担などへの反発や不満が増えた結果ではないだろうか。執行部の労働運動、政治闘争重視の方針と、教職員の“日教組離れ”が悪循環を繰り返し、組織内のミゾが、いっそう深くなっていったようだ。
 日教組が、労働界の上部団体に加わり、さらに支持政党を通じて国の文教政策を批判し、自らの教育運動を展開するのは有力な運動の形態だろう。その高まりによって、教育の進展に一定の役割を果たしのは事実だし、今後も、そうした面の期待は少なくない。
 だが、子どもたちが偏差値教育に悲鳴をあげ、体罰やいじめがいぜん日常化している教育現場の状況は、いま何より教師の教育力が問われていることを示している。切実な教育課題に正面から取り組む運動こそが教員組織に求められるものであり、学校現場に根をおろした実践活動を大事にする姿勢が、日教組再生の原点ではなかろうか。


 
 
 
 
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