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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1987/04/15 朝日新聞朝刊
守る 大きかった代償(揺れる原点 教育基本法40年:4)
 
 日教組(約60万人)は6月、結成40周年を迎える。一貫して教育基本法を「守る」姿勢を中心に据えた闘いを展開してきた。だが、組織はさまざまな難問を抱えており、日教組は、行き詰まりが指摘される学校教育に効果的な役割を果たしてきただろうか、という疑問も少なくない。
 いま、日教組に加入している公立小、中、高校の教職員は2人に1人。かつて86.3%を誇った組織率は49.5%(60年10月現在、文部省調べ)に落ち込んだ。基本法をよりどころにしてきた闘争は、32回の統一ストライキを含み、その結果、延べ75万人が懲戒処分を受けた。文部省や教育委員会の厳しい処分方針と、毎年百数十億円にのぼる処分者救援のための財政負担が組織に大きな打撃を与えたことは否めない。日教組にとって、基本法を「守る」運動の代償は大きかった。
 32、3年の「勤評反対」や「学力テスト反対」、いまも続いている「主任制反対」闘争は、国や県の施策が子どもの自主性を伸ばす上で障害になり、基本法の精神に反している、という主張に基づいていた。
 だが、文部省もまた、教育基本法を根拠とした行政を強調していた。日教組が「基本法に反した官製道徳教育だ」と激しく反対した33年の小、中学校における「道徳」の義務化について、「道徳性を養うという目標は、基本法に定められた教育の根本精神に基づくもの」(学習指導要領)というのが文部省の立場だった。ともに、基本法をベースにしながら、「戦後教育を『手直し』しようとする保守政権の教育政策を、革新は『教育の反動化』と非難する。そこから教育改革をめぐる保守対革新、さらに具体的には文部省対日教組という不幸な対立関係が生み出された」と天野郁夫東大教授は分析する。
 
○問われる教師の力
 一方、体罰やいじめが日常化している実態を文部省の調査が端的に示している。小、中、高校69校の調査では、小学生の41%が「いじめられた経験がある」と答え、何らかの体罰を受けたという子どもは、小学生が34%、中学生が31%、高校生が23%という。これを裏づけるように、日教組の教育研究機関、国民教育研究所が、小、中、高校の教師約5200人を調べたところ、全体の46%、2人に1人近くが「体罰も指導方法の1つ」と考えていることが明らかになった。体罰を肯定する教師は、「学校の管理上やむを得ない」と答えている。
 日教組が「体罰やいじめなど子どもの人権侵害をなくす運動を進める」という方針を打ち出したのも、「教師自ら、管理体制に組み込まれ、偏差値を尺度とする選別、差別の教育の一端をになっている」(田中一郎委員長)という反省をこめているのだろう。教師の体罰は“教育の敗北”であり、いま、教師の教育力が厳しく問われている。
 
○「国家主義」に対決
 「教え子を再び戦場に送るな」というスローガンに代表される平和教育運動も日教組運動の大きな柱だ。しかし、政治運動の色彩を帯びる場合が多く、自民党・文部省の攻撃の的になりがちだったし、「平和教育を進めていく上で、さまざまな制約を受けている」(泉忠士長崎市教組書記長)という。長崎市教委の「平和に関する指導資料」は、平和教育の根拠について「憲法、教育基本法に示された『平和希求』の精神に求め、いわゆる『原爆を原点とする』ものではない」という考えを示している。原爆体験を平和教育の教材として十分に活用できない、という不満が教師の間に少なからずあるようだ。
 ところで、自民党は毎年、「民族の伝統」「祖国愛」を運動方針として掲げ、「民族と国家に対する意識を欠如させることを狙う日教組には毅然とした態度でのぞむ」(62年運動方針)という強硬姿勢をとり続けている。かつて、荒木万寿夫文相(35年)らが「日本国に対する忠誠心が欠けている」として教育基本法の再検討を主張したように、自民党の文教政策の底流には、基本法に対する不信感が漂っている。基本法への不満と「日教組対策」は一体のものだ。岐阜、長崎、岡山の各県議会は「基本法の改正を求める」決議や要望書を採択している。基本法を「守る」運動を取り巻く環境は厳しい。
 日教組は、臨教審答申に対して「戦前の国家主義の教育に戻し、基本法の精神を著しくゆがめるもの」と反発する。基本法を「守る」運動を、戦前の暗い教育に逆戻りさせないための歯止めと位置づけているからだ。だが、その一方で、教師一人ひとりが、「人権」や「平和」という基本法の大事な理念を学校教育の中で実践することもまた、基本法を「守る」運動の重要な部分だろう。(大森和夫編集委員)


 
 
 
 
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