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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1987/04/11 朝日新聞朝刊
解釈 能力主義で鋭く対立(揺れる原点 教育基本法40年:3)
 
 「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならない」と定めた教育基本法第3条の解釈とその運用をめぐって、2つの考え方が鋭く対立している。つきつめると「ひとしく」と「能力に応ずる」のどちらに力点を置くか、という問題であり、教育の方法に大きな違いが出てくる。
 千葉県松戸市のある中学校で、58年4月、「進度別クラス編成」が実施された。1、2年生の総合能力を「1」から「5」までの5段階に分け、各学年9クラスのうち6クラスはすべて評価「3」の生徒、2クラスは「2」と「4」の生徒を半数ずつ。残りの1クラスは「1」と「5」の生徒で、「1」の約20人を窓側に、「5」の約20人を廊下側に座らせる、という徹底した学力別のクラス編成だった。
 当時の校長は「わかりやすい授業をめざし、一人ひとりの学力をより伸ばすのが目的」と説明した。だが「子どもを学力だけで差別し、選別するものだ」という反発が起こり、大きな論議を巻き起こした。市教委や文部省が「できる子とできない子というようなコンプレックスを持たせるやり方は好ましくない」という指導方針を示したため、結局、この中学校では、1カ月余りで元の学級編成に戻した。だが、子どもの能力に応じた指導方法が、差別や選別につながるかどうかという問題を提起した。
 
○53年から習熟度別
 国民の教育を受ける権利を保障した憲法第26条では「能力に応じて、ひとしく」と、基本法とは逆の配列になっているが、「ひとしく」が、戦前の学校教育の反省に立った新しい理念としての機会均等を意味し、「能力に応ずる」が、一人ひとりの個性の伸展をめざした考え方であるという点では、関係者の認識は一致している。「ひとしく」と「能力に応ずる」を同時に実現するのが事実上困難であるために、どちらを重視するかは、それぞれの教育観が深くかかわってくる。
 高校では、53年に学習指導要領が改定され、「習熟度別学級編成」が進められている。「高校教育の大衆化によって生徒間の学力格差が増大したため、能力に合った授業を進める」(文部省高校課)ため。習熟度とは、学習の到達度であり、学力を基準にして行う学級編成は、すでに半数近い公立高校が実施している、という。中学校でも、「個人差に応じた学習指導」が行われており、教育課程審議会は昨年10月の「中間まとめ」で、「習熟度」に応じた指導方針を打ち出した。
 日教組などは、「能力・発達の差別、格差をはっきりさせる能力中心主義の面をむき出しにしている」(平野一郎東京都教組委員長)と批判する。学校が、学力の序列化によって競争と選別の場になっている、という指摘が少なくない。
 この対立は「能力の豊かな者を伸ばすという面を大事にするのか、そうでない者あるいはハンディキャップを持つ子の能力を発揮させる教育をめざすのか、という教育観の違いの表れ」(堀尾輝久東大教授)だろう。
 
○自民の不満を反映
 “能力主義”の流れは、高校教育の多様化を提唱した41年の中央教育審議会の答申がきっかけとなった。産業界の「人づくり政策」に沿うと同時に、「ひとしく」ばかりを強調し、「能力に応ずる」という理念が無視されてきたという「戦後教育」に対する自民党や文部省の不満を反映したものだった。
 臨教審の第2次答申は、「ひとしく」という理念が行き過ぎたために、画一性や硬直性の弊害をもたらした、という考えを明確にしている。“能力主義”の教育をさらに推進することになる、という見方が多い。だが、「能力は画一ではなく、発達にも早い遅いがある。その違いを大切にし、発達の必要に応じて、ていねいで手厚い教育を保障することが教育基本法の精神だ」(堀尾教授)という視点を見失ってはならないだろう。
 教育が「不当な支配」に服してはならない、という第10条も論争の的になっている。国が教育の方法や内容に介入するのは基本法の精神に反するという日教組などに対し、自民党や文部省は、ストライキなどの政治闘争をする日教組こそ逸脱している、と反撃する。
 最高裁は51年の「旭川学力テスト事件判決」で「国は『必要かつ合理的な範囲』で、教育内容を決定する権能がある」として、国の関与を認めたが、同時に「抑制的であるべきだ」と慎重な対応を求めた。文教行政の範囲をめぐる対立はいぜん続いている。前文と11条からなる基本法の解釈には、教育観や政治的立場の違いが影を落としている。(大森和夫編集委員)


 
 
 
 
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