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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1987/04/10 朝日新聞朝刊
3原則 なし崩しの変更(揺れる原点 教育基本法40年:2)
 
 戦後の新制高校がめざしていたのが「高校3原則」だった。小学区制、男女共学制、総合制の3つを満たした高校が、教育基本法を原点とする「戦後教育」の1つの理想だったが、いま、男女共学を除いてほとんどその姿を見ることはできない。「教育における地方自治がなし崩しになった過程を象徴している」と中小路清雄日教組書記長は指摘する。
 総合制は、多様な進路選択を可能にするため、1つの高校でいろんな領域の専門的基礎教科を勉強できる制度である。3原則に基づく高校は、基本的には中学校の仕組みと同じで、中学校からの指導の一貫性や地域との結びつきが強まり、基本法がめざす「個人の尊厳を重んじる」教育ができる、といわれた。
 
○産業界からの批判
 ところが、「総合制では専門的な職業教育が十分に行われない」という批判が産業界を中心に高まり、小学区制についても、進学率の高い公立高校を選択できない、私立にくらべ公立の学力が劣る、などの不満がつのった。普通科と職業科の分化が進み、複数の高校を1つの学区とする中・大学区制に転換していった。「産業教育の振興と大学入試の選抜体制を定着させるという国の方針が大きな影を落としていた」(木下春雄国民教育研究所員)ようだ。
 全国で最後まで小学区制を続けていた京都府では、53年に誕生した保守府政が教育制度の改革を大きなテーマとして掲げた。京都府教職員組合などが、小学区制維持を主張して、激しい反対運動を展開した。だが、60年に、学区外の高校への進学を認める「通学圏」が導入され、「地域の子どもは地域の高校へ」という小学区制は崩れた。公立高校の学力向上が大きな目的とされ、府教育委員会は「いい方向に進んでいる」と評価する。しかし、「教育委員会は結局、文部省に右へならえだ。地方分権は建前に過ぎない」と川上雅詮京教組副委員長は疑問を投げる。
 「3原則はまったく意味をもっていない。多様なコースの中から選べるようにするのが望ましい」と文部省高校課。「1つの高校で学科間の移動ができないのだから、多様化といっても、3原則でいう総合制とは異質だ」(木下氏)という批判があるが、文部省の意向は、都道府県教委に浸透していった。
 教育の地方分権が大きく後退したきっかけは31年の公選制教育委員会の廃止だ。国会に500人の警察官が出動する、という異常事態の下で、地方教育行政法が成立。任命制に切り替えられた教育委員会は中央直結型となり、文部省や政権党が口出しできる権限が大幅に広がった。
 「戦後教育」は、戦前の「皇民の教育」の反省に立ち、憲法と教育基本法が定めた国民の権利としての教育を保障するところに大きな特徴がある。それを実現するために、23年に発足したのが公選制の教育委員会だ。文部省が戦前のような教育の国家統制の中枢機関ではなく、地方分権を確かなものにする狙いが込められていた。
 だが、30年の保守合同をきっかけに、政府・自民党や財界は、教育政策を通して政治の体制固めと経済の再編を進める意図を強めた。任命制教委を皮切りに、文部省の役割を高める制度改革が次々と打ち出され、「戦後教育」はその内容を大きく変えていった。
 
○活力を失った教委
 学習指導要領もその1つだ。最初は文部省が22年に教科内容の単元や配列について示した“手引き”(「試案」)だったが、33年に官報に「告示」することで法的拘束力をもたせた。法律を変えずに内容を大きく変更する手法は、文教行政の特質だ。学習指導要領が教育課程の国家基準となり、「教科書検定が強化され、教育内容に文部省のワクがはめられた」(山住正己都立大教授)といえそうだ。
 さらに、校長―教頭―主任―一般教師というタテの管理体制が敷かれ、「官製研修」が「教育の国家統制」の性格を強めている。文部省主催の中央研修(校長・教頭22日間、中堅教員36日間)や、都道府県段階の新任教員、5年次、10年次研修など、いずれも、国の予算措置と文部省の方針に基づいて研修が行われ、“選ばれた先生”が参加する。臨教審答申による初任者研修制が今年度から試行実施され、「官制研修」はさらに強化される。
 教育のあらゆる領域に文部省の管理、統制の網がかけられ、教育委員会の主体性は大幅に制限されている。中央集権化が進み、教委の活力が失われたこともまた、教育の画一化、硬直化の大きな原因だろう。(大森和夫編集委員)


 
 
 
 
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