日本財団 図書館

共通ヘッダを読みとばす


Top > 社会科学 > 政治 > 成果物情報

私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1987/04/02 朝日新聞朝刊
臨教審第3次答申 見えぬ教育の未来像<解説>
 
 臨時教育審議会の第3次答申を読んで感じるのは、改革の教育的効果、つまり個々の改革を通して子どもや親はどのような教育が期待できるのか、という道筋が明確に示されていないことだ。教育関係者の多くは、第1次、第2次を含めた臨教審答申全体に対して、そうした物足らなさを抱くのではないだろうか。(大森和夫編集委員)
 「教育財政」(第6章)の中で「民間活力の導入」構想が、教育の分野では初めて打ち出されている。だが、規制緩和の重要性だけが強調され、それによって教育がどう変わるのかという教育改革の青写真が浮かんでこない。さらに「民活導入」は臨教審論議の底流にある「教育の自由化」を定着させることに大きな狙いがあるようだ。規制緩和という改革の手段が独り歩きし、公教育の役割があいまいにされる恐れはないだろうか。
 「民活導入」は、答申によると「教育の活性化」を目的とし、規制や手続きを大幅に緩め、資産の活用、寄付など学校への民間資金の導入、官・民の役割分担の見直し、受益者負担の適正化などを積極的に進める、という。だが、それが子どもたちの教育にどのようにかかわってくるのかというプロセスが描かれていない。そこに効率化や競争や利潤追求を重視する考え方が強く働いているのは否めないだろう。そのために教育活動が企業ペースで進められ、たとえば高等教育が産業界の要請を優先したり、教育の質や量が親の経済力で左右される状況が生じるのではないか、という不安が消えない。
 それは「自由化」に対する本質的な懸念にも通じる。「初等中等教育の改革」(第2章)で、民活導入の視点から塾など民間教育産業の役割を積極的に評価しているのも「自由化」をさらに深めようとする表れだろう。
 だが、答申は規制緩和の中身について吟味しているとはいえないようだ。「教育の自由化」については、否定的な考え方も根強く、臨教審でも決着はついていない。行政上の規制緩和がエスカレートすれば、さまざまな摩擦や混乱が教育の場に生じるだろう。その点で「民活導入」が「教育の産業化、商品化をもたらし、公教育の解体につながる」(日教組)という批判はある程度うなずける。「民活導入」を進めるには、まず個性重視の教育を実現するという教育改革の原点を改めて確認する必要があろう。
 教育財政全体については、当初から、財政再建路線の行革派と教育改革予算重視派の2つの考え方が鋭く対立していた。前者はスクラップ・アンド・ビルドで既存の教育政策を見直し、新たな支出はスクラップできた範囲にとどめるべきだと主張。中曽根首相に近い人たちが中心だった。後者は、行革は金の節約だが、教育にはまだ金が不足しているとして教育予算をマイナス・シーリングの対象外とするよう要求。大蔵省対文部省・自民党文教族の“代理戦争”の様相をみせた。
 結局、内需振興の観点から教育、文化などへの投資拡大論が大勢となり、1月末の「審議経過の概要(その4)」に盛り込まれていた行財政改革との「整合性」は「関連」に書き換えられた。「民活導入」が固まったことで「自由化」推進の足がかりができた、という思惑が行革派にあったといえるだろう。同時に、政府・自民党内に強まってきた緊縮財政の手直しを求める動きを敏感に反映していた。
 「行革」の波にもまれながらも「教育改革実現のための教育財政の充実」を政府に求めたのは、辛うじて臨教審の姿勢を示したものとして評価できるだろう。だが、いぜん「行財政改革との関連」という大枠がはめられている。こんどの答申が教育予算削減の歯止めになるかどうか疑問がないわけではない。
 臨教審は「子ども」を主人公に据えた論議を尽くしたといえるだろうか。そうした疑問はいぜん解消していないように思われる。


 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。





サイトに関するご意見・ご質問・お問合せ   サイトマップ   個人情報保護

日本財団会長笹川陽平ブログはこちら



ランキング
注目度とは?
成果物アクセスランキング
11位
(28,998成果物中)

成果物アクセス数
495,207

集計期間:成果物公開〜現在
更新日: 2017年8月19日

関連する他の成果物

1.私はこう考える【北朝鮮について】
2.私はこう考える【中国について】
3.私はこう考える【ダム建設について】
4.私はこう考える【死刑廃止について】
5.私はこう考える【公営競技・ギャンブル】
6.私はこう考える【天皇制について】
7.私はこう考える【国連について】
8.私はこう考える【自衛隊について】
9.私はこう考える【憲法改正について】
10.私はこう考える【イラク戦争について】
  [ 同じカテゴリの成果物 ]


アンケートにご協力
御願いします

この成果物は
お役に立ちましたか?


とても役に立った
まあまあ
普通
いまいち
全く役に立たなかった


この成果物をどのような
目的でご覧になりましたか?


レポート等の作成の
参考資料として
研究の一助として
関係者として参照した
興味があったので
間違って辿り着いただけ


ご意見・ご感想

ここで入力されたご質問・資料請求には、ご回答できません。






その他・お問い合わせ
ご質問は こちら から