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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1987/03/16 朝日新聞朝刊
まだ目がさめない日教組(社説)
 
 委員長人事をめぐる組織内の対立から、昨年9月に予定していた定期大会を開けないまま、機能マヒの状態が続いていた日教組がようやく臨時大会を開いた。
 運動方針もなければ、予算も決まっていないのでは、組織として存在しないも同然である。こんどの臨時大会で、それを生きかえらせるための、最低の条件だけは整えた。
 教育が行き詰まり、学校教育のあり方が問い直されなければならない段階にきている。臨教審による改革論議が進み、それに乗って文部省は着々と手を打っている。教育改革が、中央権力の考えだけで、上から下への一方通行の形でおこなわれるのは、決して健全な姿とはいえない。
 教育の主人公である子ども・若者の側に立った考え方が、十分に反映される必要がある。現場教師の最大の組織である日教組に、その役割を期待している父母・国民は多い。われわれが1日も早い混乱の収拾を求めてきたのも、そのためである。
 しかし、焦点の人事問題は、6月に開催するという次の定期大会まで棚上げにされており、こんどの臨時大会では何の展望も開けなかった。敵対感情をあらわにして、非難の応酬を繰り返したことは、かえって対立を深刻化させたのではないかと思える。
 対立点のまず第1は、田中委員長を中心とする主流派右派が、形勢不利とみて委員長選挙をおこなう定期大会を開かせなかった規約違反問題である。これは、大義名分としては反主流派の主張に分があり、主流派の論理立ては苦しかった。
 だが、この背後にはもう1つ、進行中の労働戦線の統一問題への対応がある。全民労協による統一への参加を選ぼうとする主流派右派に対して、共産党系の反主流派は「右翼再編」だとして反対してきた。これに主流派左派が同調したことから、従来の勢力バランスが崩れて主導権争いに発展したのである。
 臨時大会でも、ことごとにこの路線論争が繰り返された。いわば、あくまで労働運動の多数派に加わるべきだという現実論と、少数派になっても基本的立場をあいまいにしてはならないとする原則論の対立である。これを互いに一歩も譲らずいいつのるのでは、歩み寄りの可能性など生まれる余地はない。
 日教組も労組であるからには、労働運動の流れの中でどのような位置を占めるかは、重要な問題には違いなかろう。しかし、それがすべてではないはずである。全国の教師が、立場や地域の差を超えて結び合い、必要に応じて援助し合う組織――ここに、その存在価値の核心があり、幅広い支持を得られる根拠もあることを忘れてはなるまい。
 いま、教育は大きく揺らいでいる。日教組40年の歴史の中でも、最も真剣に教育そのものと取り組まなければならない時といっていい。臨時大会でも、「いやおうなく導入されつつある初任者研修制度に、どう対応するのか」といった、切実な問いかけが各地代議員からあがっていた。
 沖縄の代表は、君が代・日の丸問題で、かつてない強制的やり方がおこなわれているとして、「全国の仲間のみなさんの支援を」と声をふりしぼって訴えていた。これ以上、対立を固定させ、組織の内と外のどちらに対しても、何の役割も果たせない状況をつづけるならば、日教組の存在理由が問われることにもなりかねない。
 ここまでくれば、執行部の総入れ替えぐらいの覚悟を示し、新たな組織として出直す態勢を整えるべきである。世間は6月まで待ってはくれない。


 
 
 
 
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