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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1986/10/21 朝日新聞朝刊
学校の何が変わるのか(社説)
 
 文部省の教育課程審議会が、「教育課程の基準の改善に関する基本方針」を、中間まとめとして発表した。幼稚園から高校まで、学校教育の内容・方法の全体を手直しする作業である。
 これまでも、ほぼ10年ごとにやってきたことだが、今回は一方で、臨時教育審議会による、広い視野からの教育改革案づくりが進んでいる。それと並行して手をつけるからには、臨教審の手探りしている大きな方向性を踏まえ、かなり抜本的な発想の転換がなくてはならない。
 中間まとめの内容を見ると、戦後ずっと続いてきた学校教育の枠を、1歩も2歩も踏み出した感じを与える点が、確かにある。直接、学校教育にたずさわっている関係者にとっては、大変な改革と思えることだろう。
 小学校の1、2年生では社会科と理科がなくなり、生活科に統合される。中学校での選択教科の幅を広げ、中学生の段階から一種のコース多様化が導入される。高校では、学習指導要領に示す以外の科目も、設けることができるようにするという。みな相当な、さま変わりにつながる転換といえる。
 各教科の独立性が強くなりすぎ、子どもの全人的な成長・発達のためという総合的な目配りが欠けてきている。その壁を破る必要はある。その観点からすると、これは1つの方向である。てんでに自分の担当する教科の重要性を言い立てる、いわゆる「教科エゴ」は、もう捨ててもらわねばならない。
 しかし、現在の学校教育がぶつかっている問題の本質、いま子どもたちの成長を阻害している事態の本質は何か。それに照らして考えると、こうした手直しで、どれだけの展望が開けるか、きわめて疑問である。
 いきいきした生活体験、勤労体験をする機会がほとんどないまま、点数で計れる学力の向上をめざす机上の学習が、貴重な成長期を塗りつぶしている。その意味で、教科間や学校段階ごとの重複をなくし、机上学習を減らして、その分を体験を通した人間的成長のための学習に回すというのは分かる。
 ただ、いまは高校入試という点数至上の厳しい関門が、ほとんどすべての子どもたちの前に立ちはだかっている。この現実がそのままでは、それこそ机上の理屈に終わるだろう。中学校での選択履修の拡大は、子どもたちの心豊かな成長どころか、高校格差の存在を当然の前提にした、選別の早期化にしかならないのは明らかである。
 中間まとめは、この面をもう一つ別の方法で補おうとしている。道徳教育の強化である。道徳の授業だけでなく、社会、国語、体育、特別活動など、あらゆる場面を通して心の教育を重視するよう強調している。
 人間は、1人では生きて行けない。社会の一員として、多くの人々とかかわりながら生きるところに、喜びもあり生きがいもある。そのために、わきまえておくべきことが、たくさんある。いま子どもたちの成育環境からは、おのずからそれを体得していく条件が乏しくなっている。
 学校の中でも、その意味での「道徳」を獲得させる工夫は必要である。だが、これまでも指摘してきたように、それは道徳の副読本を作って教えこめば身につくものではない。子どもたちが、実際の体験を通して自得する以外に、真の道徳意識は育たない。
 中間まとめは、子どもたちに主体的な学習能力をつけさせることを目標に掲げながら、結局、基本的には従来通りの学校での教化主義依存を抜け切れていないようである。
 例えば、学校5日制と、それに関連する総授業時間の問題、中学校の外国語の扱いや、教科と教科以外の活動領域の関係など、言葉の上ではいろいろと触れてはいる。しかし、結論は「現行通り」にとどまっている面のほうが、全体には目立つのである。
 課程審の作業は、来年末まで、さらに続けられる。「課程審に言える範囲はここまで」などと逃げず、もっと関連する事項にも踏みこんで、学校と子どもの現実に対応する大胆な見直しを試みるよう求めたい。


 
 
 
 
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