日本財団 図書館

共通ヘッダを読みとばす


Top > 社会科学 > 政治 > 成果物情報

私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1986/01/24 朝日新聞朝刊
臨教審にほしい姿勢の一貫性(社説)
 
 臨時教育審議会の3度目の審議経過報告が発表された。4月に出す予定の第2次答申の方向を示したものである。次の答申は、臨教審がつくる改革案の主力になるだけに、こんどの報告のもつ意味は大きい。
 全部で8章からなっているが、最も注目されるのは、第1章「21世紀に向けての教育の基本的な在り方」である。第2章以下が、分野別の各論であるとすれば、そのすべてを貫く改革の精神を述べた総論にあたる。
 それによると、日本は大量生産型・標準規格型の「国による教育」を清算し、「自由・自律、自己責任の原則」にもとづく教育を進める段階にきている。そのためには、教師自身、学校自体が自律的にならねばならない、という。
 どうすれば、そうなるか。「思い切った権限委譲による、当事者能力の強化の方向に踏み切ることしかない」というのが、第1章の主張である。きわめて明快であり、この結論が導き出されるまでの歴史的に見た現状分析も、筋が通っている。
 たしかに、高度経済成長をなしとげたことで、日本はかつて経験したことのない社会状況を持つことになった。当然、教育のあり方も影響を受けざるをえないのに、過去の学校教育の成功に安住して、対応が遅れてきた。そこに画一性・硬直性が生まれ、さまざまな教育荒廃と呼ばれる現象も現れている。
 なぜ対応が遅れたかについては、意見が分かれる要素もあろうが、そうした大きな時代の流れのなかで教育改革をとらえる姿勢は、ぜひとも必要である。とすると、過度の統制、干渉、管理をやめ、自由、自律、自己責任にまかせる方向への転換は、そこから出てくる半ば当然の結論であるといえる。臨教審がここで打ち出した認識・主張には、基本的に賛成したいと思う。
 だが問題は、生涯教育、高等教育、初等中等教育などの分野の改革構想に、この考え方がどこまで反映するかである。報告全体を通して見ると、残念ながら章によってムラがあり、一貫性が欠けている。なかでも、初等中等教育を扱った第4章、教員の資質向上策を独立させて述べた第5章の考え方には、逆の方向を向いている印象すらある。
 子どもと直接向かいあう教師に対する期待は、時代がどう変わろうとも小さくなることはない。いい先生を、たくさん生み出さなければならないのは、もちろんである。だが、一般企業より採用試験の時期を早くする、何度も面接する、採用後の研修をきびしくするといった制度いじりで、いま求められているような教師がつくれるものだろうか。
 初任者研修を1年に延長し、退職したベテラン教師につきっきりで指導させる新制度の導入が、改革の「目玉」のように扱われている。これが「自由・自律、自己責任の原則」と、どう結びつくのだろうか。
 第1章は、「画一化、硬直化、現場の創意工夫の減退、他律性の助長にしかつながらないような、過度に瑣末(さまつ)主義的・形式主義的な統制・管理の行政体質」を改革すべきだと主張している。教育界の現状をそのままにして、この新制度をとり入れた時に始まる教師づくりは、まさにそのようなものでしかないのではないか。
 第1次答申の段階でも、改革の方向性をめぐって、同じようなちぐはぐさが目立った。まず改革の理念をはっきりさせてから、具体策の検討に入るのでなく、4つの部会が総論と各論を並行して考えるというやり方をしたための矛盾だった。
 しかも、いわゆる自由化論の立場をとる委員が総論を、基本的に従来の学校制度を基礎にしながら弾力化・多様化を進めようとする反自由化論の委員が初等中等教育の分野の各論を受け持つかっこうになっている。第1次答申後は、委員全員の総会での議論を重視してきてはいるものの、やはり考え方の対立が解決していないようである。
 答申をまとめる上で、この点はぜひとも克服してもらわなければならない。せっかく正しい改革の方向を示しながら、実際に実現するのは、それと相反する制度だというのでは「羊頭狗肉(くにく)」のそしりをまぬかれない、と思うからである。


 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。





サイトに関するご意見・ご質問・お問合せ   サイトマップ   個人情報保護

日本財団会長笹川陽平ブログはこちら



ランキング
注目度とは?
成果物アクセスランキング
11位
(28,694成果物中)

成果物アクセス数
493,952

集計期間:成果物公開〜現在
更新日: 2017年4月22日

関連する他の成果物

1.私はこう考える【北朝鮮について】
2.私はこう考える【中国について】
3.私はこう考える【ダム建設について】
4.私はこう考える【死刑廃止について】
5.私はこう考える【公営競技・ギャンブル】
6.私はこう考える【天皇制について】
7.私はこう考える【国連について】
8.私はこう考える【自衛隊について】
9.私はこう考える【憲法改正について】
10.私はこう考える【イラク戦争について】
  [ 同じカテゴリの成果物 ]


アンケートにご協力
御願いします

この成果物は
お役に立ちましたか?


とても役に立った
まあまあ
普通
いまいち
全く役に立たなかった


この成果物をどのような
目的でご覧になりましたか?


レポート等の作成の
参考資料として
研究の一助として
関係者として参照した
興味があったので
間違って辿り着いただけ


ご意見・ご感想

ここで入力されたご質問・資料請求には、ご回答できません。






その他・お問い合わせ
ご質問は こちら から