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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1985/11/21 朝日新聞朝刊
疑問残るスト禁止の合憲性(社説)
 
 49年の春闘の際、「4・11統一スト」を企画、指導したとして、槙枝元文・前日教組委員長らが地方公務員法の争議あおり罪に問われた裁判で、1審より重い執行猶予つきの懲役刑が東京高裁から言い渡された。
 公務員の争議を禁止し、違反行為に刑事罰を科すことが、労働基本権を保障した憲法28条に反しないかをめぐっては、かつて裁判で激しく争われたが、12年前の最高裁の「逆流判決」以来、合憲の判断がほぼ定着し、論点自体が色あせた感さえある。
 1審につづく有罪の結論は、その意味で予想通りといえる。しかし、今回の判決は一部で最高裁の憲法解釈に異論を唱え、争議全面禁止と刑事罰の可否が今日なお重要な憲法問題であることを示している。
 この問題での最高裁の判例は昭和40年代から50年代初めにかけて揺れ動いた。44年の東京都教組事件・全司法仙台事件で、最高裁は「労働基本権の保障は公務員にも及ぶ。その制限や違反行為への制裁は最小限にとどめなければならない」として、争議あおり罪が成立するのは争議の内容やあおり行為がとくに違法性の強い場合に限られる、との判断を打ち出した。
 その底には「一切の争議を禁止し、その企画、指導をすべて処罰するのは違憲の疑いがある」との考えが横たわっていた。
 しかし、この判決には政府・自民党から「偏向判決」の声があがり、最高裁は4年後の全農林警職法事件で8対7の1票差でその考えを放棄し、争議禁止・あおり処罰を全面合憲とする立場を採用した。4・11ストはその翌年、日教組が大幅賃上げ、スト権奪還を掲げ、全国規模で行った争議である。
 今日からみると、旧判例に一部ワキの甘さがあったことは否定できない。しかし、判例の短期間の変遷は異例で、しかも2つの立場は解釈技術の違いではなく、労働基本権のあり方に関する基本的な考え方の対立に由来するとみるべきだろう。その意味で、最高裁判事任命に際しての意図的人事の結果ではないか、と疑われたのは無理もない。
 今回の判決で注目されるのは、最高裁判例に一部異論を唱えているところだ。最高裁が「公務員の団交権や争議権は憲法で保障されているわけではない」としているのに対して、「労働基本権の保障は公務員にも及ぶ。人事院勧告などの代償措置が本来の機能を果たさないときには、争議行為も例外的に許される」と述べている点がそれである。
 最高裁判例は司法部内でまだ十分な説得力をもつに至っていないとみるべきか。
 他面、刑を重くした理由は説得力に欠ける。政治ストの色彩があること、争議の規模が大きいこと、教師のストは児童生徒に徳育面で回復不能の悪影響を及ぼし違法性が強いことをその理由にあげるが、とりわけ第3の理由には異論があろう。
 逆流判決のころに比べて、公務員をとりまく環境は様がわりした。高額退職金や年金の官民格差などを通じて、公務員は恵まれているのではないか、との批判もある。大規模な争議は影をひそめ、争議全面禁止や刑事罰の可否に対する関心も薄れつつある。
 しかし、この際は判決の結論に一喜一憂したり、都合よく解釈するのではなく、公務員の労働基本権のあり方をもう一度冷静に考えてみることが大切ではないか。
 わが国では、ひと口に公務員といっても範囲が広く、職務の公共性にも強弱がある。職種や職務内容を問わず、一律に争議を禁止し、その企画、指導に刑事罰を科すことには、憲法上疑問が残ると思う。


 
 
 
 
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