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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1985/11/12 朝日新聞朝刊
ほめられる日本の教育(社説)
 
 先ごろ、米国のワシントン・ポスト紙が、日本の教育についての長文の記事を載せた。千葉、京都で開かれた教育改革国際セミナーを取材に来日した特派員が書いたもので、「日本の教育・結構だが、簡単に輸入はできない」という題がついている。
 日本の学校教育は、子どもたちに高い水準の学力を保障しつつ、規律・道徳を身につけさせる人間教育にも成功している。米国人から見ると「奇跡」的であり、うらやましい限りだが、背景にある国情が違うので、おいそれとまねするわけにはいかない。ざっと、こんな論旨である。
 日本の経済的な力が評価されるに伴って、そのみなもとは「教育」だとする見方が、外国で強まっている。とりわけ開発途上国にその傾向が見られるが、このところ米国も例外ではなくなった。これをとらえて、「日本の教育の現状は、それほど悪くはないのだ。いろいろ問題はあっても、根本的には特に改める必要はない」という意見が、日本の中でも聞かれがちである。
 こんどの記事の日本をほめた部分は、そうした主張にまた援用されそうである。しかし、この種の議論は、その本当の趣旨をしっかり見きわめて受けとる必要があろう。わが国が驚異的な速さで高度工業化をなしとげる上で、効率抜群の教育制度が大いに役立ったのは事実だ。開発途上の国々が、そこに注目するのは無理もないことといえる。
 だが、日本は経済発展の面で1つの歴史段階を終え、いま未知の新局面を迎えている。当然、教育についても、過去の成功の上に安住してはいられないところにきている。米紙の記事のもとになった国際セミナーで明らかになったのも、実はその点であった。
 多民族国家の米国は、教育の拡大をはかるなかで過度の多様化におちいって苦しんでいる。いきおい、なんでも全国共通の日本の制度をうらやむことになる。
 セミナーの席上でも米国の参加者から、そうした発言があった。これに対して、文部省の代表は、「米国は多様化の極にあり、日本は共通化の極にある。改革の方向は逆に見えても、目標は一致している」と述べた。
 日本の教育が病んでいること、この病をいやすには、その場しのぎの手直しぐらいでは間に合わないことは、もう国民共通の認識としたいものだと思う。これからも、外国からの日本の教育への称賛はつづくだろう。みな、自国の事情に照らして、そうした見方をする理由をもっているからである。
 日本は、日本の教育を改革しなくてはならない。諸外国の言論から学ぶとすれば、まず、そこにあふれる危機感と、教育改革への熱意なのではないか、と考える。


 
 
 
 
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