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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1985/10/20 朝日新聞朝刊
世界的視野が必要な教育改革(社説)
 
 教育改革のあり方をめぐる国際的な専門家会議が、先ごろ千葉、京都で3日間にわたって開かれた。森前文相が訪米した際、日米が協力して教育の研究を進めようとの合意ができた。その一環として英、仏、西独、スウェーデンなど他の欧州先進国の代表も招き、討議をしたものである。
 日本は臨時教育審議会を設けて根本的な見直しを始めているが、取り組み方に違いはあっても事情は各国に共通している。産業の高度化を達成した「成熟社会」にとって、従来の学校教育制度のままで次の世代のゆたかな成長を保障することは難しくなっている。こんどの国際セミナーを通じて、それがあらためて浮き彫りにされた。
 このことは、逆にいえば現在、日本が直面している課題の本質が、世界史的な位置づけの下に照らし出されたことを意味する。臨教審に対しても、本当に目をすえるべきはどこかを示唆してくれる、貴重な会議だったといえる。
 先進国に共通する問題の根源は、産業の発展に伴って起きた「教育の量的拡大」、つまり進学率の上昇である。中等教育までは、ほぼ全員が受けることが常識となっている。日本の高校進学率94%は、国際的にみても不自然な数字ではない。
 大学レベルの高等教育でも、国により差はあるが、拡大の方向をたどっている点では一致している。そして、ここから教育の「質」が低下するという現象が、どこでも起きてきた。高校、大学は、選ばれた一部の若者だけを対象に作られたものだったところへ、みんなが行くようになったからである。
 この質の低下をどう食い止め、より向上させるか。どの国の関心も、この一点に集中しているといってよい。ただ、集まった国々の中で、日本はきわだって違う事情をかかえている。高校段階で普通コースと職業コースの学校に進むものを分けるやり方を、一貫して守ってきたことである。
 西独が似た制度を持っているが、平等社会の色合いの濃い日本でそれを続けているのは、討論の中でも「世界でまれな壮大な実験」(天野郁夫東大教授)と指摘された。米国はじめ多くの国は、だれもが中等教育を受けるようになったのは、産業構造の変化から当然ととらえて、早い時期からの職業教育をやめる方向で動いているからである。
 そして、同じことは高等教育にもいえる。米ハーバード大学が、学生に対して「自分の専門を、あまり急いで決めてはいけない。できるだけ幅広い分野を学べ」と指導している例が紹介されたが、次の世代に人間としての深みをつけさせよう、というのが各国共通の新しい目標のようである。
 つまり、子どもや若者を仕分けする教育制度から、なるべく広く、高い共通の教養を持たせる制度への変換を模索している、といえよう。この点では、西独代表も「中等教育を終えた者が高等教育を受けようとするのは、当然の権利だ」と述べた。
 これは、工業化社会から情報化社会への移行という、時代の変化に対応するためだと、各国代表とも口をそろえていた。同じ流れの中にある日本の教育改革も、当然、こうした考え方への切り替えに立って論議されるべきだろう。
 だが、臨教審のこれまでの経過に見る限り、問題意識がばらばらのままで、目先の現象にかまけ過ぎている感がぬぐえない。ただ外国の動きに追随すればよいというのではない。そこに感じられる大きな潮流から学ぶべきものは、学んでほしい、と考える。


 
 
 
 
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