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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1985/10/11 朝日新聞朝刊
臨教審は総合的な審議を(社説)
 
 臨時教育審議会の第3部会が、教員の資質向上をはかるための制度改革案をまとめた。部会としては、これを基本答申の柱にするつもりだという。
 内容の主な点は、新任教員に1年間、指導教員をつけ、みっちり実地研修をさせ、そのうえで現場に立たせるかどうかを決める制度の導入、この新採用教員の審査をふくめ問題教師の排除にあたる教職適格審査会の新設である。これまで試補制度とか、教育陪審制度といった名称で提唱されていたものが、姿を変えて打ち出されているといえる。
 全体に、教員は一般の職業人と違って、特別の資質を要求されるので、その養成、採用、研修を、格別にきびしい仕組みにしなければならない、という考え方で貫かれている。有田部会長は記者会見で、「われわれには現在の教師への不満・怒りがある」と述べたが、アメとムチのたとえでいえばムチの政策が中心になっているかに見える。
 しかし、このようなやり方だけで、本当に教育の行き詰まりに突破口が開かれるだろうか。疑問を感じざるをえない。教育改革を進めるうえで、教員養成問題が重要な柱の1つであることは異論のないところだし、こんどの案の中にも、うなずける点はある。
 教員養成にあたっている大学の実情について、大学の教授陣が実際の学校現場を知らないことを指摘し、その体質改善を求めている。みずから実践の経験を積んでから、学生の教育をしてほしい、という提案などはもっともである。
 大学を卒業しても、さらに1年間の研修を受けてからでなければ現場に立たせない、とする制度の創設は、いわば大学の現状への不信を表すものであろう。その側面からすると、この長期研修制度の導入にも共鳴できる要素がないわけではない。
 だが、ここで忘れてならないのは、いま求められている改革が、より総合的で、抜本的なものだ、ということである。こんどの案は主として今後あらたに教員になる若い人たちを念頭に置き、いかにいい人材を確保し、いかに立派な教員に仕立てあげるかで、制度上の工夫を懸命にこらしている。
 現在の問題は、教員になる若者の資質だけではなく、すべての若者たちが人間としての成長を阻害されているのではないか、ということである。その心配があるからこそ臨教審もつくられ、高等教育の全般についても別の部会が取り組んでいる。
 大学が本来期待されていたような内容を失っている、との指摘は間違っていないだろう。しかし、それを教員養成系の大学・学部に限ってどうにかできる、どうにかしようと考えるのは、木を見て森を見ない視野の狭さに通じるかと思われる。
 教員養成制度については、一貫して文部省が力を入れ、中央教育審議会や教育職員養成審議会を通して手直しを図ってきた。概していえば、ムチの政策が多かった。臨教審の役割は、その延長線上で単に仕上げをすることではなかったはずである。
 教育の現状打開に、教師一人ひとりの力量の充実が大切であるのはいうまでもない。こんどの案も認めているように、結局それは教師自身の主体的な意欲と努力なしでは、なしとげられない。研修の拡大はいいとして、その内容はそうした主体性の発揮をうながす方向で考えられているのだろうか。
 教育改革を「ここさえ直せば、全部よくなる」といった、無理な単純化の上に立って進めるのは危険である。臨教審各部会の、バランスのとれた検討を望む。


 
 
 
 
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