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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1985/08/24 朝日新聞朝刊
中高生にも「働く」機会を(社説)
 
 今月上旬、東京・代々木の青少年センターで、全国各地からやってきた中高校生約350人による「活動文化祭」という催しがあった。5年前からつづいている。
 日ごろ、障害者・老人の施設へ手伝いに行くなど、社会奉仕の活動をしている生徒たちの、年に1度の全国交流である。3泊4日の合宿生活をしながら、いろんな地方からきた者同士が班をつくって、東京近辺のいくつかの施設を体験訪問したり、悩みを話しあったりして、別れていった。
 毎年のことだが、最後の全体会は、この子たちが思いのたけをこめて発言する場になる。「きて良かった。まじめなことを、まじめに話し合える友だちに出会えたからです。こんな経験、はじめてです」「この3年、私は非行をして学校を変わったりして、つまらなかった。高校生活最後にきて、ただ1つだけだけれど、いい思い出ができました」
 この集まりを見ていて感じるのは、生徒たちが大人の考えているよりはるかに強く、ナマの社会に関心を持ち、それに直接触れたがっている、ということである。にもかかわらず現在の学校は、子どもたちにそういう機会を持たせるのに、ひどく消極的らしい。
 学校の言い分は、わからないではない。いまのように子どもを退廃に導く要素の多い社会環境のもとで、野放しにするのは危ない。できるかぎり生活のすみずみまで目を配り、勉強かスポーツに専念させておくのが、彼らのためなのだ、という気持ちであろう。
 だから、中高生のアルバイトは禁止するのが一般的傾向だし、生徒だけで何か学校外の行事などに参加するのにも、否定的である。必ず届けを出して許可をもらうとか、指導の先生が同行する、といった条件がつく。
 しかし、事故や問題が起きるのを恐れるあまり、ただ学校の枠のなかに囲い込み、閉じ込めておくだけでいいのだろうか。いまの子は兄弟姉妹の数が少ない。地域での子ども同士のつながりも乏しくなった。家庭では、過保護か過剰干渉どちらかの気味がある。
 社会的成熟を抑える要素ばかりが増えている。「いまの若い者は、年の割に子どもっぽい」と嘆く声がよく聞かれるが、当然の成り行きといえる。しかも、学校へ行く年齢になると、こんどは受験体制に組み込まれて、勉強以外のことには振り向かないほどよい、とされる。
 だが彼らにも、まもなく自分が生きることになる社会への関心は、おのずから高まってくる。それを抑えつけるのは不自然なのである。「勉強が学生の本分」という決まり文句が、いまだによく使われるが、学校生活の重圧がいまほどでなかった時代とは、事情が違ってしまっている。
 中高生に、もっと何らかの「仕事」をする機会を持たせてやりたい、と思う。それも、できるだけ彼らの自主性に任せて、親や教師の指導・介入はひかえるやり方をとりたい。
 勤労体験学習とか、最近では福祉教育という名で老人施設などへのボランティア活動を学校教育の課程に組み入れる動きが強まっている。だが、生徒たちの意欲の有無に関係なく、学校が決めたことだからやらねばならない、やらなければ成績評価に響く、といった行き方になっては、押しつけのタネがまた1つ増えるだけであろう。
 人間の成長にとって、「働く」という行為は「学ぶ」ことと切っても切れないかかわりを持つ。すべての子に、その手ごたえを感じさせてやれるような教育の仕組みは作れないか。教育改革を考えるに当たっては、この視点をぜひ持ちたいものである。


 
 
 
 
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