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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1985/08/12 朝日新聞朝刊
よい教師をつくるには(社説)
 
 学校の教員を、優秀な人物で固めなければならない。そのために、いろいろな新制度を考え出そう。これが、臨時教育審議会の論議の、1つの中心になってきたかに見える。
 初等・中等教育の分野を扱っている第3部会で、先に問題教師をやめさせるための「教育陪審制」の導入が持ち出された。こんどは、教員志願者に限って採用1年前から求人活動を認める「事前申し込み制」というのを、検討するという。
 臨教審が本来めざすべき教育改革とはおよそかけ離れた見当違いの方向に、どんどん迷いこんでいっている。そんな感じがしてならない。アイデアの奇抜さは別にして、「教師の質さえ良くすれば、すべては解決」という、この種の議論は、ざっと30年前から繰り返されつづけてきたものである。
 文部省もまた、その考え方に立って、教員の養成、採用の仕組みを厳しくする措置を、一貫して積み重ねてきている。だが、そうしたやり方は、学校をよみがえらせはしなかった。だからこそ、従来の考え方にとらわれない、新しい角度から根本的な見直しをするべく、臨教審も生まれたのではなかったか。
 学校教育が、教員の力に大きく依存しているのは、議論の余地ない事実である。教員は、みな優れた人物であってほしい、と願わないものはいない。しかし、特定の大学・学部で国が定めた基準にもとづく専門の勉強をし、高倍率の採用試験に勝ち残ったから、よい教師だとはいえないだろう。
 49年に人材確保法がつくられて教員の給与が改善され、高度成長時代が終わって若い人が民間企業に吸収される勢いも止まった。地元で働ける安定した職業として、教員志望者は増えてきている。一方、学校に入ってくる子どもの数は、急速に減る傾向にあるため、教員採用の枠は狭まっている。
 教員養成大学に入るのも、さらに卒業して教員に採用されるのも、いまでは容易なことではない。採用時期についても、3年前から、民間に先を越されないよう繰り上げた結果、ほとんど他へ流れることはなくなった、とされている。
 若い世代全体から見て、特に劣った層からしか教員のなり手がない、などという実情には全くない。現実は、むしろ逆である。にもかかわらず、そうした人材が学校教育に新風を吹きこみ、その行き詰まりを打開してくれる、ということにはなっていない。教員問題の核心は、この点にある。
 よき職業人は、その職業生活に自分をぶっつけて努力し、それが報われる喜びを味わうところから生まれる。教員もまた、例外ではない。いくら養成・採用を厳しくして、優秀な人材を集めても、そうした成長を助け、保障する職場でなければ、効果はない。
 教え育てることよりも、テストを繰り返して子どもを仕分けするのが、教員の仕事になっている。できない子のために自分なりの創意工夫をこらし、できるようになった子どもの喜びを共にする。そういう本来の生きがいのないところから、せっかくの人材に退廃が始まる。そうしたことが、いわゆる問題教師を生むひとつの背景にもなっている。
 そういう形で教師をダメにし、それ以上に子どもをダメにしている学校教育の構造自体を、何とか改めなくてはならない。これが、いま求められている教育改革の本筋なのである。臨教審にかけられている期待があるとすれば、その大きな課題に正面から取り組むことこそ、それである。
 任期は刻々と過ぎている。わき道にそれず、実情をふまえた審議を進めてほしい。


 
 
 
 
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