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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1985/07/24 朝日新聞朝刊
体験集会 相談する相手なし(「いじめ」が問うもの:2)
 
 6月、文部省は「いじめ対策」の緊急提言として、学校内の教育相談の充実、地域での相談窓口の整備や連携強化を呼びかけた。
 
○電話でも口閉ざす
 それを先取りする形で、警視庁防犯部少年1課が「いじめ相談コーナー」を開いたのは今年5月5日。2カ月間で846件の相談があった。深刻な暴行や傷害など、警察へ被害届を出すよう勧めたもの、22件。裁判所の調停制度紹介、5件。名前を告げた51人のうち、半分は偽名だった。相談室の桜井るゑ子警部は「匿名で受け付けたから、予想以上に相談がありました。でも『お手伝いしようか』と語りかけても『いいの』と断る子が多くて……。口を開きかけた貝が人の気配を感じて、ぴたりと閉じてしまうように」と語る。
 「女性による民間教育審議会」(世話人代表・俵萌子さん)が今年4月に開いた「教育110番」には3日間で289本の電話が入り、そのうち64件が「いじめ」の訴えだった。その数はともかく、決して名乗ろうとせず、どこに住んでいるかも教えようとしない子どもたちに、相談員たちは驚いた。「電話の向こうでドアのあく音がする。とたんに電話が切れてしまうんです。大人への不信というか、だれにも相談できず、孤立している子どもたちの姿が目に浮かびます」と電話を受けた和光大講師の小沢牧子さん。
 NHKが朝の番組で「いじめ」を特集した時の反響は記録的だった。
 58年9月26日から4日間、局内の10台の電話が鳴り続けた。計2500本、手紙も500通に達した。番組の視聴率は19%、ざっと1900万人が見ていた計算になる。「うちの子もいじめられたと泣きながら訴えてくる。まるで相談センターでした。ほかに、いじめ専門の相談窓口もなかったから」とスタッフの宮本徹さんは振り返る。
 
○学校と家庭が分断
 昨年5月、テレビ朝日の「江森陽弘モーニングショー」で、いじめ問題を放送した時も局内の電話が一斉に鳴り出し、一時はざっと2万本が集中、電話がつながらない状態になった。
 「いじめ」という現象は確かに、全国にある。学校などの対応が鈍く、相談窓口がないのも事実だ。しかし、マスコミや役所に押し寄せる匿名の電話相談の背景には、親にも教師にも打ち明けられない子どもたち、事情を知ったものの有効な手立てを知らずに悩む親の姿がある。学校と家庭が分断され、家の中でも親と子はバラバラだ。この構図こそ、いじめを生み出す元凶でないのか。
 「みんなでいじめをけっとばそう」と、東京・本郷で集会が開かれたのは、今年6月2日のこと。教育相談のベテラン、遠藤豊吉さんが企画し、「いじめ」に悩む人や、今はそれを克服した子供や両親ら約100人が集まり、体験を話し合った。
 
○親は報告に立たず
都立高2年の男子生徒は、小学生のころ、バイキンと呼ばれ、フォークダンスをしたとき相手の女子生徒は手を結ばず、小指しかからませてくれなかった。教師がある日、「今日からあいつは無視する」と宣言、いじめはクラスで公然となった。持ち前の明るさと粘りで、いじめを克服した彼は集会で、「昔の子どもがカエルに爆竹をつめたのと、いじめは同じだ。子どもはもともと残酷なんです」と乾いた声で語った。
 続いて、いじめを解決した親が報告する予定だった。会場に何人か来ていた。司会者が2回、3回と発言をうながした。しかし、1人として口を開かなかった。「そこが大人のずるさだ」と遠藤さん。解決した問題をさらけ出したくない。下手をして、再発が心配だ。そんな親の気持ちは痛いほど分かるが、それを乗り越えないと「いじめ」はなくせないのではないか、という。
 深夜でも、自宅の電話が鳴り出す。沖縄、広島、秋田と全国から来る。そのたびに、遠藤さんはひとつの質問をする。
 「あなたのお子さんの同級生の親や、近所の人で相談に乗ってくれそうな人はいますか」
 ほとんどの人が答える。「いません」
 子どもだけでない、まず、親が大人社会で孤立しているのだ。


 
 
 
 
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