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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1985/04/25 朝日新聞朝刊
「自由化」論争持ち越し 首相周辺に強い意欲 臨教審の審議経過の概要
 
 24日公表された臨時教育審議会の「審議経過の概要」の中で、最大のテーマとして今後の総会論議に持ち越されたのが、改革の理念をめぐるいわゆる「自由化」論争だ。自由化とは、通学区制を廃止して親や子が自由に学校を選択できるようにするなど、自由競争原理を導入して教育の活性化を図ろうという考え。だが、とくに義務教育段階での自由化に対し、「なじまない」とする反対論が強く、昨年9月の臨教審初会合以来、激しい論争が展開されてきた。「自由化」論には中曽根首相周辺の強い思い入れもちらつく。総会での論争再燃を前に、これまでの論議の流れを整理すると――
 
 <仕掛け> 「自由化」論が、まとまった形で臨教審のテーマに上ったのは、昨年9月27日の第3回総会。首相ブレーンの1人といわれる香山健一委員(学習院大教授)が「『教育改革の基本方向』についての提案」と題する4ページの文書を各委員に配布。そこで「今次教育改革で戦略的に重要なのは、教育行政改革による教育の自由化の断行だ」として、(1)教育行政分野での許認可、各種規制の見直し(2)教育分野への民間活力の導入(3)学校の民営化、塾の合法化(4)選択の自由の拡大と競争メカニズムの導入――など「自由化」の具体的な内容を示した。この考え方は、昨年2月の首相の施政方針演説でも、「教育を受ける側の選択の自由の拡大」の表現で、さりげなく顔をのぞかせていた。
 「自由化」論をいち早く組み立てたのは、松下幸之助氏が座長の「世界を考える京都座会」の面々だ。昨年3月、「学校教育活性化のための7つの提言」を発表、その中で自由化を改革理念の中心に据え、以後、マスコミなどを通じて自由化を盛んにPRしてきた。京都座会から、のちに天谷直弘(国際経済交流財団会長)、石井威望(東大教授)の両氏が臨教審委員に、渡部昇一(上智大教授)、山本七平(山本書店店主)の両氏が専門委員に任命された。
 
 <ジャブの応酬> 京都座会などでの理論武装を背景に、周到に臨教審の場に持ち込まれた自由化論だったが、総会での反応はいまひとつ。反発が現れたのは11月に入って、テーマごとに4つの部会が設けられてからだ。
 自由化論者が、とくに義務教育段階での自由化に力点を置いたため、初等・中等教育を担当する第3部会(有田一寿部会長)が11月16日の第2回会合で早くも反応を示し、「慎重に検討を」と、消極的な雰囲気を漂わせた。
 以後、同部会では「自由化論議は理念についての議論ではなく手段についての議論だ」「極端な考え方を導入するのは危険」「家庭の教育費負担の観点を加えれば、安易に自由化の方向に進めることはできない」「『自由』を享受できるのは強者であり、教育の機会均等を損ない、不平等化を招き、受験戦争が激化する恐れがある」などの発言が続き、批判的な姿勢が次第に鮮明になっていった。
 
 <反撃と応戦> 一方、香山氏や天谷氏、山本氏ら「自由化」推進派が加わる第1部会は、年が明けた1月早々、京都座会のメンバーの加藤寛・慶大教授を講師に招いて、自由化論への取り組みを本格化。「自由化した場合、国民の教育水準をどう維持するのか」との委員の質問に、加藤氏は「そのために認定試験をやればいい。経済の論理を教育にも適用するのではなく、自由の原則を経済にも教育にも適用すべきであると言いたい。一部私学にもうけ主義があるが、それも結構だ。ロスはあっても、大局的に社会的利益が多ければいい」と、メリットを強調した。
 これに対し、義務教育段階の自由化に不安を抱いた文部省は「子どもを不安定な教育環境に置くような改革は行うべきではない」との見解を第1部会に報告。さらに、第3部会も「義務教育段階で学校設立の自由や学校選択の自由を認めると、国民の基礎的な教育を確保することが困難になり、義務教育の機会均等や公共性が維持できなくなる」として、自由化反対の方向をはっきり打ち出した。
 こうした反撃に、香山氏は再び第1部会に文書を提出して自由化批判に応戦。「『自由』は『機会均等』に優先する」と改めて自由化推進の立場を強調するとともに、「(文部省は)古い規範を固守しようとする専門ばかだ」「現状維持的な姿勢をとり続けるなら、教育改革は文部省改革を避けて通れなくなる」と、激しく文部省を攻め立てた。首相も国会答弁で「教育を多彩にし、教育を受ける子供の立場を最大限に考える時代だ」と、自由化への積極姿勢をのぞかせ、自由化をめぐって“第1部会・首相対第3部会・文部省”という対立図式が浮かび上がった。
 
 <見せかけの収拾> このため、臨教審内部の対立が深刻な形で表面化していくことを憂慮した石川忠雄会長代理ら臨教審幹部が調整に動き、第1部会は2月の合宿集中審議で「自由化」という表現を避けて、「個性主義」を新しい改革理念として打ち出した。同部会内部にも、木田宏専門委員(元文部事務次官)ら「自由化」に反発する意見があり、これとの妥協を図った形。同時に、理念面での論争にひとまず幕を引き、早く具体的課題の検討に入りたいとの政治的配慮が、主として自由化論者側に働いた事情もあった。
 
 <再燃> しかし、「個性主義」の具体的検討課題としては学区制や許認可条件の緩和などがあげられ、「自由化」推進派が「自由化」に比重をかけて評価していることもあって、第3部会関係者は「衣の下にヨロイが見えれば、また戦う」と、政治的な収拾に警戒感をあらわにしている。
 部会報告を初めて議題にした今月10日の総会で、自由化反対を鮮明にした第3部会報告に、天谷氏らが「第1部会では賛否併記の形になっているのに、第3部会が結論を出してしまうのはまずい」とクレームをつけ、結局、反対の根拠を列記した部分を削除。こうした経緯に第3部会は一段と反発を強め、第1次答申までに独自の反対見解をまとめる方針で、「自由化」論争は再燃必至の雲行きだ。


 
 
 
 
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