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1999/07/30 産経新聞東京朝刊
【主張】憲法調査会 改憲への道筋を切り開け
 
 衆参両院に憲法調査会が設置されることが本決まりとなった。国会が憲法と真っ向から向かい合うのは戦後初めてである。来年の通常国会から論議が開始されるが、「論憲」の場ができたことだけで満足してしまってはなるまい。今後は、「憲法改正」を可能にする道筋を切り開くため、一層の努力が求められよう。
 憲法調査会は当初、衆院にだけ設置するという国会法改正案が衆院を通過、参院段階で参院にも設置するように修正され、衆院に回付されて本会議で可決、成立した。
 調査会は衆院五十人、参院四十五人で、予算委員会なみの規模となる。国会の閉会中にも開くことが可能で、通常の委員会と同様、閣僚の出席を求めたり、公聴会開催や参考人からの意見聴取などもできる。おおむね五年をかけて論議を重ね、報告書をまとめて議長に提出する。途中段階での中間報告も行うことができる。
 自民党などは当初、法案審議ができる常任委員会の設置を考えていたが、民主党など“論憲派”の支持も得るため調査会に落ち着いた。調査会では論議がいくら進んだとしても、改正案をつくったり、これを審議したりすることはできない。
 憲法をめぐる議論を展開するのは結構だが、具体的な改正作業を始めるのは“五年後”から、ということになってしまっては、調査会が改憲への取り組みを“さぼる”場につかわれるおそれなしとしない。改正への機運が高まっているだけに、せっかくの調査会が逆効果になることを懸念しないわけにはいかない。
 ここは国会の権威にかけても、調査会の論議と並行して改正に向けての環境整備を進めるべきであろう。とくに自由党などが主張している改正に必要な国民投票の法制化は、これまで当然、国会として備えておかなくてはならなかったもので、調査会とは切り離してでも急ぐべきである。
 政治、経済、社会などあらゆる側面で行き詰まり状況をみせている日本の現状を考え、新しい世紀にこの国がどう生きていくべきかを追い求めていけば、戦後憲法体制そのものに突き当たらざるを得ない。
 そうした視点に立って、多方面での試みが展開されつつある。民間の立場で政治の刷新を追求してきた政治改革推進協議会(民間政治臨調)は、新しい日本をつくる国民会議(二十一世紀臨調)に衣替えし、憲法の総括的検証に着手する構えだ。憲法見直しは国民的課題となっている。政治はこの事実を正面から見据えるべきである。


 
 
 
 
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