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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1997/02/07 産経新聞朝刊
【教科書が教えない歴史】(221)日本国憲法(5)
 
 一九四六年(昭和二十一年)二月四日午前十時、GHQの民政局員二十五人は会議室に呼び集められました。全員を前にしてホイットニー局長=写真=は「これから一週間、民政局は憲法制定会議の役割をはたすことになるだろう」と言いました。そして、今の日本で最も急がなければならない問題は新憲法の制定だ。しかし、日本側が作成した草案はまったく不満足なものなので(マッカーサー)最高司令官は自分が介入する必要があると判断し、日本国民のための新しい憲法を起草するという歴史的な意義ある仕事を民政局に任せたと述べました。
 さらにホイットニーは黄色い紙に書かれた「マッカーサーノート」をゆっくりと読み上げ、憲法制定作業はリンカーン誕生日の二月十二日までに終えること、作業は極秘にすること、秘密を守るため暗号を使うことなどを指示しました。出席していた民政局の人々は一様に驚き、興奮していました。
 民政局の「憲法制定会議」の組織はケーディス次長(当時四十歳)、ハッシー海軍中佐(四十四歳)、ラウエル陸軍中佐(四十二歳)、エラマン嬢で構成される運営委員会が全体をまとめ、その下に八つの委員会を置きました。委員会はそれぞれ立法、行政、人権、司法、地方行政、財政、天皇・条約、前文の各分野を担当します。二十五人のメンバーの内訳は陸軍将校十一人、海軍士官四人、軍属(ぐんぞく)四人、秘書を含む女性六人で、弁護士資格を持つ人が三人いましたが、憲法の専門家はただ一人としていませんでした。
 当時のメンバーは、ホイットニーの話を聞いたときの印象をおよそ次のように述べています。(西修『ドキュメント日本国憲法』より)
 「とても興奮しました。しかし、同時に私は、このようなことはとても不幸なことだと思いました。なぜなら、外国人によって起草された憲法は正当性を持たないと思ったからです。私は、民主主義を理解している日本人を何人か知っており、彼らに自国の憲法を作らせるべきだと思いました。そして、そのことを上司に述べたのですが、採用されませんでした」(行政委員会・エスマン陸軍中尉)
 「興奮しましたが、私には憲法を作る能力も知識もなかったので不安でした」(立法委員会・ホージ陸軍中佐)
 人権委員会のメンバーだったベアテ・シロタ・ゴードン女史(当時二十二歳)は、日本国憲法一四条(法の下の平等)と二四条(家族生活における個人の尊厳と両性の平等)の起草者としてよく知られています。彼女は世界的ピアニストとして有名な父レオ・シロタとともに来日して、少女時代の十年間を日本で過ごした経験のある女性です。
 民政局に勤務する前にアメリカの雑誌社に勤めた経験があり日本語にも通じていたシロタは、憲法草案作成のために図書館にいって資料を集める役目を果たしました。草案の作成が極秘でしたから、一カ所だけだと怪しまれるのでわざわざいろいろな図書館を回って資料を集め、それを民政局に持っていきました。
 「そうしたら、みんなほかの人たちも使いたかったんです。あの人たちだって憲法の専門家じゃなかったのでしょう。だから、みんなそれを使いたかった。それだけで、すぐ天才になりました」。これは、最近のインタビューにこたえたシロタの言葉です。
 日本国憲法草案は、憲法にはほとんど素人といえる人々の手によって二月十日にできあがりました。たった一週間の憲法制定作業でした。


 
 
 
 
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