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2002/11/02 読売新聞朝刊
「憲法改正」が大勢 9条「解釈憲法」を問題視/衆院調査会中間報告
 
◆9条「解釈改憲」を問題視 「新しい人権」明記の主張
 衆院憲法調査会=ミニ時典2面=の中山太郎会長は一日、中間報告を綿貫衆院議長に提出した。中間報告は、調査会での議論を安全保障、基本的人権などのテーマ別に論点整理し、各論を併記したもので、具体的な方向性は打ち出していないが、焦点の憲法改正の是非については、国内外の情勢の変化に対応して改正すべきだとの意見が大勢を占めた。また、九条について改正すべきだとする意見が改正不要論を大きく上回ったほか、環境権など「新しい人権」の明文化を求める主張が多数で、施行から五十五年を経た憲法のあり方を問い直し、改正を促す内容となっている。調査会は二〇〇五年に最終報告をまとめる予定だ。〈関連記事3・4面、座談会12・13面、要旨14・15面〉
 中間報告は全七百六ページ。二〇〇〇年一月の調査会発足から二年九か月余の調査会委員(衆院議員)と参考人(有識者)らの発言を整理した「憲法の各条章に関連する主な議論」が柱で、憲法の構成に沿って
〈1〉総論的事項
〈2〉天皇制
〈3〉安全保障及び国際協力
〈4〉基本的人権
〈5〉地方自治――
など十二項目に分類した。
 憲法改正の是非をめぐっては、「憲法は現状に合わなくなっている」「日本の未来のあるべき国の形などを盛り込むべきだ」などの改正意見が圧倒的に多く、「憲法は理想、目標を掲げ、現実の政策は法律で対応すればよい」などとする改正不要論は少数にとどまった。
 九条については、近年の自衛隊の国際協力活動などに関して、政府が憲法解釈の変更を積み重ねる「解釈改憲」を問題視する意見が多かった。集団的自衛権については、「保有しているが行使できない」とする政府解釈を批判し、行使可能なことを憲法に明記するよう求める主張が目立った。
 改正意見の具体的内容では、戦力の保持を禁じる九条二項について、自衛隊の存在を踏まえ、改正か削除を求める意見が多かった。現在の自衛隊の存在については合憲、違憲の両論があったが、いずれも「存在を憲法に明記すべきだ」とする意見が多数を占めた。
 環境権、プライバシー権などの「新しい人権」については、「(憲法制定時の)五十年以上前は想像できなかった概念」として憲法への明記を求める意見が不要論を上回った。また、緊急事態への対応について、根拠規定を憲法に明記すべきだという主張が大勢を占めた。
 中山会長は報告のまえがきで、憲法制定後の国内外の情勢の「大きな変化」には「憲法を支える基本的考え方に影響を与えるものも少なくない」と指摘し、憲法改正の必要性を示唆した。
 二〇〇五年の最終報告では、憲法改正の是非などについてどこまで具体的な方向性が打ち出せるかが焦点となる。


 
 
 
 
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